2018年07月11日 10:42 弁護士ドットコム
記録的な豪雨(7月豪雨)が、西日本を中心に大きな被害をもたらしている。こうした状況の中、京都市では、国の特別天然記念物「オオサンショウウオ」が、大雨で増水した鴨川の護岸にあがっているところが目撃されている。
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オオサンショウウオは、絶滅が危惧されている両生類だ。黒い斑点のある茶色い皮膚で、頭部が大きく、足が短いという特徴を持っている。体長の平均は65センチメートルで、1メートルを超える個体もあるという。
鴨川では、上流から中流にかけて生息しているが、大雨で増水したとき、京都市中心部まで流されて、発見されることがある。SNSでは、鴨川のオオサンショウウオの写真がいくつかあがっている。もしオオサンショウウオを見つけたら、どうすればいいのだろうか。
うわー溢れそうだなぁと思って鴨川見てたらオオサンショウウオがいた。 pic.twitter.com/F3vE4i7YnA
オオサンショウウオも避難!上流から流されて来たんかな? pic.twitter.com/IdChV5d81N
文化庁によると、オオサンショウウオは特別天然記念物であるため、文化庁長官の許可なく、捕まえたり、場所を移動させることは、原則として文化財保護法違反に問われる可能性がある。ただし、本来の生息地でないところに流さたものを保護しようと移動させるなどした場合は、ただちに違反といえないこともあるという。
また、護岸にあがっているオオサンショウウオを見つけても、役所に通報する義務はなく、川に戻す必要もない。京都市文化財保護課の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、「法律違反に問われるおそれがあるので、一般市民は、絶対に触らないでほしいです。見つけてもそのままにしておいてください」と述べた。
京都府文化財保護課の担当者は「彼ら(オオサンショウウオ)も自分たちの判断で動いています。一般論として、打ち上げられているわけでなく、危険を感じて護岸に上がっているのだと思います。そういうとき、無理に水の中に戻すと、肺呼吸している動物ですので、溺れてしまうこともあります」と話した。
要するに、そのままにしておけば、オオサンショウウオは、ひとりでに水の中に帰っていくということだ。
鴨川のオオサンショウウオをめぐっては、日本の在来種と中国種(チュウゴクオオサンショウウオ)の交雑が発生している。ハイブリッド問題と呼ばれている。
文化庁によると、中国種とハイブリッド(交雑種)は、特別天然記念物でないため、文化財保護法が適用されない。したがって、捕獲しても、場所を移動しても、問題ないということになる。ただし、環境省によると、種の保存法で、オオサンショウウオは「国際希少野生動植物種」とされており、譲り渡しなどに関して規制されているという。これらは、簡単に見分けがつくものではない。
京都市は交雑がすすまないように対策をとっており、文化庁の許可を得た調査をおこなっている。その一環として、オオサンショウウオを捕獲して、京都大学でDNA鑑定している。そして、在来種なら川に戻して、中国種やハイブリッドは、京都水族館や兵庫県内のNPO施設で保護しているという。
京都市文化財保護課の担当者は「中国種やハイブリッドのオオサンショウウオを捕まえて、交雑化していない地域で放流した場合、さらなる交雑につながります。こうした観点からも、一般市民の方は、絶対に、オオサンショウウオを捕獲したり、場所を移動させないでほしい」と強調していた。
(弁護士ドットコムニュース)