猛暑が続く中、学校で熱中症になってしまう生徒・児童が後を絶たない。7月17日には、愛知県豊田市で小学校1年生の男子児童が校外学習の後に死亡する事件が起きた。
翌18日にも宮城県名取市の小学校で児童38人が病院に搬送されている。なぜ学校ではこうした被害が相次ぐのか。
教育評論家の石川幸夫さんは、「学校側に猛暑に対する鈍感さがある。根性論が残ってるのも問題だ」と指摘する。
「教師は課外授業の予定を簡単に変更することができないのでしょう」
報道によると、宮城県名取市の小学校では、午前9時頃から全校児童が校庭に集まり、市制60年を記念する人文字の空撮が行われていたという。撮影前から「具合が悪い」と訴える児童がいたにも関わらず、予定通り撮影を行ったようだ。
さらに19日、東京都練馬区の都立大泉桜高校では、25人の生徒が熱中症のような症状を訴え、女子生徒10人が病院に搬送された。午前9時ごろから体育館で全校生徒を対象に詐欺被害防止についての講演会を開いていたという。
死亡事故や病院への搬送が連日のように報道されているにも関わらず、なぜ予定を変更しないのだろうか。石川さんは、こう説明する。
「教師も課外授業や行事を簡単に変更することができないのだと思います。学校現場には明確な判断基準もありませんし、現場の教員が変更しようとしても、校長や副校長から『日程が詰まっている』と言われてしまうこともあると思います。しかし子どもたちを守るためには、思い切って課外活動を中止にしたり、場所を変更したりする必要があります」
さらに「これくらい我慢するべきだ」という"根性論"が残っているのも問題だという。
「『子どもに贅沢をさせるな』という旧態依然とした考え方の人がまだいる」
子どもとのお出かけ情報サイト「いこーよ」を運営するアクトインディが7月18日に発表した調査の結果によると、子どもの通う小学校にクーラーが設置されていないと回答した保護者が34%に上った。猛暑日が続く中、子どもたちはクーラーのない教室で過ごすことを余儀なくされている。
石川さんは、「保護者や若手の教員からはクーラーの設置を求める声が出ています。しかし『昔はクーラーがなかった』とか『子どもに贅沢をさせるな』という旧態依然とした考え方の人がまだいることも事実です。しかし35度を超える猛暑では、エアコンのない教室で座っているのすら苦痛です。勉強どころではありません」と指摘。クーラーの設置が必要だと論じている。
熱中症の被害が相次ぐ中、ネットでは環境省の指針を基準にするべきだとの声も出ていた。同省では、気温に湿度などの要素を加味した暑さ指数(WBGT)ごとの指針を出している。WBGT25~28度で「運動や激しい作業をする際は定期的に十分に休息を取り入れる」としている。また28~31度では「外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する」としている。さらに31度以上では「外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する」とある。
各地の暑さ指数は環境省のサイトから確認できる。無理は避け、柔軟に対応できる制度を作っていくことが肝要だろう。