2018年07月06日 11:12 弁護士ドットコム
司法修習生に対して一律月額13万5000円を支給する「給費制」が復活する以前の、「貸与制」だった「谷間世代」の第1回貸与金返済期日が7月25日に迫っていることを受けて、貸与制の新65期(2011年度に司法修習生採用)の弁護士らが7月4日、東京・霞が関の司法記者クラブで、返済期日の5年間延長と是正策を求める会見を開いた。71期から給費制が復活したことを踏まえて、「政策の失敗を押し付けられた感が拭えない」「感情的には社会貢献をしにくい」という率直な意見が聞かれた。
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会見した弁護士らによると、貸与制は新65期から70期の約1万1000人中、約8000人が利用し、平均利用額は約300万円。アルバイトも禁止されていたため「生活費のために、借金を半ば強制された」との声もある。
会見に臨んだ新65期の市川哲宏弁護士(愛知)は、現在司法修習中の71期から給費制が復活したことを踏まえて、「(谷間世代は)国から政策失敗を押し付けられた感覚が拭えない」と指摘。新65期が6年目を迎える中で、公益活動をはじめとして「お金にならないことにチャレンジする基盤があるとはいいがたい」「感情的には社会貢献をしにくい気持ちがある」と述べた。市川弁護士は「返済が始まれば既成事実化する」とした上で、5年間の期限延長によって是正策を議論する時間を確保した上で、是正を求めた。
返済が迫る新65期の弁護士が現状を訴える声もあった。野口景子弁護士(第二東京弁護士会)は、シェルターや空き家問題などに取り組む団体を立ち上げる際に、最初は持ち出しになる点を指摘。野口弁護士自身も、子どもに正しい法的情報を伝える団体の立ち上げえを考える中、「二の足を踏む。このままでは、法曹人口の4分の1にあたる谷間世代が、積んできた経験を活かせないままになる」と吐露した。野口弁護士は、出産や子育て時期が重なった弁護士への配慮も求めた。
緒方蘭弁護士(第二東京弁護士会)は、弁護士会の委員会活動に若手が参加しにくい状態を指摘した上で、「(委員会活動で蓄積された)ノウハウや知識を若手が継承が難しくなる」とした。さらに、企業内弁護士や任期付公務員になる弁護士が出ているほか、「(登録抹消をした人の名簿を眺めていると)一生懸命活動していた人が弁護士でなくなるのは悲しく思う」と述べ、法曹現場を去る弁護士が出ている現状に疑義を呈した。
給費制の問題に取り組んできた「ビギナーズ・ネット」では、是正策を求めるための署名活動を実施しており、7月までに谷間世代の3分の1にあたる3500筆が集まった。ただ、裁判官や検察官の署名は含まれていないという。また、707人中236人の国会議員からの応援メッセージが寄せられ、単位会52会中、30会が会長声明を出しているという。
(弁護士ドットコムニュース)