2018年07月05日 10:32 弁護士ドットコム
「おれは会社員をやめるぞ!」こうタンカを切ったとしても、単に独立してフリーランスになるわけではない。今回、会社員の立場を捨てて、個人事業主として同じ職場で働く場合のメリット、デメリットを考えてみたい。
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雇われ人のサラリーマンの場合、会社と雇用契約を結んでおり、仕事の報酬は「給与」として支払われる。税制上、給与所得に該当するので、税金が給与から源泉徴収で差し引かれることになる。会社内独立は、この負担を軽減するためのアイデアだ。
サラリーマンという立場から離れる一方で、会社と業務委託契約を結び、今までと同様の仕事を請け負うことになる。
税金の観点からみて、一体どのようなメリットがあるのか。年収1,000万円のサラリーマンを例に、松本佳之税理士の考察を聞いた。
年収1,000万円のサラリーマンには、どのような税金がかかるのか。
「年収1,000万円のサラリーマンの場合、220万円の給与所得控除を受け、給与所得控除後の所得から、さらに基礎控除・配偶者控除といった各種控除を差し引いた残額(課税所得)に対して所得税等の税金がかかります」
独立した場合はどうなるのか。
「独立して業務委託契約で得た所得は、事業所得という区分になるので、給与所得控除を受けることはできません。また、事業税もかかります。一方で、青色申告をすれば最大65万円(2020年からは最大55万円)の控除を受けることができ、事業でかかった経費を必要経費として計上することもできます。
つまり、青色申告特別控除と必要経費の合計が220万円を超えるようなときは、税金が少なくなります。自宅や車を業務でも使用しているときは、家賃や車両関係費の一部を必要経費とすることもできます」
具体的な税金の額はいくらになるのか。
「例えば、次のようなケースで税金の違いを考えます。
年収1,000万円、所得控除76万円、事業の必要経費等(青色申告特別控除を含む)が400万円とした場合、サラリーマンのときの各種税金の合計は171.7万円となり、独立しているときは132.2万円となります。(※計算根拠は記事の末尾に掲載)
このように給与所得控除よりも必要経費等が多いと、税金は少なくなります。また、個人事業主の場合は小規模企業共済などの共済制度を使った節税も可能となります。ただし、収入が1,000万円を超えると、その2年後から消費税を納める必要もでてきます」
年金や社会保険については、両者はどう違うのか。
「サラリーマンの年金や健康保険の保険料は、年齢や加入している制度によって異なりますが、介護保険なしの場合の自己負担の料率は15%程度となるでしょう。つまり、年収1,000万円の場合、約150万円の保険料となります。
一方、独立すると年金は国民年金となり、健康保険は国民健康保険となります。国民年金保険料は年間約20万円、国民健康保険料は年間約73万円程度となりそうです。年金と保険料の負担額も少なくなりますが、将来受け取ることができる年金も減りますので、どちらがよいかはわかりません。
このように税金や保険料の負担だけを考えると、独立した方がメリットがありそうですが、仕事は不安定となりますし、退職金などもありません。また、独立すると、経理処理や申告、事務手続きなどこれまで会社がやってくれていたことを自身でしなければならないこととなります。そのようなデメリットがあることもよく考えましょう」
<計算の詳細>
サラリーマンの場合
1,000万円-給与所得控除220万円-所得控除76万円=704万円
所得税 704万円×23%-63.6万円=98.3万円
復興特別所得税 98.3万円×2.1%=2.0万円
住民税 (1,000万円-給与所得控除220万円-所得控除66万円)×10%=71.4万円
合計171.7万円
独立した場合
1,000万円-必要経費等400万円-所得控除76万円=524万円
所得税 524万円×20%-42.7万円=62.1万円
復興特別所得税 62.1万円×2.1%=1.3万円
住民税 (1,000万円-必要経費等400万円-所得控除66万円)×10%=53.4万円
事業税 (1,000万円-必要経費等400万円-事業主控除290万円)×5%=15.5万円
合計132.3万円
【取材協力税理士】
松本佳之税理士
税理士・公認会計士。みんなの会計事務所(大阪市)代表。「税理士のノウハウを会社成長の力に」をモットーに、大阪で起業支援、中小・ベンチャー企業の支援や税務の他、個人確定申告、相続・相続対策等の税務業務を手掛ける。
事務所名 :みんなの会計事務所
事務所URL:http://www.office-kitahama.jp/
(弁護士ドットコムニュース)