F1の開発はとどまるところをしらず、毎グランプリ、新しいパーツが導入されている。F1iのテクニカルエキスパート、ニコラス・カーペンティアーズがイギリスGPの週末に見つけたフェラーリの注目アイテムを紹介、分析する。
■車両開発が激化するフェラーリ対メルセデス
熾烈な車体後方部の開発
今季のタイトルを争うメルセデスとフェラーリが、車体の改良でも激しい競争を繰り広げている。メルセデスが大幅なアップグレードを投入したオーストリアGPの1週間後のイギリスGPに、フェラーリは車体後部に焦点を絞った新パーツを持ち込んだ。
フロア、ディフューザー、エンジンカウル、整流板、すべてが新たにデザインされたのである。
まずフロアだが、すでにスペインGPで変更を施していたオーストリアGPまでの仕様は、フロアの端に2本の長い切れ込みが入り(黄線)、剛性確保のために真ん中に補強が入っていた(白矢印)。
それが新仕様では後半の切れ込みが3本になり、補強も2箇所に増えている。これらの切れ込みはフロア下を流れる高速の気流に、車体上部の低速気流ができるだけ干渉しないようにする工夫である。
さらにリヤタイヤのすぐ前に刻まれた何本もの溝は、リヤタイヤが起こす乱流を整えることが目的だ(黄色矢印)。
■タイヤマネージメント戦争が過熱
フリー走行時のみ登場するタイヤ専用カメラ
今季のF1はこれまで以上に、タイヤをいかに適切に管理するかが、勝敗を分ける要因になっている。そのためフリー走行中のリアルタイムでのタイヤ温度のデータ収集、分析が非常に重視されている。そこから予選とレースでのタイヤ挙動、デグラデーション(性能劣化)の度合いが、かなりの程度導き出せるからである。
現在のF1では走行中のフロントタイヤの表面温度は、ミラーあるいはフロントウイングに組み込まれた赤外線カメラによって測定されている。一方リヤタイヤは、フロア両端に設置されたセンサーが測定する。
こぶ状の突起に気付いた人も、少なくないだろう。これらのデータは、リアルタイムでガレージに転送される。
オーストリアに投入されたメルセデスの新形状のミラーでは、赤外線カメラを組み込むことができない。そのためフリー走行時のみ、ミラー下にカメラ用のデバイスを加えていた。
一方フェラーリの気流を通す特徴的なミラーも、カメラは搭載できない。そのためエアインテークの上部や横に取り付けている。