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『サバイバル・ウェディング』は波瑠のラブコメ代表作となるか? ニュートラルな打たれ強さに期待

2018年07月14日 06:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 7月クールは「アラサーヒロイン」×「結婚がテーマの恋愛ドラマ」がそろい踏み。『義母と娘のブルース』(TBS系)では、綾瀬はるか演じる33歳のヒロインが年上の子持ち男性と結婚。『高嶺の花』(日本テレビ系)では、石原さとみが演じる29歳のヒロインが結婚式当日に婚約破棄されてしまう。現実でも平成27年には女性の平均初婚年齢が29.4歳になり、この20年で約3歳分、高齢化。アラサー女子にとって、結婚はやはり身近なテーマなのだ。


参考:『絶対零度』『サバイバル・ウェディング』『この世界の片隅に』……2018年夏ドラマ注目作は?


 そして、7月14日スタートの『サバイバル・ウェディング』では、波瑠が演じる主人公、雑誌編集者のさやかが29歳で“滑り込み婚”をし寿退社しようとする。しかし、婚約者の浮気が発覚して破談に。人生計画が狂ってしまったさやかは、再び職を得るため、女性雑誌のカリスマ編集長・宇佐美(伊勢谷友介)の命令に従い、半年以内の結婚を目指すことになる。「日本で一番恋愛に詳しい」と自称する宇佐美は、さやかに「ファッションのハイブランドを見習って自分の価値を上げろ」とオーダー。さやかは元婚約者の和也(風間俊介)からの連絡をわざと無視してみるが……。そんな数々の恋愛マニュアルが披露されるラブコメディだ。


 この物語の原型は、教養のある男性が年下の女性に自己流の教育をし、大人の女性に育てあげる名作『マイ・フェア・レディ』だろう。2年前には連続ドラマ『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』(TBS系)でも、中谷美紀と藤木直人が似たような男女関係を演じ、藤木演じる謎の料理人が上から目線で中谷演じる美容皮膚科医に男心をつかむためのアドバイスをしていた。実はこの作品の原案は作家・水野敬也の書いた『スパルタ婚活塾』で、『サバイバル・ウェディング』の原作は水野の弟子である大橋弘祐が書いた小説だ。構造が『マイ・フェア・レディ』式で似ているのも納得だ。


 ちなみに『マイ・フェア・レディ』の結末でヒギンズ教授が教え子の花売り娘イライザと結ばれるように、このパターンのラブストーリーではヒロインが最後には指南役の男性を選ぶというのが定石。ということは『サバイバル・ウェディング』でもさやかが最終的には宇佐美を選ぶことになるのか?


 女性視聴者としては正直、男性が女性を“育て上げる”というやや古臭い構図には違和感を抱くし、原作者の大橋が「書いている本人が結婚しないままに40歳を過ぎてしまった」と告白していることでも分かるように、劇中で明かされる婚活マニュアルはあくまで男性目線で、現実で有効とは限らない。宇佐美の理論やアドバイスはその言葉だけピックアップすると、女性から反発されることもあるだろう。だが、そんな中、ダメ出しをされるヒロインを他でもない波瑠が演じることでバランスが取れそうだ。


 これが見るからに女子力が高い女優が演じたら嫌味になってしまう。透明感があり、表情にもサバサバした性格がにじむニュートラルな魅力の波瑠だからこそ、男性目線のことを言われても、心底傷ついたりはしないように見え、同じ女性としても構えずに見られるのだ。


 NHK連続テレビ小説『あさが来た』で実業家として成功するヒロインを演じたときは、まさに彼女のその超然とした魅力が活きた。その後に出演した『あなたのことはそれほど』(TBS系)では、夫がいながら不倫する妻の役で、視聴者からバッシングされるような役柄でありながら、最後まで自分の欲望に忠実で、かつ自分のおろかさとずるさは潔く認めるヒロインの生き方を演じ、最後には視聴者も応援せざるをえないようなキャラクターの一貫性を見せた。


 今年は『もみ消して冬 ~わが家の問題なかったことに~』(日本テレビ系)で主人公の姉を演じ、自己中心的でわがままなキャリア女性をコミカルに好演。続く『未解決の女 警視庁文書捜査官』(テレビ朝日系)では、正義感が強く、粘り強く事件を解決する刑事を演じた。そして3クール連続の連ドラ出演となる『サバイバル・ウェディング』では、前2作とちがって特に優秀でもなく、世渡りも下手な等身大の女性を演じることになる。恋愛で失敗してしまうような“あるある”の場面で、女性の共感をどれだけ呼べるか、ニュートラルからややリアル方向に寄せた演技に期待したい。(小田慶子)