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大炎上のスルガ銀、会長は再任されるも賛成率が2割も減…個人株主の怒り爆発

2018年07月09日 10:32  弁護士ドットコム

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シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズが経営破綻した問題。物件所有者への融資に際し、スルガ銀行の行員が審査書類の改ざんを認識していたと言われている。6月28日にあった株主総会では、怒号が飛び交う中、スルガ銀行が提案した決議は可決した。ただ、その中身を見ると、株主の怒りが近年にないほど膨らんでいることがわかる。


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スルガ銀行は、岡野光喜会長と米山明広社長を含む11人の取締役を選任する議案を提出し、可決された。岡野氏や米山氏らは問題が発覚した時にも会長、社長を務めている。特に岡野氏は創業家の人間で、影響力は絶大。株主総会でも、説明を続ける米山氏に対し、ある株主は「私は岡野銀行だと思っている。ぜひ岡野さんから聞かせてください」と苦言を呈した。


議案への賛成率は、スルガ銀行が7月3日に開示した「臨時報告書」に掲載された。それによると、岡野氏の会長再任に賛成したのは71.30%だった。取締役の中で最も少ない割合で、前年総会(91.86%)から約20ポイントも低下した。(米山氏への賛成は2番目に低い71.74%で、前年総会(98.07%)から約26ポイントも下がった)


下がったとはいえ70%もあれば、問題ないという捉え方もあるだろう。ただ、岡野氏への賛成率を振り返ると、ここ5年程度は90%台で推移している。それが、一気に急落した。今回の問題を受け、株主の怒りが反映されたとみて間違いなさそうだ。みずほ銀行に約17年勤務した経験をもつ天野仁弁護士に、今回の株主総会から読み取れることを聞いた。


●個人株主の不満が噴出

ーー今回、大幅に賛成率が下がったことはどのように考えられますか


「株主総会の議決は、株主の数ではなく、株式の数で決まりますが、上場企業の多くでは関連会社や保険会社などの機関投資家が多くの株式を保有しており、それらの大株主が『安定株主』として会社提案議案に賛成するため、基本的には会社提案議案は高い賛成率になります。


そのような中で、今回のスルガ銀行の株主総会における岡野会長と米山社長の再任議案の賛成率はかなり低いといえます。安定株主以外の株主(その多くは個人株主です)の多くが再任議案に反対したと考えられます」


ーー個人株主にはどのような特徴があると言えますか


「個人株主は普段は会社の経営内容に細かく注文をつけることはせず、株式を投資対象と捉えてもっぱら株価に大きな関心を持っています。


しかし、今回のスルガ銀行の株主総会の場合、シェアハウスへの過剰融資が社会問題化したことにより株価が大きく下がったため、個人株主も経営内容に無関心ではいられなくなりました。再任議案の賛成率低下は経営トップ二人に対する個人株主の不満の噴出と思います」


ーー個人株主の不満はしっかり受け止める必要がありそうですね


「はい。岡野会長と米山社長は再任されたとはいえ、多くの不信任票が投じられたわけですから、そのことを踏まえて、シェアハウスへの過剰融資問題に適切に対応し、このような問題を招いたスルガ銀行の経営体質の改善を図っていく責任があると思います」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
天野 仁(あまの・ひとし)弁護士
弁護士法人ステラ代表弁護士。取り扱い業務は、一般民事事件、家事事件、企業法務、刑事事件など多岐にわたる。みずほ銀行に約17年間勤務した経験を活かし、企業の顧問や会社関係の訴訟、金融商品投資被害等の事件を扱うほか、離婚の財産分与や相続の遺産分割などの家事事件においても金融資産の調査などに強みを持つ。
事務所名:弁護士法人ステラ
事務所URL:https://stellalaw.jp