7月8日に富士スピードウェイで行われたスーパーフォーミュラの優勝記者会見で、バックマーカーと青旗の話題でひとしきり盛り上がった。トップ争いをしていたニック(キャシディ/KONDO RACING)と石浦(宏明/P.MU/CERUMO·INGING)が、バックマーカー達に行く手をはばまれ、思うようにペースを上げられなかったという。
一体なぜそのようなことが起こってしまうのか。その原因のひとつにはタービュランスの関係で、バックマーカーの真後ろに近づけない、ということもあるだろう。どういうことかと言えば、バックマーカーに近づけばマシンの巻き起こす乱流でフロントウイングにフレッシュエアが当たらない。
そのためダウンフォースが得られず、ラップタイムが落ち込んでしまう。会見で石浦が「たとえば100Rでバックマーカーに近づけば、マシンが安定せずフラついてしまってラップタイムで1秒以上遅くなってしまう」と語った。しかし、近づかないとバックマーカーが避けてくれない。そんなジレンマの中で、ニックとトップ争いを強いられ続けていた。
トップを走るニックにしても「20周に渡ってバックマーカーに苦しめられた。バックマーカーに引かっかると、2秒もラップタイムが落ちてしまう」と語っていた。これは少々大げさな表現だったかもしれないが、行く手を阻まれ作り上げた2番手以降とのマージンを、ほとんどゼロにされたのだから気持ちは痛いほどわかる。
バックマーカーにしても順位争いをしているのだから、なるべくロスなく譲りたい気持ちもわかる。だが周回遅れになってしまったのだから、もっと考慮すべきだと思う。たとえ最下位を走っているドライバーでも、レベルが揃っているのがスーパーフォーミュラだ。タービュランスの関係でトップが近づけないことなど知らないはずもない。何より青旗の意味がわからないはずもない。
ニックは会見でこうも言っていた。「F1ではポスト3区間以上で青旗を振られた場合は、ペナルティが課せられている。そうすることで、このような事態は避けられるはずだ。スーパーフォーミュラでも導入すべきではないか」の言葉は、トップ争いをしているドライバーの現状を知るリアルな言葉だ。
今回のレースでは、バックマーカーの影響で順位が変わることはなかった。だが、今後はそのような事態も充分に考えられる。ひいてはバックマーカーの存在が、チャンピオンシップにまで影響を及ぼしてくる可能性さえある。F1だけでなくスーパーGTでも独自のルールでペナルティを科すことができるが、スーパーフォーミュラでの青旗に対する意識を、もっと変える必要があるのではないだろうか。そんなことを思わせるレースだった。
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折原弘之 1963年1月1日生まれ
1980年の東京写真専門学校中退後、鈴鹿8時間耐久レースの取材を皮切りに全日本ロードレース、モトクロスを撮影。83年からアメリカのスーパークロスを撮影し、現在のMotoGPの撮影を開始する。90年からMotoGPに加えF1の撮影を開始。現在はスーパーフォーミュラ、スーパーGTを中心に撮影している。