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スルガ銀株主総会「自殺者も出たのに、会長が公の場で謝罪してない」、大炎上の内幕

2018年07月02日 15:02  弁護士ドットコム

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女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズが経営破綻した問題で、物件所有者(オーナー)に対する融資に際して、スルガ銀行の複数の行員が審査書類の改ざんを認識していたと指摘されている。スルガ銀行が6月28日に静岡県沼津市で開いた定時株主総会では、この問題に関連する質問が相次ぎ、怒号が飛び交う展開となった。


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弁護士ドットコムニュースでは、非公開で行われた株主総会の音声データを関係者から入手。3時間超に及んだ株主総会の中から、株主とスルガ銀行との主な質疑応答の様子を紹介する。


●スルガ銀行「深くお詫び申し上げます」

「まずは謝れ」。一部の株主が、経営陣に対してこう求めると、議長の米山明広社長は「不規則発言はお辞めください。まず、シェアハウス関連融資等の問題につき、多大なご迷惑とご心配をおかけしていることを深く重く受け止め、深くお詫び申し上げます」と謝罪した。


直後、スルガ銀行側が提出している議案について、一括審議ではなく、個別審議を求める動議が提出された。説明に立ったのは、株主で被害弁護団の副団長を務める紀藤正樹弁護士。


「それぞれの報告事項につき、個別に質疑をやらせてもらいたい。一括審議自体はそもそも進行をスムーズにするための会社側の進行方法そのものだ。シェアハウス投資などの影響で株価が暴落していることを考えれば、取締役の選任に関して重大な疑義があることは明らかだ」


スルガ銀行の株価は2018年1月に2500円台だったのが、下落傾向が続き、直近では900円台で推移している。これに対し、米山社長は「ただいま議案の審議方法について動議が提出された。私としては動議に反対であります。一括審議で御賛成いただける株主様、拍手をお願いします」。会場からの拍手を受け、米山社長は動議が否決されたと宣言した。


●「岡野会長、公の場で謝罪をしていない」

質疑応答の株主による質問は、米山社長により、1人あたり2問までと制限された。


まず質問したのは、被害弁護団団長の河合弘之弁護士。河合弁護士は、被害弁護団が調査したところ、すでに59件のうち57件で、預金通帳や源泉徴収票の書類の偽造が確認されたと指摘。「12万円が2012万円に、30万円が6030万円にという途方も無い増額がされていることがわかっている。これは組織的に行われていたということだ」と述べた。


その上で、「通帳等の偽造という犯罪行為がないと成り立たない融資。公序良俗違反の金銭消費貸借だ。ついに私たちの仲間から自殺者が出た。この事件は深刻だ。その最大の責任者は岡野会長だ。岡野さんは公開の場で謝罪をしていない。岡野さんは記者会見できちんと謝罪すべきだ。代物弁済による解決しかない」と求めた。


米山社長は「債務者によって状況が違うので、真摯に膝を突き合わせて社員が議論していきたい」。被害弁護団がかねてから求めている、不動産をスルガ銀行が引き取り、代わりに借金をゼロにする代物弁済や一律の債権放棄については「応じられない」と答えた。


●代物弁済には応じないが、金利引き下げなどで対応

また、河合弁護士は、問題の融資があったとされるスルガ銀行横浜東口支店の支店長が既に退職していることに言及し、「スルガ銀行の隠蔽体質は深刻だ。金融庁の怒りも買っている」とも指摘した。


専務で経営企画担当の白井稔彦氏は「東口の支店長は重要な人物だと認識していてヒアリングには協力させていた。ただ本人から退職をしたいという話があった。本人から退職届をもらうと、労務上の観点から受けざるを得ない。その代わり、今後も協力するという言質をとっている」と答えた。


会長の岡野光喜氏は「債務者の方々お一人お一人については、置かれた個々の状況に応じて貸し出し金利の引き下げや元金の相当期間の据え置きなどの対応をさせていただく。また状況に応じてADRの活用なども含めて、金融機関としてあらゆる選択肢について検討する」と述べた。


質疑応答では、再三にわたって株主から岡野会長の認識を問う質問があった。ただ、多くを米山社長や担当幹部が答えているとして、米山社長の議事進行への不満が膨らみ、「議長不信任動議」も株主から出された。否決されたが、怒号は収まらない状況が続き、「議事進行の妨げになる」(米山社長)との理由で退場を命じられた株主もいた。


●「営業部門の優位、否定できず」

スマートデイズの問題について、いつ把握したのかという点についても質問があった。


白井専務は「我々としては執行会議、経営会議、取締役会という三つの会議体でリスク管理をしているが、昨年の秋口に、シェアハウス経営が行き詰まっているという認識をした。そこでメンバーを組成したが、なかなか業者からは状況がつかめなかった。2月になり、スマートデイズの関係のことについていろいろ情報がわかってきた」と答えた。


スルガ銀行では、営業部門が審査部門に対して立場が強く、それが問題ある融資を拡大させた一因ではないかと言われている。


この点について、常務で営業本部長の柳沢昇昭氏はこう答えた。「意見が対立する場面において、これまで営業部門が優位に立っていたというのは否定ができない。しかしながら営業、審査それぞれの言い分がある中で、絶対的に融資してはいけないという案件まで承認して融資していたわけではないということはご理解いただきたい」。


●議案は原案どおり可決も、最後まで反対の声やまず

また、シェアハウス投資の被害者とは違う立場から、スルガ銀行を叱咤激励する声も出された。祖父の代からスルガ銀行と取引をしてきたという株主は「私は社員でもサクラでもありません。誠意をもって対応し、早く株価が上がる努力を経営陣にお願いしたい」。


別の株主は「スルガ銀行がつぶれたら全く意味がない。やはりここはスルガ銀行に期待すべき。株主とスルガ銀行が喧嘩しても、何もいいことはない。やはり手打ちするのが一番いい」と話した。


米山社長は「表面的な反省ではいけないと思っている。ちゃんと深く。深いところで何があったのか。最高益を連発するのが義務だったというのは理由にならない」。岡野会長は「第三者委員会の調査を受け、金融庁の検査も受けている。二つの検査の結果を踏まえて経営責任を厳しくしたい」と述べた。


結果的に、スルガ銀行が提出した取締役と監査役の選任議案は原案どおり可決された。だが、反対する株主からの「動議だ」「動議が出ている」などの声は最後までやまなかった。


●岡野氏、米山氏に高額報酬

一方、スルガ銀行は株主総会の翌日である6月29日、有価証券報告書を関東財務局長に提出した。


それによると、2018年3月期の報酬は、岡野会長が1億9700万円、米山社長が1億6800万円。元副社長の岡野喜之助氏(2016年7月に死去)には退職慰労金として5億6500万円が支払われた。


(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama


(弁護士ドットコムニュース)