暑い日には、キンと冷えたビールが飲みたくなる。しかし「ビールは高いから第3のビールで我慢」と言う人も少なくはないはず。近年、ビールの出荷量が減る一方で、いわゆる「第3のビール」の出荷量が増えている。
ざっくり説明すると日本でビール系飲料は「ビール」「発泡酒」「その他の発泡性酒類」に分けられる。価格はビールが180円前後、発泡酒が130円前後で、「第3のビール」(その他の発泡性酒類)が最安だ。大手メーカーも「クリアアサヒ」「のどごし生」「金麦」など、第3のビールを「新ジャンル」と銘打ち、110円前後で販売している。
ただでさえ安価なのに、「プライベートブランド」(以下、PB)になると更に安くなるものもある。PBとは小売店や卸業が独自で出しているブランドのこと。「トップバリュ」(イオン)や「セブンプレミアム」(セブン&アイ)といえばわかりやすいだろう。
今回、キャリコネニュース編集部はPBを中心とした「激安第3のビール」12種類を飲み比べした。値段は最高で114円、最安で74円(すべて価格は税別)。価格競争甚だしい激安ビール、どれが一番美味しいのだろうか。
クセモノ揃いの「ベルギー産」ビール 同じPBでも味に大きな差が
キャリコネニュース編集部は今回、以下の商品を用意した。
1.セブンプレミアム サントリー ザ・ブリュー
2.ファミリーマート クリアモルト
3.ハイトジンロ プライムドラフト レギュラー
4.ユーロホップ
5.サントリー&CGC グランドゴールド
6.CGC ジェントプラス
7.ステイゴールド
8.くらしモア 爽生
9.トップバリュ バーリアルエクストラ リッチテイスト
10.トップバリュ バーリアルエクストラ
11.スターセレクト ぐい麦
12.泡麦
13.こだわり凛麦Classic
14.麦旨GOLD
価格は1の「セブンプレミアム サントリー ザ・ブリュー」が最も高く、14の「麦旨GOLD」にかけて安くなっている。114円も十分に安いが、最安74円の存在を知ってしまうと貴族の飲み物に思えてくる。これらを高い順に飲んでいった。
評価は「甘さ」「苦味」「酸味」「エグミ」「キレ」「濃さ」をチェックし、「飲みやすさ」「総合点(また飲みたいか)」を付けていった(最高評価5)。アルコール度数は5~6%。なお個人の感想なので、参考程度に留めていただければ幸いだ。
1.セブンプレミアム サントリー ザ・ブリュー/114円(購入店:セブンイレブン)
やはりビールと比べると水っぽさを感じるが、一番高いだけのことはあり、「これぞ第3のビール」といった安定した味わいだった。「333」「シンハー」など東南アジア系というより、「バドワイザー」(アメリカ)のサッパリ感に近いが、炭酸が弱く飲みごたえはない。しかしクセがない分「飲みやすさ」は4、「総合点」も4となった。
甘さ ★☆☆☆☆
苦味 ★★☆☆☆
酸味 ★★☆☆☆
エグミ★★☆☆☆
キレ ★☆☆☆☆
濃さ ★☆☆☆☆
2.ファミリーマート クリアモルト/114円(購入店:ファミリーマート)
製造元はキリンビール。クリアと言いながらも1缶で満足できそうなくらい濃く、夏に飲むには重い。編集部では「ホッピーの白みたい。ビールの偽物感がすごい」という声も。確かに舌に苦味が残るがこれが第3のビールなりの「ビールっぽさ」アピールなのかもしれない。意見が割れたものの「飲みやすさ」は3、「総合点」は2とした。
甘さ ★★★☆☆
苦味 ★★★★☆
酸味 ★☆☆☆☆
エグミ★★★★☆
キレ ★☆☆☆☆
濃さ ★★★★★
3.ハイトジンロ プライムドラフト レギュラー(韓国)/103円(購入店:ローソンストア100)
注目すべきはネーミングから分かる通り、輸入取引先は「眞露」。そのせいもあって香りも後味も妙に甘いことから「飲めば飲むほどJINROの味がする」という声も。およそビールから想像できない甘みやエグミがあり、脳がパニックを起こしそうになる。そのため「飲みやすさ」も「総合点」も1となった。
甘さ ★★★★☆
苦味 ★★☆☆☆
酸味 ★☆☆☆☆
エグミ★★★★☆
キレ ★★★★★
濃さ ★★★☆☆
4.ユーロホップ(ベルギー)/103円(購入店:ローソンストア100)
ビールの本場・ベルギー産。パッケージが本格派ビールのようなデザインで期待値は高かった。しかしエグミが強くハチミツのような風味がした。レモネードビアのような爽やかに甘い感じではない。これはキンキンに冷やさないと飲めない。「飲みやすさ」「総合点」ともに1。
甘さ ★★★★★
苦味 ★★☆☆☆
酸味 ★☆☆☆☆
エグミ★★★★★
キレ ★☆☆☆☆
濃さ ★★★★★
5.サントリー&CGC グランドゴールド/95円(購入店:ゆりストア)
中小スーパーマーケットの共同出資で運営するCGCとサントリーが共同開発した商品。100円を切るが香りがビールそのもの。第3のビールとしては炭酸も強く、サントリー特有のクリア感に近しいものが味わえる。キリッと冷やすとまさに飲みごたえ爽快で、東南アジア系ビールのさっぱりした味に似ている。「飲みやすさ」5、「総合点」4と非常に高評価だった。
甘さ ★☆☆☆☆
苦味 ★★☆☆☆
酸味 ★★☆☆☆
エグミ★☆☆☆☆
キレ ★★★★☆
濃さ ★☆☆☆☆
6.CGC ジェントプラス(韓国)/94円(購入店:ゆりストア)
CGCが開発した同商品はパッケージに「麦の旨み」と銘打たれるだけあって、どっしりした味わいが印象的だ。100円近辺のビールは「どっしり」感を模索して迷子になっている印象があるが、明確に麦の重みを感じられる。他に比べ炭酸が強めなのも嬉しい。筆者はじめ、酒飲み一同から「第3のビールのヱビスと言いたい」という声が上がった。ただ半分くらい飲むと、サッパリしたいのが飲みたいなと思う。「飲みやすさ」「総合点」ともに4となった。
甘さ ★☆☆☆☆
苦味 ★★★☆☆
酸味 ★★☆☆☆
エグミ★☆☆☆☆
キレ ★★★★☆
濃さ ★★★☆☆
7.ステイゴールド(ベルギー)/90円(購入店:西友)
最もポップなデザインの缶で警戒はしていたが、10円ガムのブドウ味のような風味で、胃にボディーブローをくらったかのような気分になった。ベルギーのビールには砂糖を入れるものもあるというが、それを考慮しても味の方向性が迷子すぎて一口で顔を顰める人も。「飲みやすさ」「総合点」ともに1。
甘さ ★★★★★
苦味 ★☆☆☆☆
酸味 ★★☆☆☆
エグミ★★★★★
キレ ★☆☆☆☆
濃さ ★★★★★
8.くらしモア 爽生(韓国)/88円(購入店:エコス)
ここから90円を切る。日本流通産業のPB「くらしモア」から出ている同商品。香りはビールに似ているが、一口飲むとノンアルビールをさらに薄めた味がした。期待値が高かった分、余計に虚無を感じた。中には「舌に残る妙な甘さが後をひく」と感じる人も。クリア感がある分「飲みやすさ」は3だが、「総合点」は2。
甘さ ★★☆☆☆
苦味 ★★☆☆☆
酸味 ★★☆☆☆
エグミ★★☆☆☆
キレ ★☆☆☆☆
濃さ ★☆☆☆☆
9.トップバリュ バーリアルエクストラ リッチテイスト(韓国)/88円(購入店:ミニストップ)
次はイオン系PB「トップバリュ」の2商品を飲み比べた。味はバナナの匂いがする練り消しを口に含んだ感じ。妙に味が濃く、舌に絡みつき酒が進まない。バナナ感のあるフルーティーなビールを目指したと思われる。方向性は理解できるが美味しくはない。「飲みやすさ」「総合点」ともに「1」。
甘さ ★★★☆☆
苦味 ★★★★☆
酸味 ★☆☆☆☆
エグミ★★★★★
キレ ★☆☆☆☆
濃さ ★★★★★
10.トップバリュ バーリアルエクストラ(韓国)/88円(ミニストップ)
同じくトップバリュの「無印」。リッチテイストで深い傷を負ったので信用できなかったが、バドワイザーを更に薄くしたクリア感がある。『ユーロホップ』以降、インパクトの強い商品が多かったので相対的に美味しく感じられた。「ビールに近づけようと頑張ったように感じられる」と評価する声も。「飲みやすさ」は4、「総合点」は3となった。
甘さ ★☆☆☆☆
苦味 ★★★☆☆
酸味 ★☆☆☆☆
エグミ★☆☆☆☆
キレ ★★☆☆☆
濃さ ★★☆☆☆
11.スターセレクト ぐい麦(韓国)/84円(購入店:ライフ)
ライフのPBである「スターセレクト」。ドイツ産ホップ使用をしているが84円。ただ、香りにビール感はゼロ。「アルコール入ってる?」という声も出ていた。飲みやすいといえば飲みやすいが、発泡酒の水割りのように思え、物足りない。ただクセがあるわけでも不味いわけでもなく、「飲みやすさ」は5、「総合点」は4となった。
甘さ ★☆☆☆☆
苦味 ★★☆☆☆
酸味 ★★☆☆☆
エグミ★☆☆☆☆
キレ ★★☆☆☆
濃さ ★☆☆☆☆
12.泡麦/83円(購入店:西友)
西友で購入した韓国産ビールで、3種類のホップが使用されている。香りは甘いが、全然麦の味がしない。「トクホのビールがこんな感じ」と感想を述べる人も。ビールなのにノンアルコール飲料を飲んでいる気もする。飲み口は軽やかなため「飲みやすさ」は5だが、ビールっぽさを味わえないため「総合点」は3となった。
甘さ ★☆☆☆☆
苦味 ★★☆☆☆
酸味 ★★★☆☆
エグミ★☆☆☆☆
キレ ★★★★☆
濃さ ★☆☆☆☆
13.こだわり凛麦Classic(韓国)/79円(購入店:業務スーパー)
業務スーパーで購入したベルギー産ビール。ついに80円を切り、未体験ゾーンに突入した。80円台は水っぽいものが多かったが、これは90円台の中でもクセの強い商品のような独特のエグミがあり、ハチミツっぽい味がする。麦というかよりも小麦感があるが、まあ飲める。「飲みやすさ」3だが、再度飲みたいかと言われたらそうでもないので「総合点」は2。
甘さ ★★☆☆☆
苦味 ★☆☆☆☆
酸味 ★★★☆☆
エグミ★★★★☆
キレ ★☆☆☆☆
濃さ ★★★★☆
14.麦旨GOLD(韓国)/74円(購入店:業務スーパー)
最後は同じく業務スーパーで購入した韓国産。最安74円の味は、最高価格の「ザ・ブリュー」を全体的に薄くした感じだ。ビールの匂いはしないが、爽やかな香りで、意外と飲める。販売元が神戸物産フーズだが、「市場価格より大幅に安い商品を取り扱っているイメージがあるので、ある意味で安心」という見方も。「飲みやすさ」は4、「総合点」は3。
甘さ ★★☆☆☆
苦味 ★★☆☆☆
酸味 ★★☆☆☆
エグミ★★☆☆☆
キレ ★★☆☆☆
濃さ ★☆☆☆☆
100円近辺の中間層は「魔の価格帯」で美味しいか否かは博打?
飲み比べ前の予想としては「セブンプレミアムはうまく、安くなるほどまずくなるのでは」「ベルギー産に期待したい」などの声が上がっていた。しかし飲んでいくうちに、価格帯ごとに味に傾向があることが分かった。
110円台は「ナショナルブランドの第3のビールに比較的近い味わい」。88~104円の中間層になると「個性豊かなビールを目指した感」があり、ビールっぽいものと強いエグミが強いものと二極化が起こった。そして、80円台以下は「すべてクリア感は強いが全体的に水っぽい感じ」だ。
印象としては、価格帯が高いものと低いものはクリア感が強く、そこそこ美味しく飲むことができた。ただ中間層に関しては、非常に美味しく感じられるものがある一方で、トラウマ一歩手前の味がするものもあるので「魔の価格帯」と言えそうだ。
最安ではなく中間層が「魔の価格帯」であることについて、キャリコネニュース編集部は「少し予算があると変に冒険してしまい、結果よくわからない味わいが生み出されるのではないか」と推測している。
また原産国別に見ると、ベルギー産はハチミツのような甘さが目立っていた。同国ではビールに砂糖を入れるものもあるため、それを目指したのだろうか。韓国産も後を引く甘さがあるように感じられた。
以上を踏まえて、美味しかったベスト3は
1位「サントリー&CGC グランドゴールド」(95円)
2位「CGC ジェントプラス」(94円)
3位「セブンプレミアム ザ・ブリュー」(114円)
となった。CGCがまさかのワンツーフィニッシュ。3位には一番高いセブンプレミアムが入った。なお1位と3位はサントリーとの共同開発となっており、ナショナルブランドの意地を感じた。「グランドゴールド」「ザ・ブリュー」はクセがなく飲みやすいので万人受けしそうではある。「トップバリュ バーリアルエクストラ」(88円)、「ぐい麦」(84円)、「旨麦GOLD」(74円)も似た系統の味わい。「ジェントプラス」は酒飲みから熱烈な支持を受け2位に浮上した。
一方、もう飲みたくないワースト3は、
1位「ステイゴールド」(90円)
2位「トップバリュ バーリアルエクストラ リッチテイスト」(88円)
3位「ユーロホップ」(103円)
とやはり中間層の商品がランクインした。ステイゴールドとリッチテイストは同じぐらいクセが強いのだが、前者は甘さが無理やり過ぎて、ビールを目指しているのか、別の何かになろうとしたのかよくわからなかった。まだリッチテイストの方が「フルーティーな感じにしたかったんだな」というのがわかるため、2位。
今回飲んだPB・激安第3のビールはどれも「ビールみたい!」とは言い切れるものは少なかった。「キレ」や「のどごし」が足りず、味気なく感じられた。その中でCGC関連の2商品は「これが第3のビールなの!?」という驚きがあった。
傾向としてほとんどが炭酸が弱く感じられたので、強炭酸味にしていただきたい。また「第3のビール」の原材料には「スピリッツ」が使われているため、飲んだ時の酔い方が、同じくスピリッツを使用している「ストロングゼロ」に似ていたのは新たな発見だった(ストロングゼロの方がヤバイ酔い方をするが)。
激安商品14種類を飲んで学んだことは
・キンキンに冷やして飲むべし(ぬるくなるとエグミが全面に出てくる)
・PB・激安第3のビールを買う際は「最も高いもの」か「最も安いもの」を選ぶのが無難(ただCGCのポテンシャルは高い)
ということだ。ビールが飲みたいならビールを飲めばいいと思う。参考になれば幸いだが、何分アルコールを摂取した上での体感なのでその点はご留意いただきたい。よい夏をお過ごしください。