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毎日10分の「たばこ休憩」、2年で「100時間超」に…大阪府職員に訓告、処分は妥当?

2018年06月26日 10:42  弁護士ドットコム

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喫煙者の多くがとっている勤務中の「たばこ休憩」。そのあり方をめぐって、議論を呼びそうな出来事が報道された。


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舞台となったのは大阪府庁。40代の男性職員が今年4月、たばこを吸うために職場を離れたとして、「訓告」の処分を受けていたのだ。6月5日になって各報道機関が報じた。男性はすでに依願退職している。


報道によると、その回数は、過去2年間でおよそ440回、合わせて100時間以上だという。なんとなく多いように思えるが、月22日勤務と考えれば、単純計算で1日計11分程度のたばこ休憩をとっていたに過ぎないという見方もできる。


労働者のたばこ休憩は、法律的にどう考えられるのだろうか。また、この男性の処分は適切なものだと言えるのだろうか。平岡広輔弁護士に聞いた。


●たばこ休憩が問題になるかは会社の規則次第 禁止でなければ頻度などによる

ーー今回の処分をどう見ましたか?


「たばこ休憩で処分は厳し過ぎる!」という意見もありますが、法的見地からは大阪府の対応に問題はないと考えられます。


たばこ休憩の可否を考えるには、(1)「喫煙が行われた時間帯」、(2)「労働時間中の喫煙が規制されているか」に注目する必要があります。


まず、(1)「喫煙が行われた時間帯」についてですが、休憩時間として認められた時間帯での喫煙は、通常、問題とはなりません。


これに対し、労働時間中の喫煙は「職務専念義務違反」になる可能性があります。今回のケースはまさにこのようなケースです。


次に、(2)「労働時間中の喫煙が規制されているか」を検討してみます。


会社は労働者に対する指揮命令権を有しており、労働時間中の喫煙を規制することが可能と考えられ、大阪府でも禁止されていたようです。もっとも、特段禁止されていない会社も多いと思われます。


ーー今回のケースに当てはめるとどうなりますか?


報道によると、規制に違反して、職員は労働時間中のたばこ休憩をとっていますので、これは「職務専念義務違反」になると考えられます。


一方、喫煙が規制されていない会社であれば、同義務違反になるのは、離席時間・頻度、同僚の状況、事前の指導状況等に照らし、相当な範囲を超えるたばこ休憩をとった場合に限られると考えられます。


●今回の処分の妥当性はどうか

ーー処分の重さはどうでしょうか?


職務専念義務に反するとしても、処分が相当なものでなければ、無効となります。


今回のケースでは、最終的に当該職員は依願退職したようですが、大阪府が下したのは、制裁としての懲戒処分ではなく、服務上の措置である訓告処分にとどまりますので、これが重すぎて無効とされることはないと考えられます。


仮に、懲戒処分がなされたのであれば、当該処分が重過ぎて無効となる可能性もあります。


ーーたばこ休憩について労働者が注意すべき点は?


喫煙についての考え方は、ここ数十年で大きく変わっており、従来の慣行に従って行動した場合、予想外の不利益処分を受ける危険があります。


たばこ休憩をとるのであれば、その可否についてはもちろんのこと、仮に許容されるとしても、許される離席時間や頻度はどの程度かを事前に会社に確認しておくことが望ましいと言えます。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
平岡 広輔(ひらおか・こうすけ)弁護士
平成22年弁護士登録。訴訟、労働審判、調停、あっせん手続き、示談交渉等、労働事件の取扱多数。著作は、『労働契約の終了をめぐる判例考察』(三協法規出版、共著)。平成28年から、公益財団法人暴力団追放都民センター相談員。
事務所名:土屋総合法律事務所
事務所URL:http://www.tuchiya-law.com/