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裁判で勝っても「難民不認定」となったスリランカ人、再び勝訴…東京地裁、認定命じる

2018年07月05日 17:22  弁護士ドットコム

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難民不認定が裁判で取り消されたにもかかわらず、国がふたたび不認定とした処分を不服として、スリランカ国籍の男性(58)が、国を相手取って、難民認定をもとめた訴訟で、東京地裁は7月5日、難民不認定処分を取り消したうえで、難民認定を命じる判決を下した。


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男性の弁護団によると、裁判で国の難民不認定処分が取り消されたあと、ふたたび不認定を受けたケースは、少なくとも今回を含めて5件ある。ふたたび提訴して、勝訴に至ったケースは今回が初めてという。この日の判決後、東京都内で記者会見を開いた男性は「とてもうれしい。日本の市民として、日本社会のために貢献したい」と話した。


●裁判で難民不認定が取り消されたのに、ふたたび「難民不認定」となっていた

判決などによると、男性は、スリランカ北部出身の少数派タミル人で、2006年に来日した。その当時、スリランカでは内戦がつづいており、タミル人の反政府組織「タミル・イスラーム解放の虎」(LTTE)の関係者であると疑われると、拘束や拷問などの対象となるため、男性は身の危険を感じて出国したという。


男性は2006年10年、難民認定を申請したが、不認定とされてしまった。この処分を不服として提訴したところ、大阪地裁は2011年3月、難民不認定を取り消した。国が控訴しなかったため、判決が確定したが、法務省は同年12月、「内戦が終結するなど、スリランカの情勢が変わった」として、ふたたび不認定処分としていた。


●難民条約の「終止条項」が争点となった

原告弁護団によると、争点となったのは、難民条約の「終止条項」と呼ばれるものだ。


難民条約では、難民認定した人を難民でなくする条件として、「難民であると認められる根拠となった事由が消滅したため、国籍国の保護を受けることを拒むことができなくなった場合」(終止条項5)など、と定められている。東京地裁の清水知恵子裁判長は、判決で「(終止条項に)該当すると認められない場合、難民認定すべきだ」とした。


そのうえで、「スリランカの内戦が終結した2009年5月以降も、タミル人であってLTTEとの関係が疑われる者については、なお政府による拘束や拷問の危険にさらされていたことは否定できず、そのような状況は(男性の)不認定処分がされた2011年12月時点でも継続していた」とみとめた。


弁護団の渡邉彰悟弁護士は記者会見で「難民事件では、どうして勝てないんだというケースがたくさんある。行政に追従する判決ばかりで、難民行政のあり方にまったく釘をさせない、チェック機能のない司法が存在していたが、(今回の判決がきっかけで)方向性が改められると期待している」とコメントした。


(弁護士ドットコムニュース)