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宇多田ヒカル、チャットモンチー、NEWS……キャリアの重要地点に辿り着いたアーティストの新作

2018年06月26日 10:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 デビュー20周年を迎えた宇多田ヒカル、2018年7月をもって“完結”することを発表しているチャットモンチー、今年結成15周年のNEWSなど、キャリアの重要地点に辿り着いたアーティストの新作をピックアップ。大きなターニングポイントで彼女たち(彼ら)は一体、何を歌ったのか? ぜひ、歌詞に注目して聴いてほしいと思う。


(関連:宇多田ヒカル、“恋の始まり”をどう表現? 『花男』シリーズ「Flavor Of Life」「初恋」聴き比べ


■宇多田ヒカル『初恋』
 ’00年代以降の日本の音楽シーンに多大な影響を与えたデビュー作『First Love』(1999年)から約20年。宇多田ヒカルは『初恋』でもう一度“初めての恋”と正面から対峙し、人を愛することの衝動と快楽、恋愛という行為にともなう切なさ、儚さを美しく描いてみせた。もっともインパクトを受けたのは、すでに多くのリスナーに共有されている表題曲「初恋」。善悪、常識を超えたところで生まれる“すべてを捧げたい”という強い思いが映し出されたようなこの曲は、彼女の音楽のさらなる深化を伝えている。言葉だけではなく、世界基準のトラックメイク、クラシカルな手触りのストリングスアレンジ、ブレスまでが音楽的に聴こえるボーカルを含め、2018年を代表する作品であることは間違いない。


■チャットモンチー『誕生』
 橋本絵莉子、福岡晃子は最後のアルバムに『誕生』というタイトルを与えた。ほぼ全曲を打ち込みで構成した本作はたしかに“新しいチャットモンチー”を感じさせるし、ふたりの“これから”を示唆しているようにも思える。どんな事態に見舞われても、現状を追認するような真似はせず、いつも自らのビジョンに向かって進んできたチャットモンチーは、ラストアルバムにおいても“先”を見ていたのだろう。平易な言葉で普遍を描き出す歌詞も本作のポイントだが、特に文筆家・作詞家として活動している高橋久美子が作詞を担当した「砂鉄」は絶品。〈好きでも嫌いでも 好きさ/会っても会わなくても 忘れない〉というラインに胸を打たれないリスナーはいないだろう。


■清水翔太『WHITE』
 彼自身の内面から生み出されたリアルで内省的な言葉、そして、ボーカルの豊かな響きを活かしたトラックメイク。ヒットチューン「Good Life」「Friday」を含む本作『WHITE』によって清水翔太は、シンガーソングライター/トラックメイカーとして確固たるアイデンティティを手に入れた。フランク・オーシャン、The Weekndなどにも通じる洗練されたサウンドも素晴らしいが、本作のセントラルドグマはやはり、拭いようがない寂しさ、やるせなさ。それをもっとも強く反映しているのはアーティストの孤独をテーマにした「alone feat.SALU」だろう。みんなで一緒に盛り上がるのではなく、自らの孤独と向き合いながらじっくりと堪能したい充実作だ。


■水曜日のカンパネラ『ガラパゴス』
 水曜日のカンパネラの新作EPのタイトル『ガラパゴス』は、音楽・文化を含めた日本のメタファー。能や歌舞伎に代表される世界に誇るべき独自の芸能を持ちながら、政治、経済をはじめとする分野では取り残されている現在の日本をコムアイ、ケンモチヒデフミ、Dir.Fは、独創的なクリエイティビティとダンスミュージックのトレンドを絶妙に混ぜ合わせながら、まったく新しいポップミュージックへと結実してみせた。アフロポップ、アジアンポップにもつながるエキゾチックなトラック(BPMはかなり遅め)、日本語の美しさに独特のグルーヴを与えるボーカルなど、音楽性自体も一気に深化している。日本人にしか作り得ない、そして、“いま”を捉えているという意味で日本版の「This Is America」と言えるかも。


■NEWS「BLUE」
 「日本テレビ系ロシア2018テーマソング」としてオンエア中のNEWS「BLUE」は、シンガロング必至のコーラス、“サムライブルー”をテーマにした勇壮な歌詞、EDMをベースにしたアッパーなトラックがひとつになったアンセムナンバー。〈吠えろニッポン いざ行こう〉という歌詞をまっすぐに響かせられるのは、これまでにもサッカー大会の楽曲を担当してきた彼らのイメージが定着しているからだろう。作詞・作曲を手がけているのは、「チャンカパーナ」「EMMA」など、2012年以降(つまり4人体制になった後)の楽曲を数多く手がけ、いまやNEWSの音楽の中心的な存在になっているヒロイズム。メンバーの声質、歌いグセを知り尽くし、もっとも効果的に配置したボーカルアレンジにもぜひ注目してほしい。(森朋之)