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「前半と後半ではジャンルが違う」 『ジュラシック・ワールド/炎の王国』J・A・バヨナ監督インタビュー

2018年07月13日 10:52  リアルサウンド

リアルサウンド

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 映画『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が7月13日に公開された。2015年に公開され、世界歴代映画興行収入第5位にランクインする大ヒットを記録した『ジュラシック・ワールド』の続編となる本作は、人気テーマパーク“ジュラシック・ワールド”が放棄され、恐竜たちが大自然で自由に生活を始めていた前作から3年後が舞台。島で火山噴火の予兆が捉えられた危機的状況の中、恐竜行動学のエキスパートであるオーウェン(クリス・プラット)と、“ジュラシック・ワールド”の運営責任者だったクレア(ブライス・ダラス・ハワード)は、恐竜たちの生死を自然に委ねるか、命を懸けて救い出すかの選択を迫られる。


参考:クリプラ、『ジュラシック・パーク』を60秒で解説【動画】


 今回リアルサウンド映画部では、前作でメガホンを取ったコリン・トレボロウからバトンを引き継ぎ、本作で監督を務めたJ・A・バヨナにインタビューを行った。3部作のちょうど真ん中という難役を引き受けた背景や、親交の深いギレルモ・デル・トロ監督とのやりとりなどについて語ってもらった。(取材・文=宮川翔)


ーー今回の作品はあなたにとって初めてのハリウッド映画ですね。そもそも本作にはどのような経緯で関わることになったんでしょう?


J・A・バヨナ(以下、バヨナ):プロデューサーのフランク・マーシャルとはだいぶ前から話をしていて、実は1作目の『ジュラシック・ワールド』の時点で監督のオファーがあったんだ。ただ、そのときはまだ脚本も出来ていなかったし、まだこれから準備が始まるという段階だったから、僕自身のスケジュールと合わずに引き受けることができなかった。そして2作目でまた話がきて、今回は脚本もあるしスケジュールもあるということで、引き受けることになったんだ。そのときはとても責任を感じたね。ファンが多いシリーズだし、みんな続編を待っているはずだったから。でも同時に、3部作のうちの2作目ということで、このシリーズを一歩前に進めさせることができるというワクワク感の方が強かったね。


ーー3作目は再びコリン・トレボロウが監督を務めることが決まっていますね。その間をどう繋げるか、プレッシャーも大きかったのではないかと思います。


バヨナ:物語やキャラクターに関しては、コリンとデレクが書いた脚本にベースとなるものがあったから、僕の仕事としては、それを読み込んで分析して、根底にあるものをどう引き出すか、そしてそれをより良い形でスクリーンに持っていくということだったんだ。コリン自身が監督を務める1作目と3作目の間となる2作目をやるのが面白いと思ったのは、物語を展開することができるから。そこが繋ぎ目になるということだから、物語を複雑で不安定な状況にできると思ったんだ。たとえコントロールを失っても、その後始末をしなくていいなんて、ハリウッド映画においてなかなかできることではないからね(笑)。


ーー今回、演出の上で最も意識したことは何でしょう?


バヨナ:僕が演出上もっとも力を入れたのは、舞台が屋敷に移った後半のパートだね。そこで僕の得意なサスペンスが生まれる演出ができると思ったんだ。狭いスペースの中に人や恐竜が閉じ込められていて、そこで起こるサスペンスというのは、スピルバーグ監督による第1作『ジュラシック・パーク』にあった恐ろしさでもあると感じたんだ。コリンが脚本の中にそういった要素を置いてくれて、僕の得意なスタイルを引き出そうとしてくれたということだと思っているよ。


ーー確かに前半と後半では全く異なる作品を観ているようにも感じました。


バヨナ:全くその通りだね。前半と後半ではジャンルが違うと言っていいと思う。前半はアドベンチャーで、後半はサスペンスなんだ。前半のパートは、アクションだったりたくさんの恐竜だったり火山の爆発だったりと、どんどん要素を積み上げていくスタイルだった。一方で後半は、剥いでいくスタイル。僕が得意とする、隠された何かを暴いていく展開なんだ。だから、音も静かで、ペースもゆっくりで、出てくる恐竜も少なくなっているんだよ。


ーー3部作における2作目ということで、『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』を参考にしたり意識したりすることはあったんでしょうか?


バヨナ:『ロスト・ワールド』は批評的には厳しい意見が多い作品ではあるけれど、僕は素晴らしい作品だと思っているんだ。あの作品をダメだという人は、映画全体を捉えきれていない。物語には限界があるかもしれないけれど、映画としては全く限界がないんだよ。僕にとってはあれこそがスピルバーグの純粋な映画なんだ。彼が1作目の成功に甘えずに、カメラの構図やフレームの中に恐竜や人間をどう入れるかなど、いろんなことを実験していて、それが革新的で素晴らしい。特に僕が好きなシーンは、バスが宙吊りになってガラスが割れるシーン。あのシーンがどのように構築されて、物語においてどのような機能を果たしているのかなど、『ロスト・ワールド』から学んだことはこの作品にも反映されているよ。


ーースピルバーグ監督はあなたにとっても憧れの監督だったようですが、実際に一緒に仕事をしてみてどうでしたか?


バヨナ:実際に彼の前に立つとものすごく緊張するけれども、スピルバーグはそれを和らげるかのように常に話を聞いてくれるんだ。「こういうショットを撮りたい」とか「こういうシーンにしたい」というような具体的な話を僕がすると、彼は情熱的なアイデアをくれて、それにまた僕がアイデアを被せて……という感じで、とても創造的なディスカッションをすることができたよ。


ーー本作のエンドクレジットには、あなたと親交の深いギレルモ・デル・トロ監督の名前がありましたね。


バヨナ:1本目の長編監督作『永遠のこどもたち』の頃から、ギレルモは僕にとって常にメンターのような存在なんだ。何かあったらいつでも電話をしてくれとも言ってくれている。僕にとっては今回初めてのハリウッド映画だったけれど、ギレルモはハリウッドで何年も仕事をしているから、分からないことがあったときには常に彼に電話をして意見をもらっていたよ。しかも、編集の最終段階では編集室まで来て、アドバイスもくれたんだ。スピルバーグと同じで、ギレルモは常にアイデアを与えてくれる、とても信頼できる映画監督だよ。