厚生労働省が発表した今年5月の有効求人倍率は1.6倍。1.6倍台に達するのは、高度経済成長期が終りを迎えた直後の1974年以来で、日本の人手不足の深刻さが伺える。
企業もなんとか人手を確保しようと従来の就職活動のスタイルを変え、就活生にアプローチしているらしく、7月11日に放送された『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ系)では、若者文化評論家・原田曜平氏が近年の就職活動の実態について解説した。(文:石川祐介)
「平凡な学生」にも逆求人が来る状況に
原田氏は「今は"採用氷河期"と言われていて、採用する側が(人材を)採れないって時代になっていて…」と話し始め、「特に地方の企業や中小企業はすごく深刻になっている」と地域や会社の規模によっても深刻度は大きく違っていると口にする。
そうした中、最近出てきているのが「逆求人」系の採用サービスだ。就活生のプロフィールを見て企業側からアプローチし、逆に学生が「僕にオファーした理由ってなんなんですか?」と企業に聞くのだという。
これを聞いた明石家さんまさんは、スタジオ観覧に来ていた若者に向かって「君らいいな」と羨ましがるような声を上げた。
さらに、原田氏によると、「本当に平凡な学生もこういう状態になっている」といい、企業にとっては "学生"というだけで価値ある存在のようだ。
楽して入社した社員は使えないのか
帝国データバンクは今月9日が発表した調査によれば、従業員の離職や採用難等により収益が悪化したことなどを要因とする倒産「人手不足倒産」は2018年上半期に70件も発生した。
3年連続で前年同月を上回り、年間合計が100件を超えた2017年を上回る勢いを見せている。今後も人手不足倒産はますます深刻化しそうだ。企業もそのことを危惧して、なんとか人手を確保しようと奔走しているのだろう。
ただ番組では、原田氏の話を聞いた中部大学教授・武田邦彦氏は「全部ダメになるけどね」とボソリ。
「甘く入社するから、その後成長しないで、厳しいところに抜かれていくんです。だから、10年くらいしたら、みんな退職になっちゃう」
と、楽して入社してしまった結果、戦力になれず、長続きしないであっさり辞めてしまうと毒づいた。必死になって人手を確保してもすぐに辞めてしまっては意味がない。企業は入社後も若手社員への忖度が欠かせなくなりそうだ。