NSXがワンツーを奪ったスコール後の予選と打って変わって、レクサス5台の上位争いとなった決勝レース。ウエイトハンデが比較的軽めで、このタイを得意としているレクサス+ブリヂストンがドライコンディションで本来のパフォーマンスを見せたレースだった。
序盤はDENSO KOBELCO SARD LC500のヘイキ・コバライネンがトップを奪う活躍を見せ、WAKO'S 4CR LC500のフェリックス・ローゼンクヴィストは11番手グリッドから9台のマシンをオーバーテイクして見せ場を作ったが、最大の見せ場はやはり、終盤のDENSO小林可夢偉とau TOM’S LC500関口雄飛のバトルだった。
レース終盤にファステストタイムをマークする勢いで2番手に上がり、トップのDENSO可夢偉を追うau関口。関口は1分24秒9~1分25秒前半のラップタイムをマークし、トップの可夢偉は1分25秒後半のラップタイム。
可夢偉はこのタイは初めてのレースながら、GT300を上手く間に挟み、関口の追撃を退ける。スーパーフォーミュラでも見せる、後ろに目がついたように、相手の動きを先読みする可夢偉のブロックの巧さはスーパーGTでも健在だ。
一方の関口も、2016年のこのタイでポール・トゥ・ウインを飾ったサーキット。オーバーテイクの巧さと思い切りのいいアグレッシブな飛び込みは、GT500クラスでも随一。まさに、守りと攻めのスペシャリスト同士のバトルがついにスーパーGTで実現したわけだが、しかし、結果はご存知のようにau関口車がまさかのガス欠。
関口はファイナルラップでコースサイドにマシンを止めて、クルマを降り、地面を向いたまましゃがみ込む。今、日本でもっとも見たいバトルの組み合わせのひとつが幻となり、未消化のまま終わってしまった。
ガス欠は、チームにとっても予想外だった。au TOM’S LC500の東條力エンジニアが答える。
「全然、燃料を攻めたわけではなかった。チームとしてはピットストップで予定していた給油量を入れて、きちんと燃料が入っていたのでまったく気にしていなかった。最後の2~3周になってガス欠のアラームが付いて気づきました。ピットインして給油することも考えましたが、あの状況だったのでそのまま走りました。あと半周分、足りなかった」と東條エンジニア。
国内有数のトップチームであるトムスにしては珍しいアクシデント。予定どおりの給油をしながらのガス欠の理由は、なんとも関口らしい理由からだそうだ。
「気温が予想より暑くなったなどがありますが、一番の理由は(関口雄飛が)速すぎたこと。あのスピードは速すぎ(苦笑)。それで燃費が悪いのは仕方ない」(東條エンジニア)。
レース終盤の関口の最速タイムはファステストをマークした1分24秒977。その前後も1分25秒台前半のタイムをマークしており、レース前のウォームアップのタイムを見ると、1分25秒後半から1分26秒台前半が想定レースペースだったと考えられる。つまり、コンマ5秒以上、関口の想定外のレースペースが結果的に燃費を悪化させてしまったのだ。
「もし燃費をギリギリに攻めていたなら、燃費を気にして走っていたけどね。しょうがない」と東條エンジニア。結果的に、あと1秒、あと1リットル、あと1周弱の燃料があれば、DENSO可夢偉とのトップバトルはどうなっていたか……。
その関口はピットに戻ると足早にサーキットを出て空港へ向かったため、メディアにコメントを残すことはなかった。東條エンジニアにピットに戻ってきた関口の様子を聞いた。
「戻って来て普通に話はしましたが、すごく悔しそうだった。『ごめん』と言うしかなかった」
おそらく予選が普通にドライで行われていたら、au TOM’S LC500は間違いなく予選上位を獲得し、決勝でも序盤から上位でレースを進めることができただろう。クルマが速くても、ドライバーが上手くても、なかなかすんなりと結果を出すことが難しいのがこのスーパーGTの難しさでもある。その一方、スコールによって予選の勢力図が乱れたおかげで、決勝では緊張感の高いバトルが演出されることになった。
今季からスーパーGTにフル参戦を果たした可夢偉に、今季、レクサスのエース格のチームであるトムスに移籍した関口。ファンをワクワクさせる可夢偉vs関口の戦いの続きはまた、次回以降への持ち越しとして楽しみにしたい。