■熱狂的な女性ファンが多い、今のハロプロ
結成20周年で再注目されているハロー!プロジェクト(以下、ハロプロ)。他アイドルに比べて熱狂的な女性ファンが多く、直近では『真夜中』(フジテレビ)での指原莉乃&松岡茉優の熱いモー娘。トークが話題となった。他にもアンジュルムファンを公言する蒼井優、「ハロプロへ恩返ししたい」という柳原可奈子や楽曲提供をする大森靖子など。言わずもがな筆者もハロヲタだ。たくさんある魅力の中で「可愛い」「曲がいい」を越えて、女性たちが熱狂する理由はなにか、個人的な見解ではあるが考察したい。
現在ハロプロには、6グループが所属。ハロプロの始まりである「モーニング娘。'18」はフォーメーションダンスを武器に、ハロプロのパフォーマンスを牽引する。2009年結成「アンジュルム」は、これまでのハロプロにないカッコよさを磨き、不動の人気を誇るモーニング娘。を脅かす存在。
2013年結成「Juice=Juice」は、メンバー全員が高い歌唱力を持ちセクシー系から元気系まで幅広く歌い上げる。現在は学業優先メンバーと兼任メンバーにより活動が少ない「カントリー・ガールズ」、2015年にはハロプロ末っ子グループの「こぶしファクトリー」と「つばきファクトリー」が結成された。それぞれメンバーの加入と卒業を繰り返しながら、個性の強いグループを作り上げている。
■モー娘、あやや、Juice=Juiceへと受け継がれる「パーフェクトなパフォーマンスを目指す」DNA
女性ファンが熱狂する理由のひとつに、ハロプロに根差す「パーフェクトなパフォーマンスを目指すDNA」があるように思う。女の子が努力をしながら急成長していく姿を見ていられるのはアイドルファンの醍醐味。中でもハロプロは、モーニング娘。から始まり、代々「プロ根性」というDNAが受け継がれ、努力の比重が圧倒的に「パフォーマンス」に置かれている。その本気度の高さに心が震え、アイドルに憧れられるアイドル、と言われるまで育っているのだろう。
DNAの系譜として、ダンス、歌唱、MC共に完璧で竹内まりやに「20代の女性歌手でいちばん上手い」と言われた松浦亜弥、ミリオンヒットを飛ばした黄金期に対して「プラチナ期」と呼ばれた2000年代後半のモーニング娘。の存在は大きい。プラチナ期はリーダー高橋愛を筆頭に濃密な練習を重ね、その圧倒的なライブパフォーマンスは「歌とダンスのスペシャリスト集団」と評価され、ハロプロ全体の礎になった。そういったDNAは個々やグループに受け継がれていく。音痴だけど顔採用などと冷やかされていた道重さゆみは、横浜アリーナでの卒業コンサートでオーディションの課題曲“赤いフリージア”を完璧に歌い上げ、ハロプロで揉まれてきた女の子の見事な成長ぶりをみせた。
現在のグループでは、モーニング娘。'18。はDNAを色濃く引き継ぐ。映像を見るとわかるように歌割に偏りがあり、歌やダンス、実力がないと見せ場をもらえないため、全員が本気で完璧を目指す。注目はJuice=Juice。研修生として幼い頃から歌唱やダンスを訓練し、パフォーマンスに定評があった彼女たちは年を重ね、技術力に加えて表現力もアップ。長年5人組だったが8人組に増員となり、これまでとは違った成長がみられそうだ。
■「あるべき女の子」がいない
ハロヲタであるエッセイスト犬山紙子さんがかつてTwitterで「つんくさんの歌詞は、女の子にこうあって欲しいというおっさん目線じゃなくて、女の子本人に寄り添っているから最高」と言ったように、最近は特に女性として自由に生きる喜びや、真っ直ぐ自分を信じて突き進む力を歌う。
アンジュルムの最新ツアータイトルは「十人十色」。メンバー10人それぞれの個性にフィーチャーしたライブで、オープニングの衣装はお嬢様風ワンピースの子もいれば背中に虎を背負った子もいて、個性が爆発していた。『レコード大賞』新人賞受賞など華やかなデビューからの挫折、スマイレージからの改名など紆余曲折を経て培われた雑草魂で、“大器晩成”“七転び八起き”などアイドルソングとは思えない力強い楽曲がよく似合う。
「可愛さよりも、カッコよくありたい」と和田彩花が冒番組でコメントしたように、アイドルとは「こうあるべき」という世間一般の定説にはとらわれず、自分たちが「こうなりたい」と思い描く女の子の道を貫く。そうした姿は同じ女性として心の底からカッコイイと興奮するのだと思う。
■ひとりの女の子としてステージで輝く。つんく♂「僕らは本気がなくなったら終わり」
これら魅力的なハロプロの土壌をつくってきたのは、確実にプロデューサーのつんく♂さんだ。つんく♂さんは『SWITCHインタビュー達人達』(NHK)で「一見ミーハーだけど、中身は音楽ファンの魂をつかむような濃い楽曲を歌う。僕らは本気がなくなったら終わり」とハロプロの根底にあるものを語った。『ラストアイドル』(テレビ朝日)で女性アイドルをプロデュースする姿をみていても、こう歌いなさい、ではなく精神論を語ることが多い。その言葉を自分の中で消化して表現する女の子たちは、新しい自分と出会えた喜びに満ちている。総合プロデューサーは退いたが、そのDNAを作詞・作曲家たちも受け継ぐ。
圧倒的なパフォーマンスを目指して鍛錬を積み、自分の個性を大切にして、ひとりの女の子としてステージの上で輝く。一貫したハロプロDNAに魅了されているのかハロプロは「箱推し」も多い。出戻り歓迎、新規歓迎。急成長を遂げる彼女たちの今は、一瞬も見逃せない。(限りがあるため全グループは紹介できなかったが、それぞれ素晴らしいので、ぜひお気に入りのグループを見つけてください!)
(テキスト:羽佐田瑶子)