2018年06月30日 09:52 弁護士ドットコム
専業主婦なのに家事をしない。そんな理由で、夫が妻に生活費を渡さないことは許されるのかーー。
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相談者は、今まですべての家事を担ってきた専業主婦。ところが、骨折や病気が原因で家事ができなくなりました。すると、夫は家事ができなくなった妻に怒り、勝手に口座を変えて、生活費として使ってきた年金を妻に使わせないようにしてしまいました。
この夫のように「家事をしないから扶養しない」という言い分は、法的に許されるのでしょうか。また、どのような請求を行えば、妻は今までのように夫の年金で生活することができるのでしょうか。宮地紘子弁護士に聞きました。
(弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた投稿をもとに再構成しました)
「結論から申し上げると、家事ができなくなった専業主婦であっても夫には妻を扶養する義務はあります」
宮地弁護士はそう指摘します。法的にはどのような義務があるのでしょうか。
「夫婦間の扶助義務は、主として負担能力がある義務者からの支払いを想定しています。家事などの協力義務とは必ずしもリンクはしません。
今回のように家事が出来なくなった理由がケガや病気などやむを得ない場合には、妻側の協力義務違反に法的な責任はありません。そのため、夫側の扶養義務が免除されることはないでしょう」
これから女性は、どんな対応をするべきなのでしょうか。
「正当な理由なく生活費を渡さないことは経済的DVに該当する可能性もあります。今回のような冷たい夫とは別居することも検討された方が今後の人生にとって良いかもしれません。
離婚が成立するまでの間、妻は夫に対して、婚姻費用(民法760条)の請求をすることが考えられます。よく『離婚のために別居をしたいが、別居中の生活費はもらえるのでしょうか』という相談も寄せられます。この場合、夫に対して、別居中の生活費として婚姻費用を請求しますが、婚姻費用の請求は同居中でも可能です。
ただ、夫に対して、同居をしながら婚姻費用の請求をすることは安全面のリスクや精神的負担も大きいです。そのため、別居後に婚姻費用を請求することが現実的には多いように思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
宮地 紘子(みやち・ひろこ)弁護士
名古屋市出身。勤務弁護士を経て独立後は離婚や相続をメインとする家事事件や不貞慰謝料などの男女問題を中心とした相談を数多く担当。私生活では1児の母。「弁護士」として「人」として適格なアドバイスを心掛け日々奮闘中。
事務所名:八事総合法律事務所
事務所URL:http://www.yagotosogo.com/