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WRC:コスト削減案の一環として”F1スタイル”の合同テスト導入を検討へ

2018年07月06日 19:51  AUTOSPORT web

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WRCのワークスチームには、年間55日のテスト利用可能日数上限が定められている
WRC世界ラリー選手権は、近年ふたたび上昇を続けている参戦コストを抑制するため、各マニュファクチャラーが一堂に会した“F1スタイル”の合同テスト実施を検討している。

 現在WRCに参戦するワークスチームは、高騰するコスト削減案の一環としてFIA国際自動車連盟に対して年間に許されているテスト日数を削減するよう呼びかけているが、実際には最新世代の現行WRカーが導入された2017年には、それまで42日間だったテスト可能日数が55日間にまで増加している。

 コスト削減への革新的なアプローチとして考えられているのは、イベント前にグループテストを設け、4つのマニュファクチャラー(トヨタ、ヒュンダイ、シトロエン、フォード)全社が参加。F1のインシーズンテストやタイヤテストなどと同様に、同じエリアに設けられたループステージを共有のテストコースとするプランだ。

 ただし、この案は現在アスファルトのターマック・ラリーに向けたものだけの議論となっており、グラベル路ではさらにタイヤ本数などがかさむこともあり、ロジスティクス面などでより複雑な条件のチャレンジとなることが課題として考えられている。

 現在、多くのチームがラリー・フィンランドに向けた準備とテストを実施しているが、仮にその開催地となるユバスキラ至近のステージを設定し、5日間のグループテストを実施した場合、現在のコストより約11万ポンド(約1610万円)もの削減につながる試算もあるという。

 現在、100万ポンド(約1億4600万円)近いテスト経費が必要となっているWRCにとって、FIAはこの問題により踏み込んだ対策が急務だとチームは考えている。

 トヨタのワークスチームを率いるトミ・マキネンは現時点で実施されているテストのレベルには満足しているとするも、Mスポーツ・フォードのリッチ・ミルナーは、英国オートスポーツに対し「グラベルの場合、現状のテスト日数を削減していく必要はあると思う」と語っている。

「ルートの固定は仕方ないが、ひとりのドライバーのみという制限は好きじゃない。それでも年々、コストは馬鹿馬鹿しい額にまで膨らんでいる」と語るミルナー。

「でもターマックでなら、我々もF1スタイルのテスト形態を取り入れることが可能だと思う。いつくかのチームが集って面白いテストができるだろうし、地域の特色を備えた代表的なステージを4本ほど設定すれば、それをみなで共有しローテーションしながらのテストもできるだろう」

「その道路占有のコストは全員で分担することも可能で、プロモーターとしてはファンに新たな要素を提供できる可能性も広がる。そのテストから次のラリーに向け、観戦を手助けするようなチームのパワーバランスを判断する材料も暴露されるだろうからね」

「同時に、FIAはWRC2に参戦するチームが現状どれだけのテスト機会を割いているかに関して、中長期的な視野を持つ必要もあると思う」

「そのレベルでは、テストのボリュームや日数は完全にドライバーやチームの予算規模に依存しているんだ。これはシリーズそのものの枠組みを崩壊させる可能性も秘めていると思う」

「だからFIAは、WRC2に対してもトップカテゴリーと同様に合同テストの可能性を模索し、提案してみる必要がある。もちろん、カテゴリーに合わせてスケールダウンした規模でね」

 FIAのラリー部会でディレクターを務めるイブ・マトンも、こうした話題に対し「テストの実施形態については議論しているテーマであり、コスト削減の可能性についてマニュファクチャラーと協力して実現に向けた努力を続けたい」とコメントしている。

「それは我々とマニュファクチャラーの双方にとって明らかなメリットだからね。我々が重視すべき原則のひとつは、ファンや観客に直接関係のないエリアでのコスト削減であり、ショーの部分での投資はこれに当てはまらない。だからテストこそ、そうした直接的なコスト削減エリアの重要なパートだと言えるね」