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近藤真彦監督が語る夢、ホンダエンジンの改善点《あと読み》スーパーフォーミュラ第4戦富士決勝

2018年07月09日 00:31  AUTOSPORT web

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3ワイドで1コーナーに突入したスタートシーン
ダンプコンディションの予選から、ドライで行われたスーパーフォーミュラ第4戦富士の決勝。スタートからチェッカーまでのトップバトル、分かれた戦略、オーバーテイク&バトルの多さなどなど、見どころが多かったレースのポイントを3点に絞り、レース後に関係者に聞いた。

■KONDO RACINGはトップチームの仲間入りか

 ニック・キャシディの初優勝とともに、KONDO RACINGとしても2008年のJ-P.デ・オリベイラ以来となる10年ぶりの優勝。近藤真彦監督にとっては嬉しさとともに、恥ずかしさ、そして手応えを感じる一戦となった。

「10年ぶりと言われると恥ずかしい。全然勝てていなかったので、あまり10年ぶりと言わないで(笑)」と、会見で話した近藤監督。その言葉はまさに、レース屋として負けず嫌いというだけでなく、まだまだこんなものでは喜べないという気持ちの裏返しでもあったようだ。

「今回の一番の勝因はドライバーふたりがフレッシュで、ふたりとも全日本F3のチャンピオンがステップアップしてきてくれたというのが僕にとっての強みで、1年、2年、3年で育て上げていきたいなという気持ちが強かった。あとは昨シーズンからチーム内の人事の改革とかをいろいろ進めてきて、それがだんだん、歯車が合ってきたんじゃないかなと思っています。ですので、このあとの何レースかと、来年に向けて今日はニックがすごくいいきっかけを作ってくれたので、チームのモチベーションとしてもすごく高くなった」と近藤監督。

 昨年はその期待の若手、山下健太とキャシディがそれぞれポールポジションを獲得し、今回のレースでは雨で荒れた展開のなかでポールを奪い、ドライとなった決勝では正攻法で優勝。ピットストップも速く、まさにトップチームと言える堂々とした戦いぶりだった。だが、近藤監督はトップチームと呼ばれることを否定する。

「いや、まだ。トップチームに手が届いたという状況で、仲間入りしたとは言い切れない。トップチームはやっぱり、きちんと2台並べて前にいるのでね。今回も健太はいい走りをしていたけど、あいつは速さはニック同様にあるけど、開幕戦から歯車が合っていない。健太と合わせて、ワンツーフィニッシュできたときがトップチームと呼べるんじゃないですかね。それが夢です」

 夢の実現のために、近藤監督はチームのマネジメントにもこの2年、かなり手を加えてきた。

「レースはいいモノを揃えるのが大事だけど、考えたところで人を揃えるのは難しい。メカニックやエンジニア、何年も前から考えていたチームの構成が昨年から実現できてきた」と近藤監督。

 昨年にはタイトル請負人とも呼ばれる田中耕太郎エンジニアをチームに引き入れ、着実に成績を上げてきた。今回のピットストップを見てもトップチームと遜色のないタイムでタイヤ交換を行うように、チームの総合力で勝てるレベルとなった。次のツインリンクもてぎ戦はKONDO RACINGにとって試金石となる戦いになる。

■順位変動の多さと、決勝ラップタイムのバラツキの大きさ

 バトルが多く、順位変動が激しくなった決勝。その背景にはこの週末の富士の天候が大きく関係したと考えられる。金曜走行、そして土曜予選とほぼすべてウエットコンディションで、日曜日は一転、ドライコンディション。決勝日の午前のフリー走行ではじめてまともにドライタイヤを装着したマシンがほとんどの状況で、そのフリー走行の30分はミディアムとソフトのタイヤ評価がメインのメニューとなるため、セットアップはほとんどのチームが微調整しか行えなかった。

 そのため、決勝レースはほぼファクトリーからの持ち込みセットアップの状態で戦う状況となり、路面コンディションに合ったクルマ、合わなかったクルマが大きく分かれる結果となったようだ。

「ペースが違って、(国本雄資に)なかなか付いていけなかった」と話すのは、3位の国本よりも1周早めにピットインした平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)。序盤は国本と僅差だったものの序々に離され、最後は35秒差で表彰台を逃す4位。

「セクター3が厳しかった。セットアップは昨日の予選で走ったままで、そのベースは冬のテストのセット。決勝は辛かったです」とレースを振り返る平川。

 レースのベストタイムを見てもキャシディと石浦の2台のみが1分25秒台のタイムをマークしており、その時の前後状況も関係しているが、この2台のペースが飛び抜けて速かった。一方、小林可夢偉(carrozzeria Team KCMG)が「謎です。原因が分からない」と話すように、決勝のペースでトップから1.5秒もベストタイムが離れるクルマもあり、予選と決勝のコンディション変更によるラップタイムの差が、順位変動、オーバーテイクの多さや混戦を作り出す要因となったようだ。

■ホンダの最上位が8位の山本尚貴。エンジンの差はあったのか

 結果を見れば、ホンダの最上位は8位の山本尚貴(TEAM MUGEN)。予選ではフロントロウの2番手だっただけに、当然、物足りない結果となった。しかも、優勝を飾ったのがランキング2位のライバルであるキャシディとあって、レース後の山本の表情は険しいままだった。

「苦しいレースでした。スタートは失敗というより、周りが速かった。原因はもうちょっと調べたいです。クルマも朝のフリー走行からいろいろセットを変えたのですが、決勝のクルマが一番苦しくなってしまった。なんとか1ポイントを獲れたのは良かったですが、一番勝たれたくない相手に勝たれてしまいました」と山本。

 ホンダのエンジンについては、「たまたまホンダのエンジンを積んだクルマの最上位が8位だっただけで、エンジン自体に問題はまったくなかった」と山本。直線でトヨタとホンダで差があったようにも見えず、エンジンの差ではなさそうだが、ホンダの佐伯昌浩リーダーが状況を説明する。

「タイヤのコンディションがいい時は問題ないのですが、タレてきたときは改善が必要だと思っています。セクター3など回り込んだコーナーが多いところでタイヤのグリップが下がってきたときにスライド量が大きい傾向があるようなので、富士に合わせたセットアップを見直したい。エンジンのアクセルに対するドライバビリティは改善点だと思っています」と佐伯リーダー。

 ピーク時の出力、直線速度はホンダとトヨタでほとんど差はなかったようだが、スーパーフォーミュラでは細かい積み重ねがレースで大きな差となってリザルトに反映される。ホンダ陣営としてはもともと富士での走行データが少なく、チーム側、エンジニア側で富士のセットアップの詰め方が今後の課題となりそうだ。