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吉岡里帆が生活保護のリアルに迫る 『健康で文化的な最低限度の生活』“青春ドラマ”の側面も?

2018年07月18日 06:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 新たに始まった、火曜ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』(カンテレ・フジテレビ系)。『ビッグコミックスピリッツ』にて現在連載中の柏木ハルコの同名コミックを原作に、生活保護を取り扱う福祉事務所に配属となった新人公務員の義経えみる(吉岡里帆)が、生活保護のリアルに迫りながら成長していく奮闘記だ。


【写真】『健康で文化的な最低限度の生活』で優しい上司演じる田中圭


 「ケースワーカー」という言葉に、なかなか馴染みがない方も多いのではないだろうか。ケースワーカーとは、身体的や精神的、あるいは社会的に何か困難な問題を抱えた人を、一般社会での生活ができるように導いていく存在を指す。


 7月17日に放送された第1話では、そんなケースワーカーに就くこととなったえみるの新生活からスタートする。かつて彼女は映画の道に情熱を燃やし、映画監督を志していたが挫折し、安定と平凡を求め公務員になったのだという。しかしこの道に、“安定と平凡”があるのだろうか。彼女はこのケースワーカーという職についての知識がなければ、ひとりの人間としての経験もまだまだ不足している。


 えみるが勤めることとなった東京都東区役所生活課に同期で入社したのは、七条竜一(山田裕貴)、栗橋千奈(川栄李奈)、桃浜都(水上京香)、小園凌央(後藤大門)の4人。アツいキャラかと思いきや、実はいわゆる“マザコン”であったり、福祉専門職で採用されたクールで勤勉な存在だが、人付き合いがあまり得意でなかったりと、なかなかにバラエティに富んだ面々だ。このフレッシャーズを演じる若手俳優陣の顔ぶれがまた、本作が社会派ドラマでありながら、青春ドラマの側面を持ち合わせてもいることで力を発揮しそうである。回を重ねるごとに彼らのキャラクター性もよりはっきりと浮かび上がってくるであろうから、えみると同じく注意深く見守っていきたいところだ。


 さて、新人ケースワーカーのえみるが、初めて深く関わることになる生活保護受給者は阿久沢正男(遠藤憲一)である。彼は生活保護費のほとんどを借金返済に回し、食事も満足に取れない生活を送り、体調も芳しくない。そのため就職活動をしようにも当然上手くはいかないのである。借金返済だけが「自分の生きている証」なのだと口にする彼は、えみるの積極的な態度に対して腰が引けている。しかしなぜえみるはそんなに積極的なのか。自殺をほのめかすことが癖になっていて、周囲の人々にまともに取り合ってもらえなかった受給者のひとりが、ある日本当に自殺してしまったのだ。新人ケースワーカーの彼女にとって、かなり苦しい経験となったのだろう(新人じゃなくてもそうであろう)。


 そして不器用な彼女は、愚直なまでに、自分の担当する受給者たちに寄り添っていくことになる。この回の阿久沢は、えみるの必死な説得により法テラスに行くことを決心。結果、借金の過払いが発覚したのである。不器用で、愚直で、積極的な彼女の行動の賜物である。阿久沢の社会復帰の第一歩を支えることになったわけだが、演じる遠藤の“コワモテ”な顔立ちが柔らかく崩れたことこそが、えみるの得た最も大きなものかもしれない。


 日本国憲法の第25条の一部をタイトルに冠した、『健康で文化的な最低限度の生活』。不器用な新人ケースワーカーの目を通すことによって、深刻な、センシティブな問題を、きわめて前向きに捉えていくことができるような気がする。この物語を主演の吉岡を筆頭に、彼女らがどのようなアプローチで見せていくのか、目が離せない。


(折田侑駿)