3日間あるレースウィークエンドの中で、2回目のフリー走行がある金曜日は、結果よりも過程が大切だと言われる。
前戦オーストリアGPに続いて、トロロッソは今回のイギリスGPにも空力アップデートパーツをいくつか持ち込んだ。オーストリアGPではフリー走行1回目にブレンドン・ハートレーだけが装着して、従来仕様のピエール・ガスリーと比較テストを行ったため、今回のイギリスGPでは、ガスリーが午前中に新空力パッケージを採用した。
空力のデータ取りをする場合、できるだけ同じ条件で比較したいため、通常はセッティングはほとんど変更しないのだが、チーフレースエンジニアのジョナサン・エドルズによれば、「マシンバランスを改善するために、メカニカルセットアップのメニューも追加していろいろ試した」という。したがって、フリー走行1回目で記録したベストタイムは、実力を反映したものではない。
フリー走行1回目データを検証し、風洞実験との相関性に問題がないことを確認したトロロッソは、午後のフリー走行2回目ではガスリーだけでなく、ハートレーも新しい空力パッケージで走行を重ねた。
今回、トロロッソが持ち込んだ新しい空力パーツの中で最も特徴的なモノが、空力を考慮したバックミラーだ。これは今年フェラーリが採用したアイディアで、これまではできるだけ空気抵抗を減らそうというデザインだったミラーの内部に空洞を作り、風の通り道をミラー内に作ることで、ミラー周辺で発生していた乱気流を減らして、結果的に空気抵抗を軽減する狙いがあるものと考えられる。
フェラーリが先鞭をつけたこのユニークなアイディアを、トロロッソが真っ先に採用した背景には、ホンダのパワーユニットが依然としてライバルに対して馬力で後塵を拝しているからだと考えられる。それはこの日、トロロッソが装着していたリヤウイングを見てもわかる。その理由をガスリーは次のように説明した。
「シルバーストンのような全開率が高いコースでは、パワーユニットの性能差が顕著になるため、僕たちはどうしても空力を削らなければならない。フォース・インディアやザウバーのように予選でエキストラパワーを出せるチームはウイングをより立てることができるけど、僕たちはそれができない」
ただし、今日はまだ金曜日。この日走ったデータを元に、トロロッソ・ホンダが土曜日にダウンフォース量を変えてくる可能性は十分考えられる。
初日18番手に終わったハートレーは冷静にこう語った。
「今日は新パーツのデータ取りだけでなく、旧型の空力パッケージでのセットアップなど、さまざまなプログラムを用意して、かなりのデータを収集した。ほとんどテストといっていい。だから、今日のラップタイムは僕らの位置を表しているわけじゃないと思う」
フリー走行2回目のセッションをパワーユニットのトラブルで早々に終了しなければならなくなったガスリー。この件について田辺豊治F1テクニカルディレクターは、「搭載していたのは、かなりマイレージを消化した金曜日用のパワーユニット」と語っており、元々セッション終了後にはパワーユニットを載せ替える予定だった。
したがって、タイヤのロングランができなかったという点では、課題は残ったが、パワーユニットそのものの信頼性に関して、シルバーストンで新たな問題が発生したわけではない。
結果よりも過程が大切だと言われる金曜日。集めたデータをどのように分析し、2日目以降に向けて、マシンをどうセットアップしていくか。金曜日のセッションは終わったが、金曜日の本当の戦いは太陽が沈んだ後も続く。