レッドブルがメインスポンサーのトロロッソ・ホンダ。レッドブルリンクで行われるオーストリアGPは、イタリアに本拠地があるチームだけでなく、日本企業のホンダにとっても、第二のホームグランプリとなる。ピエール・ガスリーはジュニアカテゴリー時代に何度か表彰台に上がったことがある相性のいいサーキット。ブレンドン・ハートレーは、LMP2でレース経験がある。
そのレッドブルリンクに、トロロッソはフロントウイングとフロアを新しくした空力パッケージを投入した。
初日、この新空力パッケージを試したのはハートレーだった。チームは2台分のパーツを持ち込んでいるが、「旧仕様と新仕様を短時間で比較するため、僕は旧仕様のままで走行するプログラムを組んでいた」とガスリーは、土曜日以降は自分も使用できる可能性を示唆していた。
そのガスリーだが、フリー走行2回目でヒヤっとする場面があった。セッションのアタック中に最終コーナーでコースアウトし、赤旗中断となったのだ。
「少し前から左フロントにバイブレーションがあった」というガスリーは、ウルトラソフトの新品タイヤを装着してタイムアタック。
「最終コーナー手前でアタックを始めようとスローダウンしていた2台のフォース・インディアに出くわし、ダウンフォースを失って縁石に乗った瞬間にフロントがまったく言うことを聞かなくなった」というガスリーのマシンは、左フロントサーキットが折れ、コースアウト。グラベルにはまってストップした。
しかし、セッション開始から53分が経過したところでマシンがガレージに戻ってくると、メカニックたちが一斉に修復作業を開始。わずか10分でガスリーをコースに送り返した。
走行再開後のガスリーは残っていたロングランメニューをこなしたため、ウルトラソフトでの一発のアタックは完了しないままセッションは終了。それにもかかわらず、ベストタイムは9番手と、悪くない。ただし、前戦フランスGPでは金曜日の速さが土曜日に継続できなかったことあり、「今夜はチームとデータを確認して、土曜日にはもっとパフォーマンスを上げるつもり」とガスリーは慎重だ。
ただし、「ガスリーのマシンに搭載されたパワーユニットも前戦フランスGP同様、金曜日用の旧仕様のPUだったため、金曜日の夜にフランスGPの決勝で使用した新仕様のPUに載せ替える予定」(田辺豊治ホンダF1テクニカルディレクター)だ。
一方、チームメイトのハートレーは「マシンバランスがあまり満足できなかった」と、初日17番手に沈んだ。
チーフレースエンジニアのジョナサン・エドルズによれば、「フリー走行1回目で風洞やCFDの結果と比較できるよう、さまざまな空力構成のオプションを試して、データ取りに時間を費やしていた」と語っているように、フリー走行2回目に向けたセットアップが十分でなかった可能性が考えられる。
「今晩、改善できると思っているから、土曜日はもう少しコンペティティブな走りができると思う」とハートレーはセッション終了後に語っている。
1周が4.318kmと短く、コーナー数が少ないレッドブルリンク。初日の結果を見ると、7番手のロマン・グロージャンから19番手のフェルナンド・アロンソまで1秒以内にひしめき合っている。
初日9番手だったガスリーにも、17番手だったハートレーにも、Q3に進出するチャンスもあれば、Q1で敗退する可能性もあるだけに、わずかなミスも許されない。