2018年07月09日 10:32 弁護士ドットコム
敷地内に違法駐輪されている自転車を撤去できないかーー。このような相談が、マンションの管理組合の役員から、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。
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相談者のマンションでは、ほぼ毎日、住民以外の人が自転車を駐輪していくそうだ。登録のない自転車の駐輪を禁じており、「一週間以内に移動しない場合、管理者の権限に基づき撤去します」と記載されたエフ(荷札)をつけているが、駐輪する人はあとを絶たず、相談者は困っているという。
このような場合、勝手に自転車を移動させる行為は、窃盗などの罪にあたらないか。中村友彦弁護士に聞いた。
自転車を撤去すると、何か法的な問題になるのでしょうか。
「自転車を撤去する場合には、手段を尽くす必要があります。いくら勝手に止められており、所有者が不明だからといって、日本は自力救済が認められておりませんので勝手に処分することは認められません。
勝手に撤去する行為は、占有離脱物横領罪(刑法254条)に該当する可能性があり、問題があります。登録なく駐輪されている自転車は、盗まれて放置された自転車や、入居者が一時的に駐輪しただけかもしれませんので、勝手に処分すると思わぬトラブルになる可能性があります。
なお、窃盗罪は、他人の占有下にある物を奪取する行為ですので、管理組合の占有下にあるものを管理組合が処分するのは窃盗罪にはあたりません」
法的な問題に発展させないためには、どのような手段が考えられるのか。
「まずは、その自転車が居住者(及びその関係者)のものではないか、回覧等で周知し、持ち主を探します。また自転車置き場内等に、貼り紙等で所有者に処分を促してください。
そのうえで、居住者(及びその関係者)のものでなく、所有者が判明しない場合には、警察に遺失物として届けを行い、民法240条により、管理組合が放置自転車の所有権を取得して処分することになります。
民法240条では、『遺失物は、遺失法の定めるところに従い公告をした後三箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその所有権を取得する』とされています。 また、手段を尽くしても所有者が見つからなかった場合に、自転車の所有権が放棄されているとして、民法239条の無主物先占(所有者のない物を最初に占有した者が所有権を取得すること)が成立し、管理組合が所有権を取得して処分するということも考えられます。
民法239条では、『所有者のない動産は、所有の意思をもって占有することによって、その所有権を取得する』とされています。 しかし、盗難自転車の場合には所有権が放棄されているとは言えません。処分後に紛争になる可能性がありますから、この方法はお勧めできません」
相談者は度重なる被害があることから、とりあえず敷地の外に放置しておこうと考えているようです。このことも法的な問題はあるのでしょうか。
「敷地外に自転車を放置することは止めておいた方がよいと思います。
移動先が他人の私有地であれば、その他人の私有地の所有権の侵害行為を行っていることになります(また地方公共団体によっては条例違反になる可能性もあります)。公道の場合には、自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律や地方公共団体の条例に反する可能性があります。
大阪市では、大阪市自転車等の駐車の適正化に関する条例で、公道に自転車を放置しないことを求めています。 日常的に住民以外の人が自転車を駐輪していることについては、軽犯罪法の私有地のへの立ち入りの罪(軽犯罪法1条32号)や刑法の住居侵入罪(刑法130条)を利用して、対処すべきではないかと思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
中村 友彦(なかむら・ともひこ)弁護士
OSAKAベーシック法律事務所所属。幅広く扱っているが、交通事故の被害者側の案件が多く、加害者側・交通事故に関する刑事弁護等も扱っている。
事務所名:OSAKAベーシック法律事務所
事務所URL:http://www.o-basic.net/