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「高プロ」採決反対訴え、過労死遺族らが集会「働き方改革は誰のための改革か」

2018年06月27日 22:12  弁護士ドットコム

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「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の法案からの削除を求め、過労死遺族や日本労働弁護団のメンバーらが6月27日夜、東京都のJR新橋駅前で「労働者を守る労働基準法が壊れてしまう」などと訴えた。


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高プロを含む、「働き方改革一括法案」をめぐっては、与党が6月28日の参院厚生労働委員会で採決し、翌29日の参院本会議での成立を目指している。


●「働き方改革は働く人のための改革ではなかったのですか」

法政大の上西充子教授は、「過労死が増える可能性は十分」と強調した。政府は「柔軟な働き方」が可能になるかのように説明するが、高プロ導入にあたり、労働者の裁量は要件になっていないからだ。


法案では、月(4週)4日の休みを与えれば良いとされており、48日連続で24時間働かせることも理論上は可能だ。もちろん、そんな働き方が常態化することは考えづらいが、過労死ラインが残業月100時間、2~6カ月平均80時間とされていることから考えれば、規制の撤廃はリスクといえる。


「政府として想定していないというだけで悪用はできる。働き方改革は、長時間労働の是正、働く人のための改革ではなかったのですか。実は違ったんですね」(上西教授)



●安倍首相「経団連から導入すべきとの意見」 労働者の不安拭えず

なぜ、悪用を気にするかと言えば、制度が労働者のニーズから出てきたものではないからだ。国会審議の中で、政府が聞き取りをした労働者はわずか12人、内9人は今年1~2月に行われたことが明らかになっている。


加えて、安倍晋三首相は6月25日の参院予算委で、「適用を望む企業や従業員が多いから導入するというものではない」と発言。続けて、「経団連会長等の経営団体の代表からは導入すべきとのご意見をいただいている」と述べている。


その経団連といえば、年収400万円以上のホワイトカラーについて残業代は不要とする制度を望んできた経緯がある。


適用対象について、法案では「平均給与額の3倍を相当程度上回る」とされている。しかし、労働者派遣法などがなし崩し的に拡大してきたことを考えると、対象拡大について、労働者側の不信感は拭えない。


「柔軟に働ける制度ではなく、柔軟に働かせられる制度だ」と、上西教授は強調する。


●「遺族の声は聞かず、12人の声で法案をつくっている」

過労死遺族も声をあげた。



2004年に夫を亡くした小林康子さんは、「命と涙と汗がにじんだ、労働者保護の歴史にどうして穴をあけないといけないのですか」と発言。「自分の命は自分で守らないといけなくなる」として、道ゆく労働者に残業時間をちゃんと記録してほしいと呼びかけた。


2000年に夫を亡くした渡辺しのぶさんは、安倍首相が過労死遺族との面会を拒み、遺族からの手紙も直接読んでいないことを指して、「遺族の声は聞かず、12人の声を聞いて法案をつくっている」と無念がった。


2013年に過労死したNHK記者・佐戸未和さんの母・恵美子さんは、導入企業に労災認定に必要な労働時間の把握義務がないことから「死人が増えても、過労死という言葉すらなくなる」「なんで高プロを急ぐ必要があるんですか」と語気を強めた。


(弁護士ドットコムニュース)