6月30日に行われたスーパーGT第4戦タイの公式予選。スーパーGT500クラスのランキングトップとしてもっとも重いハンデを背負って臨みながら予選5番手を獲得したRAYBRIG NSX-GT。ランキングを争うライバルより前で決勝レースに臨むことになるが、ドライバーの山本尚貴とジェンソン・バトンは警戒を緩めてはいない。
■状況を一変させた“恵みの雨”。「鉄則は1周でも早くタイヤを換えてどれだけ温められるか」
ランキングトップとして64kg分のハンディキャップ(47kg分のウエイトハンデと燃料流量リストリクター径の調整91.8kg/h)を背負って臨んだRAYBRIG NSX。30日(土)午前にドライコンディションで行われた公式練習ではクラス14番手タイムにとどまり、そのハンデの厳しさを感じさせた。
しかし、午後の予選開始直前、サーキットをスコールが襲ったことで状況が一転。ウエットコンディションとなったことでウエイトハンデの足かせがドライに比べて軽くなった。
予選Q1のアタックを担当した山本はウエットタイヤでコースインしたものの「早めにドライへ換えたほうがいい」という判断のもと、早々にドライタイヤへ交換。最終的にQ1を4番手タイムで通過している。
「ブレーキングゾーンがドライになっている印象だったので、(ドライに)換えてもいいかなと思ってましたし、いずれドライのほうがタイムを上回るだろうとも思ってました」と山本。
「なによりこういうコンディションでの鉄則は1周でも早くタイヤをドライに換えてどれだけ(タイヤを)温められるか。それが鍵になることは充分理解していました」
「アウトラップに出たときは早すぎたかなと思いましたけど、判断は間違ってなかったですね」
「最後の1周はまるまるEpson Modulo NSX-GTに引っかかってしまいましたし、S字では(目の前でEpson NSXが)スピンしました。それがなければというタラレバはありますけど、しっかりとQ2につなげることができたので、自分の役割は果たせたと思います」
山本からステアリングを引き継いだジェンソン・バトンは、今日がチャン・インターナショナル・サーキット初走行。公式練習ではおよそ30周に渡り周回を重ねているが、すでに数年に渡りチャンでレースをしているライバルと比較すれば圧倒的に経験が少ない状態での予選アタックとなった。
バトンは「Q2はターン3以外は路面も乾いていて、事前の走行時間が限られていたことを考えればマシンには好感触を得ていたし、セットアップの変更も機能していた」とセッションをふり返る。
「ここはミスをしてもコースオフするだけだから学習しやすい場所でもある。たとえばSUGOではコースオフは即クラッシュにつながってしまうから。そういう意味では事前に充分走り込めなくても走りやすい場所だ」
「燃料流量リストリクターを課せられている状態で予選5番手という結果は喜ぶべきだと思う。特に同じくリストリクターを課されているチームは12番手(KeePer TOM'S LC500)、15番手(MOTUL AUTECH GT-R)だからね」
■山本はKEIHIN NSX-GT、ARTA NSX-GTも警戒
選手権を争う直近のライバルが後方に沈んだことで、チャンピオンシップの面で有利な位置から第4戦決勝に臨むRAYBRIG NSXだが、後方に沈んだMOTUL GT-RとKeePer LC500はどちらも巧みなレース戦略を武器としているチームでもある。
バトンは「チャンピオンシップを争う2チームが下位にいるといっても油断はできない。前戦(第3戦鈴鹿)で23号車は最後尾から6位まで上がってきたからね」とコメント。
「とにかく周りの状況はすべて忘れて、自分たちのレースをするだけだ」
「マシンにはいい感触を掴めている。明日は気温が上がりそうで安定したラップを刻むのは難しいかもしれないけど、ナオキも速いしマシンには自信がある。過度な期待はしないで、ベストを尽くすだけさ」
また山本はバトンの意見に同調しながらも、「それに(現時点で)ポイントは離れていても、今回優勝したり表彰台に上がれば僕たちのポイントに近づいてくるチームもいる」と、KEIHIN NSX-GTやARTA NSX-GTへの警戒感を示している。
「8号車(ARTA NSX-GT)は調子が良さそうなので、僕らの前に行って表彰台に絡むようなレースをすれば、次の富士では僕たちと同じような状況に持ち込めるです」
「GTは逃げ切る、勝ち切ることが難しいレースなので、最終戦までチャンピオンを争える位置にいることが重要です。明日表彰台に上がれれば一番いいですけど、欲張ってポイントを取りこぼすことだけは避けたいので、そこはちゃんと頭を使いながら戦っていきたいと思います」