先のル・マン24時間で、ついに悲願の勝利を手に入れたトヨタ。3台体制で臨んで惨敗を喫した2017年からの365日、彼らはどんな道を歩んできたのだろうか。“撤退危機”から“カイゼン運動”、そして7号車vs8号車の“ライバル意識”まで、知られざる裏側を追った。
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スポーツとは本来娯楽であり、まず自分たちが楽しみ、そして見る者を喜ばせるものである。しかし、サッカーのワールドカップを筆頭に、敗者は度々“戦犯”の烙印を押され厳しく糾弾される。大きな世界大会になればなるほどその傾向は強まり、敗戦のきっかけを作ったプレイヤーは、猛烈な自責の念に駆られ、長らく苦しむことになる。
2016年、そして2017年と2年連続で“オウンゴール”により勝てるはずの試合を失ったトヨタの人々もまた、自分たちの失敗を悔やみ、忸怩(じくじ)たる思いでル・マン後の日々を過ごした。
彼らが名誉を挽回する最大の機会は、王者ポルシェを抑え18年のル・マンに勝つことだったが、ポルシェの撤退によりその夢は潰えた。それだけではない。ポルシェの撤退はトヨタのWEC活動継続にも悪影響を及ぼし、社内では真剣に撤退が論じられたという。
トヨタ自動車の副社長で、GRカンパニーのプレジデントを務める友山茂樹氏は「ル・マン後、本当に止めさせられそうになったので、何が悪かったのか、これからどうするのか、A4版5枚分の反省文を社長に書きました」と、当時の切迫した状況を語った。
友山氏によれば、組織内にいくつか問題点があり、パワーユニットを開発するTMC(トヨタ自動車)と、マシン作りとレースオペレーションを担当するドイツのTMGが完全な一枚岩ではなく、諍い(いさかい)もあったという。
そこで、当時トヨタ東富士研究所のトップだった村田久武をTMGの社長に任命し、村田がもっとも信頼する部下の小島正清を後任に据えた。日本とドイツの関係を、これまで以上に密接なものにしようという狙いがそこにあった。
TMG新社長に就任した村田は、まず2017年ル・マンでの3台の敗因を徹底的に分析。品質とコミュニケーションに問題があり、その根底にはヒューマンエラーがあったと結論づけた。
そこで、TMC内で実施していたトヨタ流の“カイゼン運動”をTMGでも展開することにし、その長として以前WRCプログラムを担当していたシリル・ジョルダンを任命した。
ジョルダンはさまざまな視点から対策案を考え、ドライバー、エンジニア、メカニックなどレースに直接関わる者全員のトレーニングメニューを作成。ヒューマンエラーの排除に力を入れた。
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そのトレーニングメニューの一環である『意地悪テスト(フェイク・フェイラー・テスト)』の内容や、ル・マンウイークにおける7号車トヨタ、8号車トヨタそれぞれの戦いの裏側などを描いた「“責め”て拓いた栄光への道」企画は、7月11日発売のACO公認オフィシャルマガジン『ル・マン24時間2018』(auto sport特別編集)にて、掲載しています。
■『ル・マン24時間2018』(auto sport特別編集)
発売日:2018年7月11日
定価:1296円(税込)
商品紹介ページURL:http://www.sun-a.com/magazine/detail.php?pid=10269