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インディ第11戦詳報:ヒンチクリフが大逆転勝利で雪辱を果たす。琢磨は今季初の3位表彰台

2018年07月09日 12:51  AUTOSPORT web

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インディ500予選落ちの雪辱を果たす勝利を挙げたジェームズ・ヒンチクリフ
全長0.894マイルとシリーズ最短のコースで開催されるアイオワ・コーン300は快晴の下、アイオワらしくない比較的涼しいコンディションで争われ、予選11番手だったジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)が終盤の大逆転で優勝した。

 予選で他を圧倒するスピードを誇ったのはウィル・パワー・(チーム・ペンスキー)で、予選2番手もチームメイトのジョセフ・ニューガーデンだった。レース序盤はパワーがリード。しかし、ニューガーデンがトップを奪い、その後は6位を走るドライバーまでを周回遅れに陥れる凄まじいスピードを見せた。


 そのままニューガーデンが優勝するものと誰もが考えたが、予選11番手から40ラップで2番手まで浮上したヒンチクリフが、レース終盤になってマシンのファインチューニングに成功。

 逆にスピードが鈍ってきたニューガーデンを残り50周を切ってからパス。そこからは大きく差を広げ、今シーズン初、キャリア6勝目、アイオワでの2勝目を挙げた。インディ500で予選落ちを喫した彼が2カ月以内に優勝を記録したのだ。実に見事な立ち直りぶりと言える。

「5月のインディ500で起こったことを思うと、今日の勝利で得られる喜びは非常に大きい。今週末の僕らは予選での結果がイマイチだったが、マシンの良さには確信があった。ところがレースは簡単じゃなかった。最初のスティントでは素晴らしく速かったマシンが、1回目のピットストップでの調整が大き過ぎたために遅くなり、次のピットではセッティングを戻し過ぎ、また苦戦」

「最後のピットでの調整が良かったことでマシンは無敵のスピードを手に入れ、ニューガーデンやピゴットを相手にしたバトルを勝ち抜き、優勝を飾ることができた」とヒンチクリフは喜んでいた。


 レースはゴール目前6ラップでエド・カーペンター(エド・カーペンター・レーシング)がスピン、佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)と接触してフルコースコーションに。

 残り1周でリスタートが切られると見たニューガーデン、ロバート・ウィケンス(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)陣営がドライバーをピットに呼び入れたが、結局レース再開はなく、彼らは順位を下げてゴールを迎えた。

 このおかげで予選18番手だったスペンサー・ピゴット(エド・カーペンター・レーシング)が2位、琢磨が3位でゴールした。

 ピゴットのキャリアベストは2016年ミド・オハイオにおける7位だったが、それを大幅更新。初めての表彰台に上った。

 琢磨は予選10番手から3位フィニッシュ。今季初の表彰台だ。もちろん今シーズンのベストリザルトで、2107年のインディアナポリス500優勝以来のトップ3フィニッシュ。

「厳しいレースだったが、こうして2位でゴールできて本当に嬉しい。今日の僕たちはマシンが本当に速く、トラフィックをうまくクリアしていくことができた。周回、スティントを重ねる毎に強くなるレースを戦えた。チームが素晴らしいマシンを用意してくれたおかげだ。接近戦の多いレースを僕としてもおおいに楽しめた」とピゴットは話した。

 ポイントランキング上位のドライバーたちは苦しいレースとなった。

 予選トップだったパワーは苦しみながらも6位でゴール。予選2番手から300周のレースで229周もリードしたニューガーデンはまさかの4位。最後のフルコースコーションで彼をピットに呼び入れたチームの作戦が大失敗だった。

 予選3番手だったライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)はサスペンション・トラブル発生で19位に沈み、予選5番手だったアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)はハンドリングに悩み、9位でのゴールがやっとだった。

 予選6番手だったスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)はニューガーデンに2週遅れにされる屈辱を味わい、ゴール前に一度多いピットストップを行ってタイヤを交換したため、最終的にはトップから4周遅れの12位となった。

 琢磨は3位フィニッシュで笑顔を輝かせた。

「シングルフィニッシュを目標にしていた。表彰台を争えるマシンにできるとかは正直わからなかった。インディーカーのようなトップレベルの戦いでは、早々簡単に大幅な順位アップは起こらないから」

「それでもレースをする限り、優勝や、ひとつでも上の順位を目指して戦う。今日の僕らはファイナルプラクティスから、かなりいろいろなセッティング変更をしたマシンで走り、それらの変更が正しかったためにスティント後半に速いマシンとできていた」

「多くのドライバーたちとサイド・バイ・サイドで戦い、タイヤが減った状況でたくさんのマシンをパスできた。ただ、最後のピットストップはタイミングが少し遅過ぎて、トラフィックに引っかかったこともあって、ピット前には2番手を走っていたのに、作業を受けてレースに戻ると5番手まで下がっていた」

「せっかく抜いた相手に先行されてしまったということにはビックリしたけれど、周回数はかなり残っていたので上位との差を縮めていった。そうしたら、最後はすぐ目の前を走っていたエド・カーペンターがスピンして、何かとかよけたけど、少し後輪前のタイヤランプの部分が接触」

「幸いマシンにダメージはほとんどなかったので、リスタートが切られたらピゴットにアタックするつもりだった。それが、レースは再開されないままゴールに。ピットに入ったマシンがあったから、ふたつ順位アップの3位でゴールできた。これは嬉しい結果。エンジニアのエディ・ジョーンズたちが素晴らしいマシンを作ってくれた。やっとチームと理解をし合い、いい戦いができるようになってきた。この調子でシーズン後半戦も上位フィニッシュを重ねて行きたい」と琢磨は話した。


 ニューガーデンは優勝を逃しただけでなく、表彰台にも上れなかった。しかし4位を拾い、チームの作戦を責めることはしなかった。

「インディカーならではのレースになっていた。本当に予測できないことが起こる。僕らはレース前半に本当に速かったが、後半は少しずつスピードを失っていった。マシンをどのような状態にして終盤を迎えるべきなのか。僕らにはそれが見極められていなかった」
「その点で、今日のヒンチクリフは素晴らしいレースを戦っていた。いちばん重要なタイミングで最速のマシンを手にしていた。それが今日の彼らだったと思う。ヒンチクリフとシュミット・ピーターソン・モータースポーツを讃えたい。あれだけ前半に速かったマシンを持ちながら、今日の僕らは勝てなかった。その点はとても悔しい」と話した。

 ポイントランキング上位がほとんど総崩れに近いレースとなったため、ディクソンは惨憺たるレースを戦ってもポイントトップの座を保った。ニューガーデンは2番手に浮上。トップとの差は33点。ロッシはトップとのポイント差を45点から41点へ僅かながら縮めて3番手をキープ。ハンター-レイは4番手に後退。パワーは5番手をキープ。ルーキーのウィッケンスは順位をひとつ上げて6番手。レイホールはひとつ下がって7番手。今日のウイナー=ヒンチクリフは11番手から8番手へとジャンプ・アップ。琢磨も13番手から12番手へひとつだが順位を上げた。