消費増税が来年に迫る中、日本書籍出版協会を含む出版4団体が出版物に軽減税率を適用するため、有害図書排除の仕組みを作ろうとしている。全国書店新聞が7月1日号で報じた。
軽減税率とは一部の商品の税率を他の商品よりも低くするという仕組みだ。2019年10月1日から消費税が10%に引き上げられるが、酒類を除く飲食料品と定期購読の新聞は、消費税が8%のまま据え置かれることになっている。
「性や暴力の過激な描写があるものには軽減税率を適用しない」
しかし書籍と雑誌は現状では軽減税率の対象外だ。2016年度の税制改正大綱では、「日常生活における意義、有害図書排除の仕組みの構築状況等を総合的に勘案しつつ、引き続き検討する」とされた。つまり「有害図書」を除外する仕組みが整えば、一般の書籍・雑誌に軽減税率を適用する可能性があるということだ。
6月11日に開催された、「活字文化議員連盟」と「子どもの未来を考える議員連盟」の合同総会では、軽減税率の適用を目指し、「有害図書」を仕分ける方針を決定した。
今後、法曹関係者や大学教授による第三者委員会「出版倫理審議委員会」を立ち上げ、「有害図書」の基準を作成する。軽減税率を適用できるものには「出版倫理コード」(仮称)を付与するという。
書籍出版協会の担当者は、キャリコネニュースに対して、こう話している。
「性や暴力の過激な描写があるものには軽減税率を適用しないことになると思います。あくまでも民間団体が自主的に基準を作成しており、行政が線引きをするわけではありません。各出版社は基準に照らしあわせて、自主的に『出版倫理コード』を付与して出版します。出版後に万が一軽減税率の適用がふさわしくないものがあれば、第三者委員会から標準税率に戻してはどうかという要望を出すことになると思います」
「民間団体が税率を決めるのは租税法律主義に反する」という指摘も
消費増税で売り上げが落ちれば、執筆者への還元も減り、出版文化が衰退する可能性もある。そのため出版社側は、一部の書籍や雑誌を「有害図書」として仕分けしてでも、軽減税率を適用したいということだ。
しかし、「表現の自由を守る会」の会長で前参議院議員の山田太郎さんは、こうした動きに懸念を示している。
「何を以て『有害図書』に指定するのかわかりません。一番考えられるのは、エロ・グロ・暴力ですが、何がエロなのか、グロテスクな描写はどの程度までなら許容されるのかわかりません」
そもそも「出版倫理コード管理機構」という民間団体が税率を決めるのは、憲法に反するという。
「憲法84条の租税法律主義により、誰が納税するのか、何にどのくらいの税率を課すのかは法律で定めないといけないことになっています。それにも関わらず、民間団体がどの図書は8%でどの図書が10%なのか決めるのは問題があります」
山田さんは参議院議員だった2016年1月18日、参議院予算委員会でこの点を指摘。。麻生太郎財務大臣(当時)から、「(民間団体が決めるのは)難しいと思いますね」という答弁を引き出している。