2013年4月から施行された「改正労働契約法」は、「無期労働契約への転換(第18条)」を定めている。雇用契約の更新を重ねて同じ企業で5年を超えて働いた場合、本人が希望すれば、1年ごとなどの有期契約ではなく「無期労働契約」に切り替えられるという制度だ。
この「5年」は13年4月1日からのカウントが対象なので、本格的にこの転換がなされるのは、今年(2018年)4月1日からとして注目されている。日本労働組合総連合会は、無期労働契約への転換が始まって以降の有期契約労働者の改正の認知状況や実態を調査。6月28日に結果を発表した。(文:okei)
「待遇が正社員と同等になるわけではないから意味が無い」 約6割
調査期間は5月16日~17日の2日間、インターネットリサーチによって実施し、全国の20歳~59歳の有期契約労働者(週20時間以上労働する民間企業の有期契約労働者)1000人から有効サンプルを得た。
「無期労働契約への転換(第18条)」についての考えを聞いたところ、「契約期間が無期になるだけで待遇が正社員と同等になるわけではないから意味が無い」について、「非常にそう思う」(22.1%)と、「ややそう思う」(35.6%)を合計した同意率は57.7%。否定的な考え方を持つ人が6割近くになることがわかった。
一方で、「無期契約に転換できる可能性があるのでモチベーションアップにつながる」という項目では、「非常にそう思う」(9.0%)、「ややそう思う」(32.0%)を合わせた同意率は41.0%で、前向きに捉えている人も4割と少なくない。
労働条件や福利厚生、教育訓練で正社員との格差があり、 「ボーナスの支給対象になっている」は3割半、「教育訓練の対象になっている」は約5割など、期間だけでは埋められない溝も多いようだ。
契約社員は「不本意」で有期雇用が多く、6割以上が不満抱える
「有期契約で働くことになった状況」を聞くと、『自ら進んで(に近い)』が57.9%、『正社員になれなくて(に近い)』が28.3%、「どちらともいえない」は13.8%と自ら進んで選んでいる人は6割近くいる。
しかし雇用形態別にみると、契約社員では『自ら進んで(に近い)』(33.8%)より、『正社員になれなくて(に近い)』(44.7%)が上回っている。契約社員は不本意ながら有期雇用として働く人のほうが多いとわかる。
不本意ながら有期契約労働者になった人に、満足度や今後の働き方などを聞いたところ、以下のような結果となった。
「現在の働き方・雇用形態の満足度」に関しては、『満足(に近い)』が12.7%、『不満(に近い)』が62.2%となり、6割以上が現在の働き方や雇用形態に不満を抱えている。「今後の働き方・雇用形態の希望」については、『このままでよい(に近い)』が10.3%、『正社員になりたい(に近い)』が67.5%となり、正社員での就業を希望する人のほうが多い。
「現在の仕事のやりがい」については 『感じない(に近い)』が42.0%、「現在の職場の満足度」に関しては 『不満(に近い)』が41.3%など、いずれも否定的な回答が高く、仕事にやりがいを感じられず、現在の職場に不満を抱える人が多いようだ。
また、すべての回答者の不満として1位は「給料が安い」、次いで「給料が上がらない」、「働きぶりが評価されない」という理由も上がっている。
4月を待たずに雇い止めに遭うケースも
こうした「やむを得ず有期契約」で働く人の雇用を守るために施行されたはずの法改正だが、NHK総合「おはよう日本」の6月9日の特集では、大学の非常勤講師などが今年の4月を待たずに雇い止めに遭うケースなどを紹介していた。
労働問題に取り組んできた法律事務所には、「無期転換してもいいが、賃金は大幅に下がると言われた」「転換するための試験が設けられ、合格できなかった場合は雇い止めになると言われた」など、全国から相談が相次いでいるという。ことさら格差を言うのもよくないかもしれないが、却って不満が増す事例が目立つようでは本末転倒だ。