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Do As Infinity、『ALIVE』ツアーで繰り広げた“刺激的な冒険” 東京公演を振り返る

2018年07月09日 21:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 Do As Infinityが7月7日、神奈川県・横浜ランドマークホールにて『Do As Infinity LIVE TOUR 2018 -ALIVE-』を行い、全国ツアーのファイナルを締めくくった。


参考:Do As Infinity×澤野弘之が語る、最新作『ALIVE』で表現した“命”と“未来”


 2017年6月に発表したシングル『Alive / Iron Hornet』以降、人気映画/ドラマ/アニメ作品の劇伴などで活躍する澤野弘之との楽曲制作をスタートし、今年2月に最新アルバム『ALIVE』を完成させたDo As Infinity。フルアルバムを携えてのツアーとしては『The Best of Do As Infinity Live Tour 2015- BRAND NEW DAYS-』以来約3年振りとなるツアーの東京公演が、5月20日に東京国際フォーラム ホールCで開催された。


 『Do As Infinity LIVE TOUR 2018 -ALIVE-』は、前述の通り澤野弘之を迎えてエレクトロニックなサウンドや映画音楽の要素を導入するなど、まるでバンドがもう一度生まれ変わるかのように刺激的な冒険を繰り広げた『ALIVE』での最新モードを伝えるツアー。当日の模様は音楽配信サービス「網易雲音楽」を通じて中国にもLIVE配信。かねてから洋楽志向が強いロックサウンドに加えて、テレビアニメ『犬夜叉』シリーズや『十二大戦』などを筆頭にしたアニメとのタイアップ曲などで北米/アジア/南米にも人気を広げてきたDo As Infinityならではのライブとなった。


 ステージには天井から10本を超える長方形の幕がたらされ、背後のスクリーンに加えてそこにも映像が投影される幻想的なセット。サポートにドラム、ベース、キーボードを加えた5人編成でバンドが登場すると、まずは映画的なスケール感を持った澤野弘之との共同作業を象徴する『ALIVE』の1曲目「~prologue~」でライブがスタートする。


 以降も序盤は新曲が中心で、ギターロックにエレクトロニックなサウンドを加えて新境地を開いた新たなアンセム「Alive」、The Prodigyなどを髣髴させるデジタルロック風の楽曲を大渡 亮の鋭いギターリフが引っ張る「GET OVER IT」を披露。一旦2009年の『ETERNAL FLAME』収録曲「Perfect World」を挟むと、新作の中でも最もエレクトロニックなプロダクションを持つ英語詞の楽曲「To Know You」へ。伴 都美子もアコースティックギターを演奏し、幕やスクリーンには歌詞の日本語訳が投影されるなど、新作『ALIVE』でバンドが乗り出した新たな冒険と興奮が、ライブならではのパフォーマンス/アレンジで再現されていく。


 そうして改めて感じられたのは、2人が澤野弘之との作業で生み出した、映像喚起力の高い楽曲群の魅力。幕やスクリーンに楽曲のテーマに沿った映像が投影されていくライブ演出には、おそらく『ALIVE』の世界観をライブに連れ出すような意図が込められていたはずだ。各楽曲ごとに様々な表情を見せる映像と演奏のコラボレーションによって、目の前で新旧の楽曲のイメージが豊かに広がっていくような感覚が印象的だった。


 たとえば、「深い森」では新緑を思わせる映像がステージを包み、「Iron Hornet」ではタイトル通りハチのモチーフをスクリーンに投影。「陽のあたる坂道」ではオレンジのライトと空や雲の映像が楽曲に深い余韻を加え、「Silver Moon」でもスクリーンに月の映像が投影されていく。音楽的にも新たな挑戦に乗り出した最新作の楽曲に過去のレパートリーを加え、その両方を今のバンドならではの演出でさらに更新していくような、風通しのいい雰囲気が印象的だった。


 また、伴 都美子の歌と大渡 亮のギターソロという2つの柱が楽曲の大きなフックを構成するDo As Infinityの楽曲には、各曲の中でお互いの見せ場がそれぞれ存在することも、ライブでより顕著になる魅力と言えるはず。エッジの効いたロックからバラード、エレクトロの要素を取り入れたスタイリッシュな楽曲まで様々な振り幅の楽曲群を凛とした歌声で歌いこなす伴 都美子のボーカルと、楽曲の中盤~後半にかけて観客の熱気をより引き出すようだったソロを含む大渡 亮のギタープレイは、絶妙な間で互いを引き立て合うように存在している。最新作『ALIVE』が大胆な音楽的冒険に乗り出しつつも、同時にこれまでのDo As Infinityらしさを失っていなかったのは、やはり2人のこうした個性があるからこそだ。


 本編中盤はトーレ・ヨハンソンを筆頭にした北欧ポップスのプロダクションを思わせる大渡 亮作曲、伴 都美子作詞の洒脱な「Lovely Day」を経て、この日だけのスペシャルゲストとして澤野弘之が登場。MCでは新たな方向性に向かうことに最初は警戒気味だった伴 都美子のエピソードが今ならではの笑い話として語られ、グランドピアノに腰を下ろした澤野弘之の演奏を加えた「火の鳥」がスタートする。引き続き彼を迎えてのバラード「唯一の真実」では、冒頭、静寂の中で伴 都美子がアカペラで歌いはじめる鳥肌が立つような瞬間を経て、じわじわとバンドが演奏を盛り上げていった。


 その後ふたたびバンドのみの編成に戻り、ここからは「科学の夜」、「Gates of heaven」、「under the sun」など過去曲が中心のセットへ。新作曲を中心にした前半とは対照的に、ここでは照明や演出もバンドの演奏そのものに焦点を当ててぐっとシンプルなものになり、歴戦のライブバンドとしてのDo As Infinityの側面を伝えるような雰囲気だ。新作に収録された『十二大戦』のエンディングテーマ「化身の獣」も音源よりもさらにパワフルな音圧/演奏に変化し、ホール会場全体がまるでライブハウスのような空間に変わっていく。


 本編は「本日ハ晴天ナリ」「遠くまで」で終了。アンコールの1曲目は「ツアーのことを歌った曲があります」と告げてはじまった「ワンダフルライフ」。この楽曲では2人がツアー先で出会った様々な人々や土地への思いが<ビルの谷間抜けて/この電車は/キミの街へ行くよ/今日もまた>という歌い出しではじまる歌詞で表現され、2人がライブの現場で大切にしていることを伝えてくれる。最後は「またどこかで会いましょう!」と観客に告げ、「For the future」で2人がステージ両端までを広く使って観客を煽りながらライブを終えた。


 今年で結成から19年を迎えるDo As Infinityは、2005年の活動休止や2008年の復活、新作『ALIVE』での変化などを経て、今なお新たな可能性の扉を開き続けている。そして昨年以降の集大成とも言える今回のツアーでは、キャリアを通して手にした定番曲と、新作『ALIVE』で見せた刺激的な冒険とがひとつになって、その活動のさらなる広がりを伝えてくれるようだった。


 実際、この日の会場にはデビュー当時から彼らの歩みを支えてきたファンから、アニメへの提供曲などを入り口に新たに彼らを知った若者まで幅広い世代が駆け付け、会場一体となって熱気を生み出していた。過去を置き去りにして変化するのではなく、しかし同じ場所にとどまり続けるわけでもなく、すべてを抱えて進んできたからこそ、刺激的な今がある――。Do As Infinityは今、バンドとして何度目かの黄金期を迎えているのではないだろうか。そんな彼らの魅力が、演奏の節々から伝わってくるステージだった。(杉山 仁)