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学校で何年生からセックスや避妊について教えるべき? 高校生の性交経験率は約3割、「きちんとした情報を知らないとリスク高い」

2018年07月17日 14:51  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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日本で性教育は、中学校で受精や妊娠について教え、高校で避妊や人工妊娠中絶について教えると学習指導要領で定められている。しかし性教育の内容はこれで十分なのか。もっと早くから性教育を実施しなくてよいのか。

「これからの性教育プロジェクト」は7月12日、日本財団ビル(東京都港区)で第1回目のシンポジウムを開催。都議会議員や保護者ら約150人が集まった。

「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では9~12歳で避妊について学ぶ

自民党の古賀俊昭都議(70)が今年3月、足立区の区立中学校で避妊について教えているのは「問題ではないのか」と都議会で発言した。これを受けて東京都教育委員会が、同区の教委を指導するということがあった。

こうした政治の不当な介入に抵抗するため、"人間と性"教育研究協議会の水野哲夫さんやNPO法人「ピルコン」の染矢明日香理事長が中心となって同プロジェクトを立ち上げた。

古賀都議は2003年にも七生養護学校(東京都日野市)の性教育を問題視し、教員を非難したり、教材を没収したりするといった介入を行っている。2013年には、裁判で敗訴し、教員らに賠償金を支払うように命じられているにも関わらず、今年になってまた同様の介入を行ったことになる。

古賀都議に限らず、性教育を好ましくないと考える議員は少なくない。同じく自民党の山谷えり子参議院議員(67)もかつて、「子供時代は、蝶々が飛んでいる姿、お花が綺麗に咲く姿、昆虫が一生懸命に歩いている姿、それで十分命の尊さを学んできた。(性について具体的なことは)結婚してから」(『ニッポンの性教育』中京テレビ)などと発言している。こうした保守系議員の考えについて、水野さんはこう指摘する。

「日本中学生・高校生に性交や避妊の方法を教えると性的に活発になってしまうんじゃないか。野放図になってしまうんじゃないか。風紀が乱れるんじゃないかと心配しているのだと思います。保守系の議員に限らず『寝た子を起こすのか』と考える人は多い。しかし問題は"寝ていない"ということなんです」

日本性教育協会の調査によると、性交経験率は男子高校生で26.6%、女子高校生で30.3%に上る。地域によってはもっと割合が高いところもあるだろう。高校生にもなればすでに"寝ていない"のが現状であり、お互いの意志を尊重することや具体的な避妊の方法について教える必要があるはずだ。

文部科学省が定めた学習指導要領では、避妊や中絶について教えるのは高校生になってからとしている。しかし性教育の国際スタンダードである「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」とはかなり違いがある。

ユネスコ(国連教育科学文化機関)やWHO(世界保健機関)によって作成されたこのガイダンスでは、5~8歳で排卵や受精、妊娠について学び、9~12歳で避妊についても学ぶのがよいとしている。日本では高校になってから教える内容を小学生のうちから教えているのだ。

より重要なことは、このガイダンスが「包括的な性教育」を掲げているということだ。日本で性教育というと性交や避妊についてのみ教えるというイメージが強いが、「包括的性教育」では人間関係や人権、ジェンダーの平等についても触れている。例えば、ジェンダーや年齢、経済力が人間関係に不平等をもたらすことなどが学習内容に含まれている。

「にんしんSOS東京」、2年半で相談者数はのべ8438人、うち3割が10代

高校生にもなれば約3割はセックスをしている。それにもかかわらず妊娠の仕組みや避妊の方法について知らなければ、トラブルが起きるのも当然だ。妊娠に関する相談窓口「にんしんSOS東京」には、2016年1月以降、のべ8438人から相談が寄せられているという。相談者の37%が20代だが、10代も30%に上り、男性からの相談も16%ある。

あるとき高校生の女の子から、「生理が遅れています。検査薬を試してみた方がいいですか?親には絶対言えない…どうしたらいいのかもうほんとにわからない」という相談が来た。付き添って検査をしたところ、中学生のときの性被害、そして高校生になって再び被害にあったことを打ち明けられたという。

こうしたトラブルは、加害者にお互いの同意を尊重する姿勢があれば防げたものだ。同意のない性行為が犯罪であること、また緊急避妊薬や妊娠したかもしれないときの対処法、安心で安全な相談先について誰もが知っていれば、一人で不安を抱えながら過ごさなくて良かったかもしれない。そのため「にんしんSOS東京」の中島かおり代表は、こう話している。

「私達の相談窓口は、何かが起きて当事者になってから機能を果たしている。もっと手前で性に関する包括的な教育を受けることができていれば、自分で考えて判断できる場合もあると思う。性や妊娠に関することは、恥ずかしく隠さないといけないことではなくて、相談していい、一人で抱えず誰かを頼っていいと思える子が増えると思う」

イベントには、NPO法人「ピルコン」の染矢明日香理事長も登壇。「性や避妊についてきちんとした情報を得ないまま性経験をしている子がいて、リスクが高い。それをそのまま放置していいのでしょうか」と話した。国際基督教大学の福田和子さんは、世界では一般的になっている「避妊インプラント」や「避妊注射」、さらには信頼できる情報や相談できる場所が日本にも必要だと話す。そうしたものが日本にはなぜないのかという意味で「#なんでないのプロジェクト」を主催している。

水野さん、染矢さん、福田さんが中心となって発足した「これからの性教育プロジェクト」は今後、超党派の区議・都議・国会議員等を対象にした学習会を開催したり、啓発パンフレットの作成・配布を行っていくという。