第9戦テキサス7位、第10戦ロードアメリカ4位と2018年のインディカー・シリーズで上昇気流に乗り始めた佐藤琢磨。その前の第7戦のデトロイトでは5位に入っており、ここ4戦で3回のトップ10フィニッシュをしており、安定した結果に繋がるようになっている。
前戦のロードアメリカでは、「ここから開幕戦にしたいくらい」と言っていたが、もう表彰台を期待しても良い頃だ。
しかし、この第11戦アイオワに来てからは「事前テストをスキップしているから、苦労するかも」とややネガティブなコメントもあった。
実際に車が走り始めてみると、その予感が的中したような1回目のプラクティス走行は16番手発進だった。すぐに始まる予選を前にして琢磨は「スピードも足りないし、時間も足りない‥‥。何もかも足りない感じ」と苦笑いだった。
だが予選で挽回してくる様は、ここ数戦ではいつも見られていた。今回もその例にもれず、予選ではうまく修正して10番手のグリッドを獲得した。
ポールのウィル・パワーやペンスキー勢が1周平均183mphで走っているのに対し、琢磨は179+αというところだったが、「今はこれが限界。決勝に向けては、またマシンを変えるし最後のプラクティスで確認したい」とレースに向けてさらにマシンのスピードアップを模索していた。
レースは気温が上がる中でほぼ定刻通りにスタート。琢磨は一時9番手に上がるものの、ジェイムズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン)に抜かれ、10~13番手あたりでラップを重ねる。
「テキサスのようにリヤタイヤを傷めないようなセッティングを考えていた」という琢磨は、レース中盤になってもペースが落ちず、むしろ他のマシンがグリップを失ってペースを落とす頃に、順位を上げている。
前方をいくスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)やアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)なども、うまくかわしポジションが上げていく。
300周レースの70周を過ぎた頃には常にトップ6で争い、今回のマシンセッティングがうまくいっていることをうかがわせた。この後、不測のアクシデントや戦略ミスがなければ、上位でフィニッシュできるのは間違いなかった。
半分を過ぎ171周目にはついにトップ3に入り表彰台圏内になった。前を走るスペンサー・ピゴットとは抜きつ抜かれつの熾烈な争いとなった。
225周を過ぎた頃に、各マシンが最後のピットインを敢行する。トップ3の中では最後にピットに入ることになった琢磨は、ウィッケンスら2台に抜かれ、5番手に落ちることに。ややピットインを引っ張り過ぎたのが裏目に出る形となってしまった。
後はコース上で挽回していくしかなかったが、その波乱は終盤に起きる。
293周目に琢磨の目前でハーフスピンを始めたエド・カーペンターのフロントウイングに、琢磨のマシン後部が接触。琢磨はそのまま走行できたが、カーペンターはそのままピットへ向かう。これでデブリも出たために、イエローコーションとなる。残りは5周。
最後にグリーンになると読んだジョゼフ・ニューガーデンやウィッケンスはピットに入ってニュータイヤに交換、勝負に出た。
琢磨は無線でボビーと会話をし、ステイアウトを決めた。
「あの時、ボビーは入れって言ってきたんだけど、残り周回も少ないし、ステイアウトって決めたんです。もし入れ!って言われても無視するつもりでした」
これは結果的に賢明な判断だった。琢磨は労せずして3番手に上がり、結果的にイエロコーションのままフィニッシュとなったのである。
「最後のピットアウトの後、5番手になってて、どーゆーこと?って感じでしたけど(笑)。最後のエドとの接触は、災い転じて福となすというか、不幸中の幸いというか……(笑)、あれで3位になれたようなものですからね」
「終わってからエドも、助けてくれてありがとうって言ってましたよ(笑)。当たったおかげで、壁にクラッシュせずに済みましたからね」
「今回はエンジニアとチームが本当に最後まで諦めずにクルマを作ってくれて良かったです。感謝したいですね。チームを移籍しても、すぐに結果が出ることと、時間がかかることがあって、ようやくいろんなことが好転して来た感じですね。ここ数戦結果に繋がっているのは、そういうことだと思います。久しぶりの3位入賞は、素直に嬉しいですけど、ここで満足しないで、後半戦もこのままいきたいと思います」
そして集中豪雨で大きな被害を受けた西日本へのメッセージも付け加えた。
「特に西日本の集中豪雨で多くの皆さんが被害に遭われたと聞いています。心からお見舞いを申し上げるとともに、これ以上被害が出ないよう、そして早く復旧できますようにお祈りします」