2018年06月28日 12:12 弁護士ドットコム
気づけばもう、じめっとした蒸し暑さを感じる季節。なんだか仕事に対するモチベーションも上がらないのは、この季節のせいなのか、それとも、会社に対する不満のせいなのか。
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もしその原因が後者であるならば、“退職”そして“転職”というキーワードが頭の隅をよぎるかもしれない。そのときに、もうひとつの選択肢として“フリーランス”という道があることも思い出してほしい。
フリーランスとは、いわゆる「個人事業主」であり、「独立」や「起業」などと同じ場面で使われるイメージがあるが、法人(会社)として事業を行う場合とは税法上の取扱いが異なる。
まず、フリーランスになり、会社に属さないということは、図らずも少なからず「社会的信用」の面において少々弊害が生じる。
具体的にいうと、クレジットカードやローンなどの新規契約時に必要な「与信審査」をクリアするハードルが高くなってしまうことがあるという。
そこで会社員であるうちに、フリーランスとしての今後を見据えて次のような準備をしておくと安心だろう。
・業務用クレジットカードの発行
・オフィスの賃貸借契約
・車
・住宅のローン申し込み
ただし、クレジットカードや不動産の賃貸借契約においては、事業用としての利用ができないこともある。加えて、「会社員として安定した収入があること」だけが与信審査の条件ではないことはもちろん留意してもらいたい。
また、これまで会社に任せていた“納税”にまつわるあれこれを、自分で行わなければならない。
もっとも代表的な手続きは、毎年2月16日~3月15日に行う「確定申告」がある。
「確定申告」の手続きは、簡単にいうと会社が行なっていた「年末調整」に代わるものだが、必要書類に所得金額などを記入し提出することで、その内容に応じた「所得税」や「住民税」を納付することができる。
このほか、フリーランスとして事業を続けていけば、年間の事業所得が290万円以上になったときには「個人事業税」、前々年の事業売上高(消費税の課税売上高)が1000万円以上になれば「消費税」の納付義務が生じることもある。
きちんと収入を稼ぐこと以外にも、このようなお金の問題に直面することは必至だ。
さらに気になるのが「老後のお金」問題だろう。
一般的な会社員であれば退職時に退職金が支給されるし、老齢になれば厚生年金(掛け金は毎月の給料から天引きされている)が支給される。
ではフリーランスの場合はどうだろうか。
まず年金について、フリーランスになれば通常「国民年金」に加入するので、保険料をきちんと納めてさえすれば年金を受け取れる。
加えて、「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の制度を利用して資産運用すれば、老後の年金をさらに増やすこともできる。この制度は税制面でのメリットも多いので、将来の不安を少しでも減らしたいのであれば、会社員のうちから検討してもよいだろう。
次に、退職金については「小規模企業共済」に加入する方法がある。
「小規模企業共済」とは、その名のとおり小規模企業の経営者や個人事業主のための退職金制度であり、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しているものである。
月々1000円から始められることや、最大1.5%という高利率であること、税制面でも優遇されていること、などのメリットがあることが特徴だ。
以上のことから、年金・退職金は会社員と比べて必ずしも悪条件となるわけではないことがわかる。
このように、フリーランスならではのお金の問題はどうしてもつきまとう。
しかし、企業戦士にはない自由さがなによりの魅力に感じるのであれば、フリーランスとして新たなステージでの挑戦も考えてみてはいかがだろうか。
【監修】
屋 倫平(おく・りんぺい)税理士
2005年に屋税理士事務所を設立。会社設立や経理代行等、各種税理士業務に関するご相談は新宿の屋税理士事務所までお気軽にご相談ください。
事務所名 : 屋税理士事務所
事務所URL: https://okutax.com/
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