2018年07月16日 10:12 弁護士ドットコム
配偶者からの暴言など、モラルハラスメント(モラハラ)に悩まされている人の話を聞いたことはありませんか。弁護士ドットコムの法律Q&Aには、たくさんの相談が寄せられています。いくつかの事例を紹介します。
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ある女性は、夫婦喧嘩をするたびに、夫から「嫌ならでていけ!」「お前がいなくても俺はなにも困らない」「お前の気持ちなんかどうでもいい」「お前よりペットのほうが大事」「名義は俺だしお前に居座る権利はない!」などの暴言を吐かれ、精神的に参ってしまいました。
別の女性は、夫が自分の両親や兄弟に対する中傷や悪口をやめず、「結婚式をしようともしない、話もでない」「結婚指輪をくれない。おもちゃでいいからといっても、てめえで買え!といわれる」といった状況だそうです。女性は、「批判しされ過ぎたりバカにされ過ぎて、自分は正しいことをいっているのか?と私自身を不信に感じてしまってなにが正しいのか?わからなくなってしまっている」と精神的に追い込まれているそうです。
さらに別の女性の事例では、夫の不倫を理由に離婚を決意したものの、いざ離婚の話を切り出すと、「働きもせんと何を言うてんねん!」「掛け持ちしろ!」「俺とお前じゃ立場がちゃうねん!」「自立しろ!自立もできへん人間が偉そうに言うな!」などの暴言を吐かれました。
養育費や年金分割を請求しても「お前に金を一円も払わない!払いたくもない!他力本願の人間が!」と一蹴されたそうです。この女性はもともと、長女の妊娠をきっかけに結婚したのですが、そのことについても夫から「本当は生ませたく無かった」などと吐き捨てられたため、女性は「どれだけ私に罵声をあびせ、どれだけ私に屈辱を与えれば気が済むのか」と憤っています。
このように、多くの方が苦しめられている「モラハラ発言」。離婚は認められるのでしょうか。
法律上、裁判で認められる離婚原因としては民法770条で5つの条件が規定されていますが、モラハラで離婚できるという直接の規定はありません。
しかし、モラハラが相当長期間にわたって執拗に行われたり、その内容が、人格を完全に否定するような常軌を逸したものであれば、「(5号)婚姻を継続しがたい重大な理由」にあたるものとして、裁判や調停で離婚が認められる可能性はあるでしょう。
相談者の方のケースも「モラハラ」のケースかと思われます。
モラハラは認知されるようになってまだ日も浅く、裁判例も蓄積されていないので、具体的な判断は個別のケースによります。
一人で悩まず、専門家に相談してみて下さい。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
山口 政貴(やまぐち・のりたか)弁護士
サラリーマンを経た後、2003年司法試験合格。都内事務所の勤務弁護士を経験し、2013年に神楽坂中央法律事務所を設立。離婚、婚約破棄等を専門に扱っており、男女トラブルのスペシャリストとしても知られる。
事務所名:神楽坂中央法律事務所
事務所URL:http://www.kclaw.jp/index.html