国立教育政策研究所は6月27日、昨年度の全国学力調査を受けた子どもの保護者を対象にした調査結果を発表した。2013年の前回調査と同様、保護者の収入や学歴が高い家庭ほど正答率が高くなる傾向が見られた。
調査は、昨年4月の全国学力調査を受けた公立学校の子どもの保護者のうち、約12万2000人が回答した。調査では、両親の学歴と収入から家庭を「上位層」「やや上位層」「やや下位層」「下位層」の4階層に分け分析した。
家庭の階層が低くても、自制心や忍耐力を育むと成績を押し上げられる可能性
学力調査で実施したすべての科目(国語2種、算数・数学2種)で、上位層ほど正答率が高くなった。最も差が見られたのは、基礎知識を問う中3「数学A」。上位層の正答率は77.1%だったが、下位層では52.8%と、20ポイント以上の開きがあった。
また、今回の調査では新たに、階層が高いほど各教科の平均正答率のばらつきが小さいことも分かった。
ネットでは「そりゃそうだろうとしか」「今さら」といった声が多く、結局は生まれで学力が決まるのだという人も少なくない。しかし調査では、子供の非認知スキル向上を働きかけることで、階層に関わらず学力を上げられる可能性も見えてきた。
非認知スキルとは一般的に、自制心や意欲、忍耐力などを表す概念。調査では、児童生徒に聞いた「物事をやり遂げて嬉しかったことがある」など8項目への回答から変数を作成し、測定している。
家庭の階層が低いにも関わらず正答率が上位25%の児童生徒は、非認知スキルが高い傾向にあった。スキル向上には、保護者の「子供に最後までやり抜くことの大切さを伝えている」、「子供のよいところをほめるなどして自信を持たせるようにしている」などのふるまいが有効だと思われる。
ただ、調査を実施した研究グループによると、今回の分析では非認知スキルと学力の間にゆるやかな相関があることが確認できたにすぎないため、「この可能性がどの程度確かなのかはさらなる検討を必要とする」ともしている。
経済状況と学力の関係が強いのは大都市
都市規模別に見ると、家庭の経済状況と子どもの学力の関係が特に強いのは、大都市だった。大都市で年収300万円未満世帯の児童のうち、成績上位層に入る子どもの家庭では、成績中・下位層と比べ、
「子どもが決まった時間に起きるよう(起こすよう)にしている」
「子どもが小さい頃に絵本の読み聞かせをした」
「何のために勉強するかについて話している」
「保護者がテレビやインターネットで政治経済や社会問題に関するニュースを見る」
などの家庭が相対的に多かった。