オーストラリア伝統のツーリングカー選手権、VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーで長年に渡る活躍を演じ、6度のバサースト1000勝利を記録しているクレイグ・ラウンズが、2018年シーズン限りでフルタイムの参戦を終え、第一線から退くと発表した。
VASC第8戦タウンスビル400の金曜会見で、今季限りでレギュラードライバーの座を降りると発表した大ベテランは、その席上で感謝の言葉を述べるとともに、これまでレーシングドライバーとして第一線で活躍できた要因を、以下のように明かした。
「私はいつも、レースを戦い続ける上でふたつの重要な要素があると言い続けてきた。それは自分が何を愛しているかを知ること、そして良い時も悪い時も、それを続けるだけのモチベーションが自分にあるかを知ること。そのどちらも、今の私に存在し続けているし、何も変わってはいないのが正直なところだ」とラウンズ。
「しかし同時に、フルタイムのシーズンを終える瞬間まで強力なリザルトを残せるドライバーであり続けたいとも思っていた。(優勝を飾っている)今季がまさにそのタイミングであり、チームとの相談の上で、レギュラー参戦は今季限りとの決断に至ったんだ」
VASCのトップチームとして現在はホールデンのワークス活動を担うトリプルエイト・レースエンジニアリングに所属し、ここまで13シーズンを戦ってきたラウンズは、この2018年シーズンに向けチームのエントリー名に自らの名を冠した“オートバーン・ラウンズ・レーシング”を立ち上げ戦ってきた。
この発表に同席したトリプルエイトのチームマネージャーを務めるローランド・デーンは、引退の決断を惜しみながらも「将来的にチームと彼がともに働く機会を持ち続けられれば、うれしい」と、今後に向け新たな役割での活躍にも期待を込めた。
「(今季最終戦となる)ニューキャッスルの日曜、フルタイムのドライバーとして最後のレースに向かうクレイグを見たら、我々はとても感情的になるだろうね」と語ったデーン。
「でも彼が来季に向けチームに留まり、我々とともに戦ってくれればこんなに幸せなことはない。彼はこのチームの歴史の大部分を占め、今日のトリプルエイトの成功を作り上げた立役者だからね」
そのデーンの期待どおり、3度のシリーズチャンピオンと6度のバサースト1000勝利、通算100勝以上を数えるラウンズの去就は、本人いわく「完全にオープンエア」となるが、まずはセカンドドライバー登録で争われる年間3~4戦の長距離イベント“エンデューロ・カップ”のドライバーとして、チームのレギュラーである現王者ジェイミー・ウインカップ、または2016年王者のSVGことシェーン-ヴァン・ギズバーゲンとのペアで、2019年シーズンも引き続きワークスカーをドライブする機会があるものと考えられている。
またラウンズは、すでにシリーズのオフィシャルTVの解説者として2019年のVASCパドックを訪れることも明かしつつ、オーストラリア国外でのモータースポーツ活動にも意欲を見せている。
「私はかねてから、海外の異なるカテゴリーでドライブする機会を増やしたいと熱望してきた」と“引退後”のプランを語るラウンズ。
「なかでもル・マン24時間はリストの最上位に載せているカテゴリーだ。今回の決断で、ローランド(デーン)とチームがこの実現をサポートしてくれる」
「スーパーカーのピットレーンで多くのドライバーと話せばすぐに分かることだが、誰もが国際的な舞台でレースをする野心を抱いている。そしてすぐにカレンダーとにらめっこするんだ(笑)」
「我々はレーシングドライバーであり、あらゆるレースカーをドライブしたいと願っている。ありがたいことに、ローランドは私がシェーン(ヴァン・ギズバーゲン)やジェイミー(ウインカップ)とともに、この挑戦を実現する後押しをすると言ってくれたんだ」
この発表に際してシリーズのCEOを務めるショーン・シーマーも、最大級の賛辞で別れを惜しむとともに、今後も引き続きVASCでの役割に期待すると語った。
「彼はスーパーカーでもっとも有名なドライバーであり、同時にこのスポーツにおけるロールモデルであり、ヒーローだ」とCEOのシーマー。
「彼はオーストラリアのスポーツ界における本物の伝説で、今後もエンデューロで表彰台の常連になることは疑う余地がない。彼がその能力で今後どんな道を選んでも、このスポーツにおける大使であり、VASCファミリーであることに変わりはない。今後もパドックで彼の姿が見られることをファンは望んでおり、彼はその期待を裏切らないはずだよ」