今シーズンのF1で気になるの部分のひとつが前後のサスペンション構成。もちろん、モノコック内部に置かれたフロントサス、ギヤボックスケーシングの前方、ベルハウジングの内部に置かれたリヤサスペンションの主要パーツは滅多なことではお目にかかれないのだが、少なくとも表に出ているものだけでも結構ユニークで面白い。
今シーズンのF1で特にトレンドになっているのがハードフロントだ。サスペンションはソリッド(硬質)に近く、ホイールストロークは極めて短い。実際、ストロークはないに等しく、上下動はほとんどタイヤの空気圧とコンストラクション(構造部)が受け持っている。
サスペンションの動きはサードエレメントでもあるヒーブサスペンションがモノサスペンションとして働き、強力なスプリングとソリッドパッカーが上下動、特にバンプを固定し、フルバンプでのライドハイト(車高)をコントロールしている。
プッシュロッドもほとんど動かず、ロッドの入角もチームによってさまざまだ。各アーム類の取り付けはエアロ主体になっており、そのため、実に奇妙な配置が幅を利かせている。
写真はザウバーC37のフロントアップライトとアーム類。本来、ホイールドラムに覆われ滅多に見ることはできないが、この写真では各アームの取り付けや、エクステンションブラケット(BKT)などがハッキリと見える。
写真からも、アップライトの最上部にボルトオンされたJ型の大きなブラケットが上方へ伸び、その先端にアッパーアームのピボットが入っているのが分かる。一番下のロワアームはアクスルセンター高さにマウントされ、そのすぐ上、車体側に向かって水平にプッシュロッドマウントブラケットが長く伸びている。
そのプッシュロッドマウントブラケット(BKT)の先端、写真では『くの字』にプッシュロッドと連結されている部分、この結合点がプッシュロッドピボット(マウント)位置になる。したがってプッシュロッドはアップライトマウント方式で、ステアリング操作によって、規定範囲内でのライドハイトとコーナーウエイトが制御されている。
アップライト下側に飛び出たブラケットはホイールティザース(連結ロープ)のロワ側の取り付け用だ。アッパーアームのハイマウントは昨年からメルセデスとトロロッソが採用し、ザウバーはトロロッソ型に近い。それにしても、ひと昔前なら奇形として扱われたに違いない理解の難しいサスペンションアレンジメントだ。