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LINEチケット、ダフ屋行為禁止法案提出……チケット高額転売問題は解決へ向かうか?

2018年07月15日 10:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 近年、音楽ライブ市場が拡大する一方で、チケットの高額転売を巡る問題に注目が集まり、官民双方による様々な対策が具体化しつつある。


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 2016年8月23日、一般社団法人 日本音楽制作者連盟(FMPJ) 、一般社団法人 日本音楽事業者協会(JAME)、一般社団法人 コンサートプロモーターズ協会(ACPC) 、コンピュータ・チケッティング協議会の4つの業界団体が、多くのアーティストの署名とともに、朝日新聞と読売新聞に「私たちは音楽の未来を奪うチケットの高額転売に反対します」との意見広告を出したことで、広く知られるようになったチケット転売問題。2017年5月10日には、業界団体が券面価格で転売ができる公式のチケット転売サイト『公式チケットトレードリセール(チケトレ)』を開設する一方で、翌年5月末にはミクシィ傘下のフンザが運営するチケット転売サイト最大手『チケットキャンプ』がサイト上の表示に関して商標法違反と不正競争防止法違反の容疑で警察の捜査を受けて閉鎖、その後も不正な転売業者の温床となっていたことが明らかになるなど、同問題は新たな局面を迎えつつある。


 そうした状況の中、LINEは6月28日、千葉・舞浜アンフィシアターで開催した事業戦略発表会『LINE CONFERNCE 2018』にて、開発を進めていた電子チケットサービス「LINEチケット」の提供を、今秋より開始すると発表した。「LINEチケット」はLINE、アミューズ、テイパーズの共同出資による、既存の“紙のチケット”は一切扱わない電子チケットオンリーのサービス。アーティストの公式アカウントと友だち登録し、そこからチケットを選択、LINE Payで支払いを済ませた後に発券するシステムで、各LINE IDと紐付けることで、ファンとアーティストの関係、また、イベントとユーザーの関係を“リデザイン”していくことを目指す。不正転売や高額転売問題の解決はもちろん、東京五輪に向けたチケット問題の解決策としても注目されている。


 「LINEチケット」の発表と同日、官では超党派のチケット高額転売問題対策議連がインターネット上も含めた「ダフ屋行為」を禁止する法案をまとめた。2020年東京五輪・パラリンピックを念頭に、今国会での成立を目指す。これまでチケット転売問題に対し、多くの都道府県が迷惑防止条例で駅やチケット売り場など「公共の場」でのダフ屋行為を禁じていたが、ネット上は対象外だった。この法案では、興行主の同意を得ずに定価を超える価格でチケットを転売する行為を「不正転売」と定義。懲役1年以下か罰金100万円以下の罰則も付く。なお、個人が都合で行けなくなったチケットを他人に売ることは不正に当たらない。


 音楽業界でも、様々な対策が練られている。ジャニーズ事務所などの大手芸能事務所やレコード会社では、所属アーティストのコンサートでチケットの電子化や顔認証を行うなどの対策を取り、一定の成果を挙げていた。しかし、チケット当選後に顔写真を登録したり、転売者が身分証明書を貸し出したりするなどの抜け道があり、不正転売を完全には防げなかった。そんな中で注目を集めたのが、12年ぶりの全国ツアー『宇多田ヒカル CONCERT TOUR 2018』を11月に控えた宇多田ヒカルのケースだ。このツアーのチケットを入手するには、6月27日にリリースされた7枚目のアルバム『初恋』の購入特典として封入された「ツアーチケット先行応募抽選券」にて応募する必要があるのだが、この時点で顔写真を登録しなければいけないため、チケット当選後に不正をするのは不可能だ。また、CDを大量に購入して応募しても、同名義では一枚分しかカウントされない仕組みにもなっている。この対策が大きな効果を発揮すれば今後、大物アーティストのチケット販売のモデルケースとなる可能性もありそうだ。


 長らく不正な転売業者とのイタチごっこが続いてきたチケット転売問題だが、2020年に向けて、いよいよ解決の時が近づいてきたのかもしれない。(松田広宣)