2018年07月05日 10:32 弁護士ドットコム
週の半分以上、何時間もいっしょに過ごしてくれた既婚の彼氏。「妻とは完全に終わっている」という言葉を信じていたのに、別の彼女がいることが発覚ーー。そんな辛い体験をした女性が、「彼から慰謝料を取れますか?」と弁護士ドットコムニュース編集部に質問を寄せました。
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相談者によると、彼氏が既婚者であることを知りながら交際を続けていましたが、週4日はデートをし、頻繁に泊まっていたことから、夫婦関係は完全に終わっていると信じていました。
そんな相談者のもとに、ある日一通のメッセージが届いたそうです。「別れてください」という言葉とともに添付されていたのは、なんと彼氏の寝顔写真。差出人は彼氏の妻ではなく、恋人を名乗る女性でした。相談者が彼氏と知り合う1年前から、この女性は彼氏と交際していたというのです。
怒った相談者は彼氏と別れますが、こころの傷は今も癒えません。相談者は彼氏から慰謝料を取ることはできるのでしょうか。原口未緒弁護士に聞きました。
相談者には「不倫している」という意識が乏しいように感じます。今回のように、男性が「妻とは完全に終わっている」と婚姻関係の破綻を主張してきた場合でも「不倫」にあたるのでしょうか。
「もちろん、言えます。認識や意識がなくても、客観的な事実として、交際相手がまだ法律上既婚者であれば、世間一般で言うところの『不倫』にあたるといえるでしょう。
ちなみに、『不倫』は法律用語ではなく、法律上は『不貞行為』といいます。厳密に言うと不貞行為は性交渉をしたことを指しますが、性交渉まで至っていなくても、婚姻関係を壊した、妻に誤解を与えたなどのいわゆる『平穏な婚姻生活を侵害した』と言うことができるのであれば、慰謝料請求が認められています。
これらを前提に、『男性が婚姻関係の破綻を主張してきた場合』についてお答えしますと、もし、この男性の妻が相談者に対して婚姻関係の破綻もしくは平穏な婚姻生活を侵害したと主張して慰謝料を請求してきたときには、『すでに婚姻関係は破綻していたのだから慰謝料を支払う義務はない』と反論することができます」
今回、相談者は男性に慰謝料請求したいと考えています。自分以外に彼女がいたこと、妻と別れなかったことに対して慰謝料請求することはできるのでしょうか。
「なかなか難しいと思います。例えば、男性が『妻とは別居中である』『妻とは離婚調停中である』などと虚偽のことを言って、本当は円満に夫婦関係をつづけていた場合には、相談者を騙して性交渉に応じさせたと言うこともできるので『貞操権の侵害』として慰謝料を請求することもできるでしょう。
しかし、妻との関係が破綻していたことは事実で、その後、相談者とは別の女性との交際を開始し、さらにその後、相談者との交際を開始したのであれば、いわば、結婚前の独身の方同士のいわゆる二股恋愛のような形になるのではないかと考えます。
ただし、憲法は『裁判を受ける権利』を保証していますし、慰謝料は『精神的苦痛を慰謝するもの』ですので、理屈から言えば、慰謝料請求すること自体はもちろんできます。しかし、裁判所で認められるかどうか、彼が払うかどうか、はやってみなければわからないところが大きいです」
今回の相談者は相手男性が既婚者であることを知りながら交際していました。もし、知らなかった場合でも慰謝料請求は難しいのでしょうか。
「他に彼女がいたことは完全に独身の方同士での二股恋愛の場合と変わらないので、このことに対する慰謝料請求は難しいでしょう。
この場合、妻がいたことは、騙されていたことになるわけですが、婚約をしていた、結婚の約束をしていた、結婚を前提としていた、ということで損害が発生していない限り、慰謝料の請求が認められることは難しいかと考えます」
最後に、相談者への恋愛アドバイスもお願いします。
「恋愛アドバイス、ですか(笑)。
心理学やスピリチュアルの考え方に基づいて考えますと、自分の内側にあるものは外側に投影される、と言いますので、この相談者の方のようにひどい恋愛をしてしまう、いわゆるダメンズばかりを好きになってしまう、ということは、単純に言ってしまうと、『自分のことを大切にしていない』のですね。
例えば、自分のことが好きでなかったり、自分に自信がなかったり、こんな自分は愛されるはずはないと体面ばかりを繕っていたりすると、そういう相手しか寄ってこない、ということなんですね。自分に自信がないから、相手に対してやたら下手に出たり、好かれようとしたり、捨てられないようにしてしまう。そんな言動によって、下手に見られて、軽くあしらわれたり、いわゆる『遊ばれる』という扱いをされてしまうのです。
自己肯定感や自己価値を高めれば、こんなひどい恋愛とはおさらばできます。そのためには、まずは人の目線を気にせず、自分の好きなこと、自分で決めたことを少しずつ、少しずつ、やってみて、自分に自信をつけていくしかないんですね。人がどう言うか、どう見るかを気にせずに、気にしなくて済むところから、少しずつ、少しずつ、言いたいことを言ってみたり、やりたいことをやってみたりと、心の持ちようや行動を変えてみてください。
大きく変わるには、自分に自信をもつことができるような題名の心理系の本を読んでみたり、カウンセリングやセミナーなどに通ってみるのもオススメです」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
原口 未緒(はらぐち・みお)弁護士
東京護士会所属。心理学カウンセリング・セラピーなどをもとに、自分自身に向き合うことで円満離婚を実現するサポートをしています。著書「こじらせない離婚」(ダイヤモンド社)
事務所名:弁護士法人 未緒法律事務所
事務所URL:http://mio-law.com