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小澤雄太×森田桐矢×八神蓮が語る、古典エンタテイメント舞台『暁の帝~壬申の乱編~』への意気込み

2018年06月26日 14:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 劇団EXILEの小澤雄太が主演を務める舞台『暁の帝~壬申の乱編~』が、6月27日から7月1日まで東京・シアターグリーン BIG TREE THEATERで上演される。同作は、地下空港の伊藤靖朗が脚本・演出を手がける、壬申の乱をモチーフとした“古典エンタテイメント”。飛鳥時代の倭国を舞台に、大海人皇子やその兄である中大兄皇子らの人間関係とともに、日本史上最大のクーデターと言われる壬申の乱を描く。


参考:志尊淳×浅香航大×小越勇輝×堀井新太が語る、『ドルメンX』が描く“芸能界のリアル”


 今回、リアルサウンド映画部では、大海人皇子役の小澤雄太、大友皇子役の森田桐矢、中大兄皇子役の八神蓮による鼎談を行い、本作にかける意気込みや、役者同士ならではの仕事論について語り合ってもらった。(編集部)


■小澤「勉強会を事前にするのは初めてでした」


――3人がそれぞれ最初に会ったのはどのタイミングでしたか?


小澤:蓮くんと、がっつり共演するのは初めてです。6年か7年前に舞台で一瞬、一緒になって以来かな。その時は「一緒に写真撮ろう!」と言って写真を撮ったくらいで。


八神:その舞台から共演までが長かったですね。


森田:僕の場合は先日、八神さんがミュージカル『テニスの王子様』の15周年記念コンサート『Dream Live 2018』にゲストでいらっしゃっていたので、お名前を確認して、これは挨拶をしなければいけないと思って。


八神:「この舞台でご一緒するんです」と挨拶してくれたんだよね。


森田:小澤さんに会うのは本作での取材が初めてだったんですけど、『ウルトラマン』が好きなので、一方的に存じ上げていました。


小澤:ほんとに!? 嬉しいですね。そう、ウルトラマン(『ウルトラマンジード』伊賀栗レイト/ウルトラマンゼロ役) として実は地球守ってたの(笑)。森田君はいくつなの?


森田:21です。


八神:そっかー、若い感じするもん。


小澤:僕らと干支一緒かもよ。


森田:丑年です。


小澤:わ、やっぱり一緒だ!


――舞台を前に、古代日本史の勉強会にも参加したそうですね。


小澤:はい。来ていたのはみんな頭の良い方ばかりだったのが印象的でした。記憶の勉強をしている方がいたり。


八神:大学病院で働くお医者さんとかね。僕らが普通に生活してたら一緒になることのない方達がその勉強会を受講していて。難しい話も多かったですが、皆さんの理解が深いのに加えて、先生方の教え方も上手だから理解できるんですよ。


小澤:わかりやすかったよね。


森田:僕は2回目の勉強会を受講したのですが、そのときは万葉集の話を教えていただきました。日本人は、特に言葉に対する重みを強く感じるということを説明されていて。例えば、「明日雨が降る」と誰かが言ったとして、本当に次の日、雨が降ったら、その人の言葉のせいだと考える性質が強いと。だから、不吉なことやリスクの可能性があることを口にすること自体が忌避される傾向にあって、「縁起でもない」と考えるのだと仰っていました。


小澤:僕たちが行ったときは、イザナギとイザナミの話もありましたね。


八神:イザナミは男神なんだけど、アマテラス、ツクヨミ、スサノオという3人の子供を生んだというお話でした。


小澤:そういう勉強会を事前にするのは初めてだったんですよ。普段であれば、台本をもらって、そこに書かれた言葉については自分で調べて勉強していくのですが、今回はみんなで一緒に勉強する機会を設けていただいて、貴重な体験をすることができました。


八神:しかも、舞台に出てくる壬申の乱を直接学ぶのではなくて、もっと広いテーマで古代日本氏に触れることで、当時の世界への理解を深めるというアプローチも珍しいものでした。ほかにも、台本をもらう前に参考資料として、『天上の虹 -持統天皇物語-』(里中満智子著)という漫画も読ませていただいたり。


小澤:この漫画には、舞台で演じる時代のことが凝縮して書かれていて、とても参考になりました。


■森田「先入観なく自由に感じてもらえる作品」


――今回は、小澤さんが大海人皇子を、八神さんが中大兄皇子を、そして森田さんが大友皇子を演じています。歴史上の文献などを見ると、けっこう憎しみあう関係性なのかなと思いましたが。


八神:難しい関係性ですよね。


小澤:人間の愛の物語にはなると思います。人が誰かを愛するが故に起こる悲劇とか、それを乗り越えていくことを描く話になるのかなと。


八神:でも、今の時代でいう愛とは、感じ方や考え方が違う部分もあるかもね。


小澤:愛の形や捉え方には違いがありますね。物語の全体像を言うと、倭国が、当時は当たり前じゃなかったことを受け入れることによって、日本という国が形成されていくお話です。


八神:当時のことを知ると、よく日本は滅ぼされなかったなと思いますね。その時に色々な人々の選択があったからこそ、今があるんだなと感じるところもありました。


森田:当時は積極的に唐の文化を取り入れようともしていたんですけれど、それに対する衝突もあって、色々なことが起こるきっかけにもなりました。本作では、その辺りの流れも描かれています。


――3人の関係性で言うと、八神さんと森田さんが親子で、小澤さんと八神さんが兄弟なんですよね。


八神:でも、やっぱりその時代のことって詳しくはわからないので、正直なところ名前くらいしか情報がない状況で、人物像についてはほとんど不明なんです。


森田:僕もそんな感じです。


小澤:ただ、あまり知らない人物だからこそ、自分たちでキャラクターを作っていけるのかなと。


八神:そうですね。台本に書かれていることを読んで、何を伝えたいのかを知って、そこからキャラクターを作っていく感じになりそうです。


小澤:例えば、徳川家康とか坂本龍馬だと、ある程度のイメージがあるけれど、大海人皇子と言っても、ほとんど何のイメージもない。そこを自分自身と役とのバランスで作っていけるのが、楽しいところかもしれないです。


森田:壬申の乱は日本の歴史の中でも特に大きな内乱でしたが、物語の題材になることがあまりなかったこともあり、それほど知られていません。そういう意味では、先入観なく自由に感じてもらえる作品なのかなと。


■八神「何が正解かなんて、視点によって変わる」


――森田さんは、今回の演出家の伊藤靖朗さんとはすでにご一緒されているんですよね?


森田:去年の秋に『ポセイドンの牙』という舞台でご一緒しました。伊藤さんの舞台は、「これが今の日本だ、君たちはどう考える?」と問いかけるような、メッセージ性の強さに特徴があると感じています。


小澤:今回の舞台もメッセージ性がありますね。森田くん、もう経験してるなら余裕だね(笑)。僕らは初めてだから、これから頑張ろうという感じなのに。


森田:いえいえ余裕じゃないです(笑)。伊藤さんは、まずは自分で調べて理解した上で、「自分はこう思う」という意見をどんどん出してほしい感じでしたので、演じる側は「知らない」では済まされないということを実感しました。去年の舞台に引き続き、また今回もご一緒させていただけると聞いて、良い意味で気持ちが引き締まりました。今度こそ「森田なら安心だ」と思っていただけるよう頑張りたいと思います。先日、伊藤さんともお話する機会がありまして、そのときは漫画を読んだうえで、いろんなことを教えてもらうという感じでした。


小澤:僕らも伊藤さんと話す機会がありましたが、そのときは1時間半くらい僕が1人で話してしまいました(笑)。漫画を読んでこう思いましたとか、伊藤さんの解釈を教えてくださいとか、最初からかなり前のめりな感じで。


八神:小澤さんが前のめり過ぎて、どこでフォローしようかと考えるほどでした(笑)。僕は本を読んだ感想を述べて、中大兄皇子のイメージを聞いて、自分の中のイメージとすり合わせた感じですね。今回は、今の時点では台本をまだ読んでいないけれど、悪役ともとれるキャラクターになるかもしれません。でも、何が正解かなんて、視点によって変わるものだし、誰もが日本を良くしようと考えて行動していたという部分は理解して演じたいなと。


小澤:確かに、この話は見方によっては僕の演じる大海人皇子と中大兄皇子、どちらも主人公に見える話なんだよね。今のヒーローものもそうだけど、最近は悪役に見える人物の中にも正義があるという風に描かれる作品が多いです。そういう話は、実は普遍的なものなのかもしれません。


小澤「土台の部分からカンパニーを押し上げていきたい」


――現時点ではまだ稽古前とのことですが、数回しか会ったことがないとは思えないほどチームワークができている印象です。


八神:それはもう座長が素晴らしいから。


小澤:勘弁してくださいよ! でも、この仕事は、今日は6歳の子のお父さんを演じたかと思ったら、次の舞台では80歳のおじいちゃんとベンチでしゃべっていたりもするんですよね。だから、普通に勤めてる方より、新たに出会う方とすぐに力を合わせる瞬発力みたいなものは鍛えられるかもしれません。本当に毎日、新たな人と出会うので。


八神:上司と部下みたいな感じの出会いでもないしね。偉い人から一方的に話しかけられるとかでもないし。


――舞台に出る上で、何か心がけていることはありますか?


小澤:僕はもうこのまんまで、どこにいっても変わらないですね。みんなハッピーにいこうぜって感じで。


八神:僕はけっこうセリフを早く入れていくかもしれないです。けっこうすぐ覚えられる方だと思います。


小澤:すごいね。僕、本番の直前まで台本を持ってることある……。


八神:あんまり台本を持ってる記憶がないかも。まあ、適当なところは自分にもあるのかもしれないし、セリフの量にもよるけどね。ただ、早く覚えた方が楽だなとは思っていて。台本を読んでいると両手が使えない状態になるから。


森田:台本見ていると、文字を追ってしまうというときもありますし。


小澤:“役者あるある”だね。


八神:ヤバイ、自分でハードル上げてしまったかも(笑)。でも、今の段階ではとにかく、観ている人が自然と気持ちを入れられるような舞台にしたいということですね。舞台ならではの、お客さんに想像力を働かせてもらうような演出も多いと思うので。


小澤:せっかく歴史を題材にした舞台だから、お客様に「こういう事実があって、その結果として自分たちの今の生活があるんだ」というメッセージを伝えられたらいいですね。人間のやってることは、世の中が便利になっただけで、根本的には今も昔も変わらないと思うんですよ。ただ、もし歴史を通して今の世の中が良くなっていっているのだとしたら、それは一人の力ではなくて、世の中を良くしようと考えて行動してきた人がいるからであって。今回の舞台を観て、じゃあこれからの世の中に対して、自分にできることはなんだろうと少しでも考えてもらえたら嬉しいですね。


森田:日本という国が成立してきた頃の話なので、どんな過程でそこに至ったのかを、知ってもらえる機会になれば良いですね。あと、先輩方と共演するのが楽しみです。


小澤:稽古の初日を迎えたら突然キレるかもよ?


森田:休んじゃうかも…(笑)。


八神:そんなんだったら僕も休んじゃうよ! 人が変わりすぎでしょう(笑)。まあ、冗談はさておき、今回の舞台は歴史ものだけど、そんなに構えずに見に来てほしいです。僕たちも、ちゃんと理解して演じますし、その上で、心ををゆさぶるようなお芝居ができればと。ぜひ生で見てほしいと思います。


小澤:実は、30代になって初めての主演なんです。30代になって、自分のこともだんだん理解し始めてからの主演なので、「この人が主演でよかったな」と思ってもらえるようにやりたいですね。ただ頑張るとか、みんなに任せるとかではなくて、ちゃんと土台の部分からカンパニーを押し上げていきたい。そういう役割を、同い年の蓮くんと一緒に担っていけたらなと。そうやってみんなで一個のものを作って、演じてる人たちやスタッフのみんなに、このカンパニーでよかったなと思ってもらいたいし、お客さんには、このカンパニーで作ったメッセージをちゃんと受け止めてもらえるようにやっていきたいです。(西森路代)