2018年07月03日 10:51 弁護士ドットコム
開催中のサッカーワールドカップで大活躍したポルトガルのエースFWクリスティアーノ・ロナウド。6月15日のスペイン戦では、ハットトリックを達成して、鮮烈な印象を焼き付けた。ポルトガルが決勝トーナメントでウルグアイに敗北したことを残念に思う人も多いだろう。
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ロナウドはスペイン1部リーグで活躍しているが、脱税問題でも大きな話題になっている。報道によると、肖像権による所得をスペインの税務当局に過少申告して、2011~2014年に19億円(1470万ユーロ)を脱税したとして、24億円余り(1880万ユーロ)の罰金を支払うことで税務当局と同意したという。
ロナウドは禁錮2年の刑も受け入れる方向だが、実際に収監される可能性は低いとみられている。
もし同様の脱税が日本でも起きた場合、どうなるのだろうか。
今回、法人ではなく、個人であることを前提に考えてみたい。本来納付すべきだった税額に加えて、どの程度のペナルティが課せられるのか。
日本では、確定申告をめぐるペナルティとして、確定申告は期限内にしているが、申告額が過少である場合の「過少申告加算税」や、そもそも期限内に確定申告をしていない場合の「無申告加算税」、意図的に少なく申告する「仮装・隠蔽」があった場合の「重加算税」、源泉所得税を期限までに納付しなかった場合の「不納付加算税」がある。これに加えて、確定申告の期限を過ぎた日数に基づく「延滞税」もある。
「過少申告加算税」はうっかりミスや見解の違いであるのに対して、「重加算税」は意図的に隠蔽してしまった場合に該当する。
過少申告加算税、重加算税ともに、未納になっている金額(増差税額)をもとに、計算される。
過少申告加算税は納付すべき税額の5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は10%)課税される。
重加算税については、過少申告加算税と不納付加算税に代えて徴収するものについては35%、無申告加算税に代えて徴収するものには40%が課される。さらに、期限後申告等があった日の前日から起算して、5年以内に同じ税目に対して無申告加算税や重加算税が課されたことがあるなら、さらに10%が加算されることになる。
延滞金についても考えてみたい。個人事業税の延滞については、地方税法上、当初の納めるべきだった期限までさかのぼって延滞金を課すという規定はないため、考慮する必要がない。個人住民税の延滞については、所得税の修正申告・更正等があったことにより、税額が変更になった場合や、新たに課税された場合は、本来の納めるべきだった期限の翌日から完納の日までの期間の日数に応じて、未納税額に乗じて計算した延滞金が発生する。
また、国民健康保険も、所得に応じたものなので、本来納めるべきだった金額を払わなければならない。しかしながら超高額所得者であるため、最高限度額である可能性が高いため、その影響はほぼないだろう。
今回、意図的な隠蔽があったとして、重加算税が適用されると考えてみたい。そうすると、増差税額が19億円だと想定すると、本来支払うべきだった19億円に加えて、税率35%の場合は6.65億円、40%の場合は7.6億円を追加で支払わなければならないことになる。さらに、延滞税及び延滞金も発生することになる。
また、裁判で有罪判決を受けた場合、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金に処せられることになる。
【監修税理士】
新井 佑介(あらい・ゆうすけ)税理士・公認会計士
AAG arai accounting group 代表。新井公認会計士事務所所長。慶応義塾大学経済学部卒業後、BIG4系ファームを経て現職。
事務所名 : AAG Arai Accounting Group / 経営革新等支援機関 新井会計事務所
事務所URL: http://shozo-arai.tkcnf.com/pc/