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嵐 二宮和也、高いMCスキルはどう培われた? 『ニノさん』過去企画から考える

2018年06月29日 07:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 嵐の二宮和也がMCを務めるバラエティ番組『ニノさん』(日本テレビ系)。6月30日は「二宮和也の赤面!自分クイズ ~人気芸能人の過去をニノがほじくり倒しましたSP~」と題して、スペシャル番組が放送される。『ニノさん』という番組には、一つの特徴がある。それは、5人のディレクターが週替りで企画を担当しているということだ。


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 ゲストと共にゲームを繰り広げる回もあれば、芸能界の先輩がたどり着いた人生哲学に耳を傾ける回、街行く人の生の声をもとに赤裸々なトークを繰り広げる回……と、毎回番組の装いが異なるのだ。次はどんなことで楽しませてくれるのだろう、と常に新鮮な気持ちで見ることができる実験的なスタイルは、まさに番組タイトル通り“二宮=ニノさん”の魅力とリンクしているようだ。『ニノさん』がひとつの企画にしばられないのは、二宮の持つ多面的な魅力を世の中に広めたいという制作側の愛情かもしれない。


 番組がスタートしたのは2013年。これまでも「神回」と呼ばれる企画が、多数生まれている。体を張ったゲームバトルを繰り広げた“会員制ゲームラウンジ『クラブ・ド・ニノサン』”もそのひとつ。二宮が抱くアイドルとしてのプライドが光った企画だった。「嵐だからね」と、すぐさま振り付けをマスターした姿はさすがの一言。勝利を掴んだときのうれしそうな笑顔には、ゲーム好きで負けず嫌いな無邪気さもチラ見え。かつて二宮は「今まで続けてきたのってゲームと嵐くらいなんですよ」と話していた。二宮の中でブレることのない2つの“好き”をテーマにした企画からは、彼のピュアな魅力が引き出される。


 一方、二宮は『NHK紅白歌合戦』を難なく仕切った高いMCスキルを誇る。ネット上でも共感コメントが殺到した“二宮和也と女が嫌いな女たち”も見応えのある企画だ。街頭インタビューとスタジオにいるゲストの女性たちによって、次々と“嫌われる女あるある”が飛び出す。だが、日ごろの鬱憤を晴らす場も、ヒートアップしてしまえば単なる悪口大会になってしまう。そこで、二宮が前のめりな女性ゲストたちに向かって「喋っていいって言ってないから!」などと一蹴。嫌う女側にも適度なイジりを入れていくことで、ネガティブな空気が大きな流れになる前に分散していく。吹きこぼれる前に二宮がさし水をする。その絶妙な火加減への信頼が、出演者側にもリラックスして話せる雰囲気を作り、見ている側にも安心感を与えている。


 先の振り付けを覚えるときにも二宮は、モニター越しに全体を確認していた。トークショーのバランスを保つにもこの俯瞰する力が不可欠のように見える。こうしたスタイルは、どこで培われたのだろうか。そんな二宮の根源にも迫る回があった。“嫌われ者に学ぶ ピカレスク人物伝”では、いかりや長介から「お前とだったらどんな結果であれ、一緒に死んでやるよっていう人を絶対ひとりは見つけなさい」と教わったことを明かす。それから二宮は新しい作品をやるたびに「この人一緒に死んでくれるのかな」と考えながら「死んでくれるんだったら全部出して、それ以降ドラマは出ない、映画は出ない、これで一緒に死ぬ」という覚悟を持って取り組んでいると語る。ちなみに、これまで二宮に対して「一緒に死のう」と言ったのは蜷川(幸雄)だった、とも。ザ・ドリフターズのリーダーを務めたいかりや、数々の作品で監督を務めた蜷川のイズムが、二宮の中に生き続けているのだ。多くの苦労と成功を手にした大先輩の言葉を反芻しているからこそ、二宮は常に冷静かつ真摯的な態度が崩れないのだろう。


 人生の転機から生まれた哲学を学ぶ“私は今、○○です!”の企画でも、芸能界の先輩たちに対する二宮の眼差しが熱いことに気づく。MCとして進行を務めながらもゲストの生き様を尊敬し、何かを吸収していこうとする謙虚な姿に、人としての器の広がりを感じる。二宮の人間性が豊かになるほど、この『ニノさん』という番組は面白くなっていくのだろう。6月30日の放送回は、二宮の過去も振り返るようだ。きっと彼の成長ぶりに驚かされ、これからもその進化を見届けていきたいという気持ちに浸れるのではないだろうか。


(文=佐藤結衣)