厚労省は7月6日、2017年度の労災補償状況に関する調査結果を発表した。脳・心臓に関する労災請求が840件と、精神障害に関する請求が1732件と、過去最高を更新した。
支給決定件数は、脳・心臓に関する労災が253件、精神障害に関する労災が506件だった。精神障害の支給決定件数は初めて500件を超えた。
脳・心臓に関する労災認定受けた人の多くは60時間以上残業
脳・心臓に関する労災請求件数が最も多かった業種は、「運輸業・郵便業(道路貨物運送業)」で145件。2位は「サービス業」で68件、3位は「建設業」で45件だった。支給決定件数は、「運輸業・郵便業(道路貨物運送業)」が最多で85件。2位は「宿泊業・飲食サービス業」(19件)、3位は「サービス業」(16件)だった。
請求件数・支給決定件数ともに50代が最多で、次いで40代、60代と、高年齢層での認定が多い。10代の請求・決定件数は0だったが、20代は17件の申請があり、13件が認められた。
支給が決定した人の1か月の平均残業時間は、ほとんどが60時間を超えていた。「60時間以上80時間未満」が11件、「80時間以上100時間未満」が101件、「100時間以上120時間未満」が76件、「120時間以上140時間未満」が23件で、「160時間以上」というケースも20件あった。
「セクハラで精神障害」認定は35件 昨年より6件増、すべて女性
精神障害に関する労災請求件数を業種別に見ると、最も多かったのは「医療・福祉(社会保険・社会福祉・介護事業)」で174件。うち9件は、未遂を含む自殺の件数だ。2位は「医療・福祉(医療業)」で139件、3位は「運輸業・郵便業(道路貨物運送業)」の84件だった。上位3つの顔ぶれは昨年と変わらず、医療・福祉関係の業種で精神障害の請求件数が多いことも、昨年と変わらない。
支給決定件数1位は「道路貨物運送業」で45件。「医療・福祉(医療業)」は2位で41件、3位は「医療・福祉(社会保険・社会福祉・介護事業)」で45件だった。
支給が決定した506人の時間外労働時間を見ると、時間外労働時間が20時間未満の層が最も多く、75件だった。うち7件は未遂を含む自殺として認定されている。精神障害を発症する具体的な出来事として最も多かったのが「上司とのトラブルがあった」(320件)だったことからも、人間関係の影響が大きいことが分かる。
「セクシュアルハラスメントを受けた」ことで精神障害になったと認められたのは35件で、すべて女性。昨年の29件から6件増加した。
調査では、裁量労働制で働く労働者の労災補償状況も調査した。脳・心臓に関する支給決定件数は4件で、すべて専門業務型裁量労働制対象者に関する支給決定だった。精神障害の支給決定件数は10件。専門業務型裁量労働制対象者の支給決定が8件(うち3件未遂を含む自殺)、企画業務型裁量労働制対象者に関する支給決定が2件(2件とも未遂を含む自殺)だった。