東京商工リサーチは7月5日、賃上げに関するアンケート結果を発表した。調査は5月にインターネット上で実施。7408社から回答を得た。
2018年春に賃上げを実施した企業は全体の8割に上った。実施企業のうち7割は「従業員のモチベーションが上がった」など、賃上げの効果を実感していることが分かった。
大企業は初任給増額に力を入れて人材確保に取り組む
賃上げを実施した企業にその内容を聞くと、最も多かったのは「定期昇給」で78.7%。その後、「ベースアップ」が43.8%、「賞与(一時金)の増額」が37.4%と続く。
企業規模別に見ても、定期昇給、ベースアップ共に、大企業と中小企業との間で実施率に大きな差はない。差が出たのは「新卒者の初任給の増額」だ。大企業では25.8%が実施した一方で、中小企業は15.2%と、10.6ポイントの開きが出た。
調査を実施した東京商工リサーチはこの理由を、「内部留保に余裕のある大企業は、もともとの賃金が高い上、人材確保のため初任給の賃上げに積極的に取り組んでいることがうかがえる」と分析している。
賃上げのうち、定期昇給を行った企業を対象に月額の上げ幅を聞いた。最も多かったのは「5000円以上1万円未満」で21.3%。次いで「2000円以上3000円未満」(21.2%)、「3000円以上4000円未満」(17.2%)とばらつきが見られた。5000円以上の実施をした企業は、大企業が22.3%、中小企業が28.2%と、中小企業が5.9ポイント上回った。
賃上げに踏み切った理由を複数回答で聞くと、最も多かったのは「雇用中の従業員の引き留めのため」で、50.8%と過半数を占めた。企業規模別に見ると、大企業が42.2%に対し、中小企業は52.1%と、大企業より10ポイント多い。人手不足が深刻な中小企業の状況の裏返しと考えられる。
中小企業の「従業員の離職防止のために賃上げをする」という姿勢は、ベースアップや賞与増額からも見て取れる。5000円以上のベースアップを行った大企業は19.7%の一方、中小企業は36.7%だった。賞与も、50万円以上増額した大企業は12.6%なのに対し、中小企業は14.3%。中小企業は賃上げに積極的のようだ。