2018年07月05日 11:42 弁護士ドットコム
居酒屋チェーン「鳥貴族」の男性店長が、アルバイトの女性従業員の着替えを盗撮したとして、懲戒解雇された。盗撮行為をめぐっては、現在、警察による捜査もおこなわれており、会社側は「全面的に協力する」としている。
【関連記事:「16歳の私が、性欲の対象にされるなんて」 高校時代の性被害、断れなかった理由】
鳥貴族の総務課によると、京都市内にある店舗の男性店長が6月15日、店の更衣室で、携帯電話を使って、女性従業員の着替えを盗撮したという。店長は社内報告前に、警察へ出頭した。会社側は、被害のあった従業員に対して、謝罪したうえで見舞金を支払ったという。
この従業員とみられる人物は7月2日、ツイッター上で盗撮被害を告発。証拠とみられる写真を添付しつつ、「逮捕されへんことが意味わからへん。携帯に証拠も残ってるのにな!この世の中ほんまに意味がわからん」と投稿していた。
今回のような盗撮は、どんな罪に問われる可能性があるのだろうか。若林翔弁護士に聞いた。
「今回のような盗撮は、もし東京都でおこなわれていれば、都迷惑防止条例違反にあたります(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)。
今年7月1日、改正『都迷惑防止条例』が施行されました。それまでは、盗撮行為に関して、『公共の場所』や『公共の乗り物において』という制限が付いていました。改正条例では、住居や更衣室のほか、人が通常衣服の全部または一部を着けない状態でいるような場所も対象に入っています」
鳥貴族によると、盗撮のあったのは、京都市内の店舗だったということだ。今回のケースはどうだろうか。
「一方で、京都府迷惑防止条例は、改正前の都条例とほとんど同じ内容となっています。つまり、住居や更衣室などは『公共の場所』といえないことから、今回のケースについて、府条例は適用されません。
スマホの普及によって、盗撮も増えている事情もあり、都条例は、住居など範囲が拡大されました。もし仮に、京都府も、東京都と同じように改正されていたら、条例違反で逮捕されていたかもしれません」
過去には、盗撮目的で女子トイレや更衣室に入ったとして、刑法の住居侵入罪で検挙された事例は少なくない。今回のケースは、住居侵入罪(3年以下の懲役または10万円以下の罰金)にあたらないのだろうか。
「住居侵入罪は『管理権者の意思に反する侵入が違法』とされています。ただ今回のケースでは、店長が、盗撮行為をおこなっていたということです。店長は、『店のどこでも入れる』という管理権があるものと捉えられてしまう可能性があります。その評価が争われた場合、警察も、住居侵入罪の適用に及び腰になるのではないかと思います」
ということは、今回のケースで、店長は罪に問われないということなのだろうか。
「軽犯罪法違反にあたります。『正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者』(1条23号)は、拘留または科料に処されます。盗撮も『のぞき』にあたるとされています。
ただ、拘留は『1日以上30日未満』の間、刑事施設に拘置するもので、科料は『1000円以上1万円以下』の財産刑(罰金のようなもの)です。被害にあった女性からすれば、『めちゃくちゃ軽い』といってもいいかもしれません」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
若林 翔(わかばやし・しょう)弁護士
顧問弁護士として、風俗、キャバクラ、ホストクラブ等、ナイトビジネス経営者の健全化に助力している。日々、全国から風営法やその周辺法規についての相談が寄せられる。また、店鋪のM&A、刑事事件対応、本番強要や盗撮などの客とのトラブル対応、労働問題等の女性キャストや男性従業員とのトラブル対応等、ナイトビジネスに関わる法務に精通している。
事務所名:弁護士法人グラディアトル法律事務所
事務所URL:https://fuzoku-komon-law.jp