6月19日に発表されたホンダとレッドブルの2019年からのコラボレーション。レッドブルは今シーズンすでに2勝を挙げているトップチーム。一方、ホンダは4社あるパワーユニット・マニュファラクチャーの中で依然としてテールエンダーのままだ。しかし、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、ホンダを選択した理由を次のように語った。
「モントリオールで得られた情報をベースに、エンジニアリング主導で決断された。長い時間をかけて、慎重に分析と検討を重ねてきたが、いまはホンダとのパートナーシップ締結こそがチームを正しい方向に導くものだと確信している」
カナダGPに投入された新仕様のICE(内燃機関)の開発を指揮したのが、今年からHRD Sakura(栃木県さくら市にあるホンダのF1研究所)でパワーユニットの開発責任者を担当している浅木泰昭(本田技術研究所執行役員)だ。浅木はこの新しい仕様のパワーユニットの開発について、次のように語った。
「競争力がルノー以下という状況が続いており、このままではトロロッソに迷惑をかけることになる。そこに(ルノー)追いつこうという主旨で開発してきました。ただし、内燃機関は100年以上の歴史があるので、そんなに画期的なアイディアが次から次へと出てくるわけではないです」
「内燃機関の開発というのは燃焼とフリクション(摩擦)ですから、当然両方やってきましたが、今回の新スペックは燃焼が主になっています。ただし、燃焼効率を上げれば、回生量も減るので、トータルのバランスを見て、進化させてきたものです」
ホンダは、『スペック1』などというパワーユニットの呼称を今シーズンから公表していない。そのため、カナダGPに投入した新仕様がどれだけ進化したものなのかがわかりづらい。その点も浅木は次のように説明した。
「開幕戦の仕様がスペック1ですから、今回はスペック2です。年間3基しかペナルティなしで投入できる新しいパワーユニットはないので、当初は新しいパワーユニットを入れるタイミングでスペック2、スペック3を入れる予定でした。途中でエンジンがこわれたりして、予定外に新しいパワーユニットを投入していますが、今回がスペック2です。その途中(スペック1.5)はありません」
スペック2で燃焼系を改善してきたホンダのICE。だが、燃料はどうなっているのだろうか。
「今回は燃料のアップデートはないです。燃料はいくらアップデートしてもペナルティの対象にはならないので、エンジンを新しくするタイミングにこだわらず、いいものができて、耐久性が確立され次第、順次投入して行くつもりです」
レッドブルの技術陣が熟考の末にたどり着いた結論が、2019年からホンダPUを搭載することだった。もちろん、その背景にはホンダPUの開発責任者に、ホンダの第二期F1活動時代を知るベテランの浅木の存在があったことは言うまでもない。
「F1の頂点を極めるには、時間がかかるということです。第二期のときだって、まずF2をやって、F1に参戦してからもスピリットと組んだり、結果が出るまではずいぶんかかっています。一旦、休止して戻ってくると、皆さんは休止する前の延長線上の成績を期待します。ですが、実際にはゼロからのスタートになりますから、同じかそれ以上の時間がかかる。それで慌てると、むしろ遅くなるので、浮き足立たないように気をつけています」
その泰然自若の構えは、ホンダだけでなく、レッドブルの技術陣も一目置いている。