F1シーズンを転戦していると、いろいろな人との出会いがある。そんな人たちに、「あなたは何しに?」と尋ねる連載企画。今回はイギリスGPに訪れたウイリアムズ代表フランク・ウイリアムズとフォース・インディア代表のビジェイ・マリヤだ。
---------------------------------------
イギリスGPでは1年ぶりにサーキットに姿を現したレース関係者がふたりいた。ふたりとも1年に1度しかグランプリを訪れることがなく、そのグランプリはいずれもイギリスGPと決まっている。
ひとりはフォース・インディアの共同オーナーを務めるビジェイ・マリヤだ。マリヤは母国インドのハイデラバード市当局から逮捕令状が発行されて以降はイギリスで生活している。しかもパスポートも失効しているため、イギリス国外にも脱出できない。そのためグランプリに来るのはこのイギリスGPだけとなっている。
もうひとりはウイリアムズのオーナーを務めるフランク・ウイリアムズだ。こちらが1年に1度、しかもイギリスGPにしか来られない理由は、マリヤとは全く異なる。
それはウイリアムズの健康上の理由だ。2016年のイタリアGP直前に肺炎を患い、数カ月間治療のため入院していたウイリアムズは、その年の11月に退院したが、その後も自宅で療養生活を送っていたため、グランプリに帯同することはなかった。昨年、サーキットを訪れたのは自宅から車で通えるイギリスGPだけだった。
今年も開幕以来、サーキットには姿を見せていなかったため、ウイリアムズの健康状態が心配されていたが、イギリスGPが行われたシルバーストンを1年ぶりに訪問。パドックやガレージで元気な姿を披露していた。
娘で現在チームの副代表を務めるクレアによれば、「父は1年ぶりの現場にとても興奮していました。そして、チームのメンバーも父の久しぶりの訪問を驚くとともに、歓迎していました」と語る。
今年で76歳を迎えたウイリアムズ。ガレージにいると作業の邪魔になるという理由から、いつも隣の部屋にモニターを用意して、そこで走行をチェックしていたが、そのスタイルは今回も変わらず、別室にいた。
ただし、その姿はパーテーションに仕切られていていたため、ピットレーンから直接うかがうことができなかったので、ウイリアムズの付き人に「元気な姿を写真に収めたいので、本人に確認してほしい」と尋ねると、快く承諾し、撮影に応じてくれた。
そんな父親を見てクレアも「やっぱり、父はガレージがとても似合いますね」と、ウイリアムズの再訪を喜んでいた。
ちなみにイギリスGPの記者会見で「ウイリアムズという名前が持つ意味はなんですか?」と尋ねられたクレアは、笑ってこう答えた。
「私はもうウイリアムズじゃないのよ。結婚して、いまはクレア・ハリスよ」