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波瑠主演『サバイバル・ウェディング』は単なるコメディではない? “女性編集者ドラマ”に新しい風

2018年07月15日 16:11  リアルサウンド

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 「タオルの様に扱われるか、一生物のように扱われるかはお前次第ってことだ」。元恋人との復縁を焦る黒木さやか(波瑠)に宇佐美博人(伊勢谷友介)が放った言葉。“寿退社からの結婚破棄“、”毒舌ナルシストの上司“、”半年以内に結婚しないとクビ“という設定、伊勢谷の強烈なビジュアルから油断していたが、『サバイバル・ウェディング』(日本テレビ系)は単なるコメディではなかった。軽快に進んでいく展開の中で、時折、背筋が伸びるようなセリフが宇佐美から発せられる。


【写真】『サバイバル・ウェディング』第1話の波瑠


 さやかは出版社の編集部に務めるOLだ。多忙な毎日に恋愛との両立がうまくいかず、結婚を焦るあまり、恋人の石橋和也(風間俊介)から「結婚結婚って、重いんだよ」と別れを切り出されてしまう。職なし、彼氏なしのところを宇佐美に拾われ、さやかは“実録婚活コラム”を書くため、半年以内の結婚を要求される。


 出版社に勤める女性を主人公にしたドラマはこれまで多く作られてきた。中でも女性の働き方に焦点を当てた『働きマン』(日本テレビ系)や、漫画編集者を中心に漫画家やその周りの人たちの想いを捉えた『重版出来!』(TBS系)。また、校閲というあまりスポットの当たらない職種を切り取った『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)などのヒット作が生まれている。これらは仕事をパブリック、恋愛をプライベートと捉え、この2つの両立を話の軸としている。


 しかし、『サバイバル・ウェディング』は第1話を観る限り、さやかは”仕事=結婚”という方程式が成り立ってしまっている。これは基本から外れた形であるが、コメディ要素を加えテンポよく場面展開していくことで、違和感なくストーリーが頭に入ってくる。波瑠をはじめ、伊勢谷や風間といった実力のある役者たちの力はもちろんだが、『のだめカンタービレ』シリーズ(フジテレビ系)の脚本を務めた衛藤凛の手腕が光っている。


 冒頭で触れた宇佐美のセリフもオープンカーで颯爽とさやかを連れ出した後のシーン。宇佐美の恋愛指南をこれまで仕事のためと仕方なく聞いていたさやかだが、「お前次第」という言葉に胸打たれ、グルメ編集時代に見つけたオススメのもつ鍋を勢いよく食らった。


 「全ては私次第か……」と自分に言い聞かせ、婚活コラムにも前向きな姿勢を見せ始めたさやか。ポジティブな生活を取り戻し始めたと思った帰り道に和也と出会い、キスをされてしまう。「自分を安売りするな」という宇佐美の忠告をさやかは無視してしまったのだ。


 女性お仕事ドラマの定石を展開の速さとコメディによって塗り替えることに挑戦した本ドラマ。これまでになかった等身大女性という波留の役柄や、日テレTOPICSのインタビューにて「僕は“やなヤツ”の役が合っている」と本人を認めさせた伊勢谷の宇佐美役と、第1話は配役にも必然性を感じる回となった。第2話からは王子と呼ばれるイケメン社員・柏木祐一を演じる吉沢亮も本格的に加わってくる。このドラマが終わる頃には『働きマン』をはじめとする女性編集者ドラマのヒット作として名を連ねていることを期待する。


(馬場翔大)