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「Tik Tok」でバズる曲の特徴は? 倖田來未、大森靖子ら使用楽曲から探る流行のヒント

2018年07月09日 08:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 今、若者を中心に流行している動画ソーシャルアプリ「Tik Tok」。使っていない人でもTwitterやYouTubeの広告で目にしたことがある人がほとんどではないだろうか。


 Tik Tokはオリジナルサウンドを利用して様々なタイプの動画を投稿できるアプリ。自分の個性や、ダンス、演出などを盛り込んだショートムービーが簡単に作成できるとあって、特に10代から多く利用されている。


 Tik Tokが人気な理由は、Instagramの流行や、カメラアプリの加工レベルの向上とあわせてますます手軽に編集ができるようになったことなどの背景が大きく関係していると思うが、投稿を見ているとよく使用されている楽曲のテンポ、歌詞、振りに特徴があることが分かる。ここではTik Tokで特に人気な邦楽の曲を挙げつつ、同アプリでバズりやすい曲の傾向を見ていきたい。


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■倖田來未「め組のひと」


 倖田來未が2010年にリリースしたカバーアルバム『ETERNITY~Love & Song~』に収録されている楽曲だが、元ネタは1983年に発売されたラッツ&スターのヒットナンバー。Tik Tokではサビ部分を早回しにしたバージョンで、振り付けと一緒に投稿されていることが多い。誰でも一度聴けばすぐに口ずさめるキャッチーさと、簡単にマネできる振りで人気の楽曲だ。


■大森靖子「IDOL SONG」


 メジャー3rdアルバム『kitixxxgaia』に収録されている同曲は、アイドルの自己紹介を歌詞に綴っている、まさに「アイドルソング」な一曲。Tik Tokではよく〈はーい!/360度どこから見てもアイドル 出席番号ラッキー7〉の部分から使用されている。テンポの良さに加え、アイドルの自己紹介だけあってリリックが可愛らしく、アイドルになりきって振り付きで投稿する女子が多い。


■Lil Wayne「How To Love」(「幸せはいつも続かない」)


 原曲は英語だが、Tik Tokでは〈幸せはいつも続かない〉から始まる日本語詞のものが使用されている。「め組のひと」に比べると少し複雑な振り付けだが、頭に残るメロディも相まってチャレンジ感覚で投稿する人が多い。筆者の幼少時に「アルプス一万尺」という手遊び歌が流行っていて、どれだけ速いペースでアルプス一万尺ができるかをよく競ったものだが、この楽曲の動画も振り付けというよりは「手遊び」の楽しさに近いものなのかもしれない。


■おじゃま虫 feat.初音ミク「DECO*27」


 〈「好き」って言って「好き」って言って/他に何もいらないから〉という甘々な歌詞から始まるこの曲は、二人組でじゃれ合っているものや、一人でリップシンクしている投稿が多い。上記に挙げた楽曲群にも共通して言えることだが、Tik Tokで人気の曲は歌詞のセンテンスが短いものが多い。というのは、短い方がいろんな種類の振りやキメポーズを取り入れやすいからだろう。投稿は早回しのものが多いので、振りが多いほどコミカルな要素が強く出る動画に仕上がる。


■坂口有望「好-じょし-」


 女子高生シンガーソングライター坂口有望のデビューシングル曲。〈君がいなくなったって/ご飯はおいしい ちゃんと味もする〉という歌詞が、「おじゃま虫 feat.初音ミク」にも通じるどこか少女漫画チックな雰囲気をも感じさせる。思わずリップシンクしたくなるような10代の感性に近しい歌詞とサビのリズムの良さも人気の理由だろう。


 上記に挙げた楽曲以外にも「イイ波のってん ︎NIGHT」(Fxxking Rabbits)、「バスターコール」(レペゼン地球)といったコール系の楽曲や「脳みそ夫体操」(脳みそ夫)などの使用数が多い曲は総じてテンポが良く、歌詞のセンテンスが短いため振りが付けやすい(覚えやすい)という特徴がある。そんな楽曲を使用した動画を早回しにしたり個性を加えたりすることによって、よりコミカルな見栄えの動画が出来上がるのだが、つまりこれは15秒という短い時間でどれだけ面白い動画が作れるかということだ。


 Tik TokにせよTwitterにせよ、流行の理由の一つに「限られた秒数や文字量の中で発信する」という特性が無関係ではないと思う。今やSNSやコンテンツはスクロールしていけばいくらでも情報が出てきて尽きないわけで、見る側としては一つ一つを見ることにあまり時間をかけない時代だ。だからこそ制限の中で自分の個性を出す工夫をすることが大切になってくるのかもしれない。こういった時代の流れも踏まえ、動画を見た人が思わず模倣したくなってしまう、しかもそれが誰でも簡易に作成できるTik Tokの流行には、同アプリで使用されている楽曲の人気度も紐づいているといえよう。(渡邉満理奈)